子供
子供にプレゼントをあげている現場を見たのは、確か一年以上前だから、あのバカはこんな寒い日もカジノの帰りにいつもの繰り返しをしていたんだろうなと思うと。
「まじでロリコンなんじゃねえのアイツ」
ギャンブルで山あり谷あり谷あり谷あり…の生活の俺、またの名をニート上級者という。(言わない)
クリスマスの夜。深夜三時、人気のない道を歩いているのは失恋したからでも脳みそのネジがぶっ飛んだわけでもない。宿敵との因縁をつけるためとも言うし、また別のバカの代わりにお節介をやいているとも言う。ポケットに入っているサンタの落とし物を届けてこの小説も完結。作者も幸せクリスマス送れるように頑張るよ俺。(ソーダネ、ガンバッテネ)
「それにしてもかなり細い道だな」
街のことは大体知っていたつもりだが実際に自分の足で歩いてみると意外と広い道だったり、月明かりがあまり見えなかったりしてなんだか楽しくなってきた。
寒くなってきた。歩いても歩いても目的地は見えない。というか家がない。辺りはゴミ溜めばかりで少し臭いもきつく感じる。週一風呂の俺が言うほどだからよっぽどだ。仕方なく帰ろうとした、瞬間「くちゅん」と可愛らしい声が聞こえた。
「おいおいマジかよ」
暖房などがある市街の中心から外れたこの場所は若干の過疎化が進んでいると聞いてる。文無しのキツイところは空腹と肩を並べる程の身を切るような暑さと寒さだ。本日最低気温だった記憶、それが現実で俺が絶望している世界なんだ。
「おい、どこだ。警察じゃないから出てこい」
…。当然のごとく出てくるわけがない。ない頭を回転させて無理だと思う賭けを人生初めて行なった。
「サンタクロースだから、出ておいで~。…なんちゃって」
「…サンタしゃん?」
「釣れた」
おっと。慌てて口を塞ぐ。そして ヒ ド イ と口が動いた。
まず見た目が人間じゃなかった。着ている服もアイツのほうが上等ときたもんだ。あの頃のアイツは酷かったがコチラは涙腺に卑怯だ。考えるより体が口が動く。いつもの俺は勝てる確率が60はないと動かないような石橋叩き人間だ。それが何故か何とかしなくちゃなんて別人格でも生まれたかと思ってしまう。
「前に貰ったのは?どうした」
「…?」
「ほら、俺みたいなおじさんが会いに来ただろ」
「も、もらった、けど」
俺は最悪なことを予想してしまった。
「…おとなのひとに」
畜生。
「おまえ…には、に、にあわないって」
畜生、だから嫌いなんだよ。
「ふくとか、ぜんぶ。それと」「もういい!!もうわかったから」
どこの世界にも最低な人間はいる。俺もジャンル分けすれば枠内にギリギリ合格するとだろうと自覚している。それは別に俺の人生だから関係ない。他人のことはゴミクソだと思っていればいい、とか考えてるような人間だ。でも、俺にだって耐えれないことはある。正義に憧れる。悪者役だって勇者役に自分を当てて妄想する。優しくしたいって思うときもある。余計なことも止められない時もあるんだって安心した。
「俺はサンタクロースの宿敵だ!」
「しゅふてき?」
「えー、まあ、敵?みたいなものだ」
「てき…」
もう自分が何を口走っているのかわからない。眠くて頭がキチンと動いていないってことはなんとか理解できる。あと、このあと面倒な展開が予想できるってことも。
「だから!お前をさらいに来た!!」
「ええ!?」
キャーと逃げ惑う少年をひょいと捕まえて、軽々と担ぐと急いで家路へと足を進めた。もちろん上に羽織っていたものを被せる。すると少年が目をぱちくりさせているのを横目で見ていたら諦めたのかぐったりと眠ってしまった。
そして家に着いた頃には鶏が泣きそうな時間で、正直、俺も限界が来ていた。少年をベットの上に眠らせて倒れるようにそのままドリームワールドへ探検するのだった…。
朝、ではないことはわかった。ムクッと起き上がるのと同時にキャーという悲鳴が聞こえた。はっとして少年を見るとベットの上でぶるぶる震えていた。あー、そういえば今俺悪者なんだっけ?よく覚えていないや。ま、とりあえず、
「飯」
「…ふぇ?」
「ご は ん」
キョトンとした顔でこちらを見つめてくる。恐らく言っている意味は理解できていると思うが自分が置かれている状況がイマイチ呑み込めていない様子だ。買い置きしている物であれば警戒されないだろうと、とにかく飯と髪と着るもの。あとはこの家のルール…なんて存在しないな。
「俺 イコール ルール みたいな生活してきたからなあ」
「…」
「…」
造られた食べ物でも今の少年には栄養過多だが、食べるということに慣れてもらうのが一番だから、
「無理に食べなくてもいいぞ」
「…いえ。それより、わたしどれいになr」「奴隷になんかさせないっ!」
ビクッと肩がすくみ上がって、次第にぐすんと泣き声へと変わっていく。
や、やべえよやべえよ。ガキのあやし方なんて俺から一番縁遠い言葉だぞ!?いないないばあ、は赤ん坊にすることだし、
「えっと、えっと。その…」
その瞬間、映画でみるワンシーンが思い浮かんだ。考えるより行動してしまう。最近、俺は別人間になりつつあるな、とぼんやりと思った。
ぎゅう。
できるだけ力を抜いて、その体を支えるように抱きしめた。ポコッポコッ。ジタバタ腕の中で暴れだすが構わず抱きしめ続ける。小石みたいな拳が俺の頭を力なく叩く。それが知らない誰かに血が出るほど殴られるよりキツイ気がした。
「ぜんぜん痛くないよ」
嘘、胸が締め付けられる。
「俺のこと殴りたいだろ?」
お前になら殴られても別に怒らない、…と思う。
「もし、気に入らないこととかあったら言ってくれ」
金の力でなんとかするぜ。(ゲスいです)
「…めてください」
「え?なんて?」
「こんなこと!やめてください!こまります!!」
宝石涙だ。芸術とかよくわからないけど、ガキの主張はよそに俺は思う、ギャンブルに負けて泣きじゃくる大人のより綺麗だと。片手でそっとすくうってあげる。俺は、やっぱり卑怯者で屑野郎だな。
「困っても構わないぜ。だって俺、悪者だし」
ニシシッと嗤って見せた。え?と言いたげなガキの顔が最高に傑作だったからということにしよう。
そうしよう。




