【番外編】秀麗樹学園新聞部2年・文野春佳のメモ⑤ー④
……ふぅ。
エナドリ拳3倍をやるのは本当に久々だ。以前は確か記事の締め切りに追われてテスト勉強を疎かにしていた時に発動したことがあったな。
尊敬する父・文野春にも止められてはいたが……。許してくれ、父よ。
きっと、あなたも今頃【Cutie Poison】や【12345!】の皆のことを記事に仕上げていて大忙しのはず。であれば、禁断の3倍エナドリ拳をやってまでメモ書きを残そうとする私の気持ちも分かるはずだ。
さて、父への請願も済んだ所で本題に戻ろう。私は今すぐに書き上げんといかんのだ、輝かしい超新星──【12345!】のことを!
甘粕清蘭様
能登鷹音唯瑠
大山田白千代氏
エデン・エクスカリス
エルミカ・エクスカリス
5人の少女が生み出したあの熱狂と輝きに満ちた鮮烈なるデビューライブ。その具体的な内容と評価を書き記して今回のメモを終えようと思う。
【12345!】、英語で表せば恐らくデビュー曲通り"It’s Sunshine GO!"という表記になるのだろうか。英文法としてはおかしいが、そんなことは些末な問題だ。
その名前の意味や自身の在り方──"輝きに向かう5人"というものを、彼女達はあのライブで観客に魂の底から分からせたのだから。
彼女達がこれほどにも日本を熱狂させたのには理由がある。
【アポカリプス】とも【Cutie Poison】ともタイプが異なり、彼女達は古き良き"王道"のアイドルだ。元気いっぱいに歌って踊り、心からの笑顔で見る者を魅了する。そんな古からのアイドルとしての基本中の基本を徹底的に磨き上げ、"輝き"として昇華させたのが彼女達の魅力の本質だろう。
とは言え【アポカリプス】や【Cutie Poison】にその要素がない訳ではない。先も書いたが、元気いっぱいの歌と踊りを届け、心からの笑顔で見る者を魅了するのはアイドルとしての基礎。故に"日本一のアイドル"である【アポカリプス】や彼らに最も近い存在である【Cutie Poison】に、それが出来ないはずがないのである。
だが、ここでこの偉大なる2つのグループの唯一と言って良い弱点が浮きぼりとなるのだ。それこそが、かの九頭竜倫人様と、アリス・天珠院・ホシュベリー様なのである。
それぞれ【アポカリプス】や【Cutie Poison】において不動のセンターであり、グループにおける中心人物であることは今更言うまでもないことだ。だが……それ故に、グループ自体がお2人に引っ張られ過ぎているというようにも私は感じている。なお、この感覚を父は2グループのデビュー当時から抱いていたようだ。流石である。
倫人様とアリス様、この御二方はどちらかと言えばクールな印象を観客に与えるだろう。無論、他のメンバーの皆も十二分に個性的であり、十二分に魅力的だ。そこに否定の余地は一切ない。
しかし……倫人様もアリス様も、他のメンバーをさらに上回る魅力を発揮してしまう。まさに神に選ばれた圧倒的魅力で以て、パフォーマンスを行うその空間を自身の世界にしてしまうのだ。
ともすれば、【アポカリプス】も【Cutie Poison】も、自ずとパフォーマンスはクール寄りなものとなる。倫人様とアリス様がそうなのだから。
そのことを不満に思うファンはいない。私が認知していないだけでいるかもしれないが、少なくともそういったファンを私は聞いたことはなかった。
だが、だからこそ。クールなパフォーマンスではなく、昔ながらの王道アイドル路線で突き進み始めた【12345!】の皆は、七夕の夜に栄光の輝きを掴んだのだ。
【アポカリプス】に【Cutie Poison】、この二大巨頭の影響もあり、今のアイドル界はクールなスタイルを売りにするグループが増加傾向にあった。それは言わば、流行と言えるものだ。
流行とは真逆の道を突き進む、ということは並大抵では不可能だ。誰にも見向きされず終わってしまう可能性もあったかもしれない。
そんなリスクを知ってか知らずか、ともかく【12345!】の皆が選んだのはその茨の道とも言える進み方であり、そして彼女達は見事に輝いてみせたのだ。
もしもデビュー曲が『It’s Sunshine GO!』ではなかったのなら。
もしも彼女達が倫人様やアリス様と同じようなスタイルで売り出していたら。
昨夜の輝かしく華々しいスタートは決してありえなかっただろう。これは彼女達と共に、その本質を見抜いてスタイルの方向性を敢えて真逆にしてデビューさせたプロデュース側の慧眼も褒めざるを得ない。
女性アイドル筆頭【Cutie Poison】
''日本一のアイドル''【アポカリプス】
この2グループによって築かれ創られた時代は、【12345!】という太陽が如き熱と輝きを放つ5人の少女によって壊された──。
今後、日本のアイドル界はこの3グループによる激動の三つ巴時代に突入するであろう。
果たして時代の覇者となるのは一体誰なのか……今後もますます期待に胸が高鳴るばかりだ。
もう時刻は6時目前。結局徹夜となってしまったが後悔はない。このまま学校に向かうとしよう。そして、今日中に新聞部の活動で清蘭様達の栄光を伝えなければ。
最後の締めくくりとして、自分自身の願いを書こう。
【12345!】
【Cutie Poison】
【アポカリプス】
皆の成功と健康を切に祈りつつ、今後もその輝きで日本を照らして欲しい……と。
7月某日
秀麗樹学園新聞部3年
文野春佳