表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/74

第35話 二日目の朝

一晩経った次の日の朝です。

(……もう朝か)


 窓の外から日光が差し込んで来ている。

 隣の古織(こおり)をみると、すやすやと安らかな顔。まだお眠りの模様。

 それにしても、可愛い、いや、愛らしい。

 小型犬が眠っているみたいだ。なんていうと怒られるか。


(にしても)


 まだ頭がぼんやりしているものの、昨夜に比べて少しは冷静になったみたいだ。

 ただ、今はその代わりに幸せな気持ちがとても強い。

 最愛の彼女が隣で幸せそうに眠ってくれているのがただ嬉しい。


 まだぼんやりとした頭で彼女を撫でてみる。

 最初は髪。寝癖でぼさぼさだけど、手で梳きながら、優しく撫でていく。


「ん……ふわぁ」


 小さな声が聞こえる。


「起きたのか?」


 そう聞いてみるものの、返って来たのは無言。

 寝言だったらしい。

 

 次に、顔に軽く触れてみる。つんつんと。

 張りがある瑞々しい肌で、もちもちとしている。

 こういう所に男と女の違いを感じる。


 次は背中。抱きしめる一歩手前の姿勢で、

 優しく背中を上下左右にゆっくりと動かす。


「ああ……気持ちいい、よ」


 また寝言?と思ったけど、なんだか頬が赤らんでいる気が。

 それに、呼吸が妙に不規則だ。


「古織、起きてるだろ」


 今までの経験から、確信した。狸寝入りをしている。


「……」

「起きてるのはわかってるからな」

「……」


 やっぱり無言。でも、瞼がピクピクと動いている。


「狸寝入りなのはわかってるんだけど?」

「……おはよ、みーくん」


 ようやく観念したのか、薄く目を開けて朝の挨拶。


「おはよう、古織。で、なんで寝たフリ?」

「……みーくんのせいだからね?」


 半目で睨んでくるけど、怖いどころかむしろ可愛い。

 しかし、俺のせいとはこれ如何に。


「ひょっとして、襲ってくれると思ってたか?」


 デリカシーが無い!と言われそうな言葉。


「なんでわかったの?」

「妙に艶っぽい声だったし。それに、身体押し付けて来ただろ」


 いつも寝るときは一緒なのだ。こういう違和感があれば気づく。


「……だいたい、みーくんの正解」


 そう言いつつ、どこか恨みがましい視線を向けられてしまう。


「なんか俺がしたか?」

「したよー。すっごい優しそうな目だったし、手の動きも優しかったし」

「……」


 確かに、今の俺はなんだか優しくしたい気持ちになっている。

 脳は眠っている間に記憶を整理するというけど、その影響だろうか?


「このまま、ぼーっとした気分のまま、睦事もいいなって。思ったの」


 そう言う古織だが、俺もぼーっとしているのは同じ。


「じゃあ、続けるか」


 寝ている相手だと、さすがに……と思っていたけど、許可があるなら話は別。

 優しく小さな胸を撫でたり、ふにふにとしてみたりする。


「……んん」


 小さな声を上げる様子が、やっぱり可愛い。

 頭もまだ十分覚醒してない。

 なのに、こう出来るのはなんでだろうな。


「ちゅ」


 古織からそっとキスをされる。ぺろっとひと舐めするような優しいキス。


 乱れた浴衣をゆっくりと脱がしていって、生まれたままの姿にしてひとつ気づいた。

 下半身が反応しない。まだ寝起きのせいだろうか。


「……?」


 いつまで待っても、続きがないことに不信を持ったのだろうか。

 ぼんやりとした瞳で見つめてくる。


「いや、悪い。寝起きのせいか……反応しなくて」


 こういう時に、どうも直接的な言葉を避けてしまう。


「ん。じゃあ、触り合いっ子、しよ?」

「そりゃ、お前がいいなら……でも、それで満足なのか?」

「みーくんは、やっぱり女心がわかってない」

「というと?」

「女の子にとっては、本番だけがエッチじゃないの」

「そうだったのか……」

「むしろ、前戯の方が本番って子も多い、よ?」

「そうなのか」


 寝起きだから、普通に受け取る。

 でも、よく聞くと、後で驚きそうな気がする。


「ん。それじゃあ……」


 元々、寝顔を見ていて可愛くなっただけだ。

 優しく撫で合うのも悪くない。


◇◇◇◇


 ホテルの朝食の席にて。


「よく考えると、めちゃくちゃ恥ずかしいことしてたよな」


 寝起きだからすんなり受け入れてたけど。


「でも、すっごく、幸せ、だったよ?」


 さっきの行為を思い出しているんだろう。

 顔を真っ赤にしながら、でも多幸感でいっぱいといったところだ。


「ま、まあ、いい朝だったよな」


 普段の俺たちだとなかなかなさそうな行為。

 ゆっくりと流れる時間を感じながらの行為は確かに幸せだった。


「病気、昨日よりはマシだけど、まだまだだな」

「うん。私も」


 言い合いつつも、お互いの顔をちらちらと見あっている。

 一晩寝たら、いつもの雰囲気にとは行かなかったらしい。


「気分切り替えて……は無理そうだけど、今日の予定考えないとな」


 新幹線は夜の7:00だ。京都駅発だから、まだまだ時間はある。

 昨日借りた自転車であちこち回れそうだ。


雪華(せっか)ちゃんと幸太郎(こうたろう)君にお土産買わないと」

「あいつらが居ないと新婚旅行も出来なかったしな」

「京都ならではのお土産、探そうよ」

「生八ツ橋は定番だけど」

「定番過ぎて、なんだか手抜きな気がする」


 手抜き、か。確かに、東京でも生八ツ橋は普通に買えるしなあ。


「だとすると、駅のお土産コーナーより別のところがいいか」


 ああいうのは、定番中の定番が並んでいる。


「後で、ちょっと穴場のお土産とか探してみよ?」

「今はスマホがあるから、その辺楽だよな」


 地元民しか知らないところでも検索すれば結構出てくる。

 小学校低学年の頃は、聞いたことがあるのはもっぱらガラケーだった。

 途中で、「スマホってのが出たらしい」とクラスで話題になったことはあったけど。


「じゃ、お土産はいいとして、朝、行くとこだな」

「あ!この、南禅寺っていうところで、特別なモーニング楽しめるんだって」

「面白そうだけど、今、朝食食べてる真っ最中だよな」


 食べる量をセーブすればいけるか?


「って、それより、そもそも、モーニングの時間終わるんじゃないか?」

「10時くらいでも大丈夫だって」


 腕時計を見る。時刻は7:30。

 その頃なら小腹も空く……か?


「よし、その特別なモーニングっての行ってみよう」

「部屋に戻ったら、当日でOKか聞いてみるね」


 こうして、次なる目的は南禅寺に決定。

 お寺が目的ではなく朝食が目的だけど。


「あ!金閣寺も行ってみたい」

「ああ、あの金ピカのお寺な」


 京都観光の名所の一つだろう。


「ここからちょっと離れてるけど、自転車で行けるっぽい」


 自転車だと、まず、北野白梅町というところを目指すと良いようだ。

 そこから自転車で北西に10分くらいといったところ。


「じゃあ、それで。あとは……どうしよう?」

「まだ時間は結構あるし、行きながら決めればいいんじゃないか?」

「そだね、うん」


 とことん、無計画な新婚旅行だ。

 でも、そっちの方がワクワクする気持ちを楽しめていいかもしれない。

 そう思う気持ちがある。


 朝食を終えた俺達は、しばらく部屋でべたーっとなる。

 次の目的地南禅寺で朝食(半分昼食)まであと2時間はある。


「のんびり旅行って楽しいね」


 同じ布団に入り込んで来た古織が、嬉しそうに言う。

 俺と同様、欲求をセーブするのを止めたらしい。

 がっちり背中まで手を回されてホールドされている。


「のんびりっていうか、イチャイチャな感じだけどな」

「イチャイチャも楽しいよ」

「だな。俺も楽しいよ」


 こうやって、楽しい感情を共有し合うのがとても幸せだ。

 そうして、出発までしばらくベッドでじゃれあったのだった。

二人も、少しは落ち着いた(開き直る)ことに決めた模様です。

新婚旅行編は、あと4話(南禅寺、金閣寺、お土産、帰路)くらいで終わりそうです。


二人の旅路を応援したい方は感想、ブコメ、評価などいただけると嬉しいです。

作者の執筆エネルギーになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 節約から解放されて、イチャイチャが板について来ましたね。 日常にどこまで影響残っちゃうかな。
[良い点] ベタベタだっていいじゃないか だって新婚さんだもの
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ