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【番外編】秀麗樹学園新聞部2年・文野春佳のメモ⑤ー➂


 おっと、もう3時26分か。

 今宵のメモは全く以て書く手が止まらない。言うまでもなく夜更かしは美容の大敵、同世代の女子達が気にするように、私だってそれには気を遣っているのだ。意外に思われるかもしれないが。

 だが、今回のメモに関してはどれだけ夜更かししようが、何なら徹夜オールであろうとも構わない。繰り返しになるが、私の書く手が止まらないのだから。

 その理由は……書くべきことが多いというのも1つだが、最も大部分を占めているのは……彼女達のことを書き記さずにはいられなかったからだ。


 濃厚で、濃密で、妖艶で、妖美な魅力で七夕の夜を毒していくはずだった【Cutie(キューティ) Poison(ポイズン)

 

 そんな彼女達の衝撃をさらに上回る、あの夜にライブを行った女性アイドルグループ……その名は──【(イッ)(ツサ)(ンシ)(ャイ)(ンゴ)(ー!)


 

 この超新星と言うべき他にない5人の少女が、七夕の夜にデビューライブを行った。

 確かな情報筋によればその場所は【BEGINNING(ビギニング) STUDIO(スタジオ)】らしい。動画で確認出来た内部の様子からだと、確かにそうだと私は確信した。

 数々の一流アーティストやバンド、アイドルを生み出して来たこの聖誕の地で、7月7日の夜7時にライブを行った彼女達もまた、その例に漏れることなく超新星爆発が如き爆誕をしてみせたのだ。

 "ツブヤイター"を筆頭に、各SNSで【Cutie(キューティ) Poison(ポイズン)】と共にトレンドを争い……いや、既に彼女達の方が上回っている。今片手にある携帯で調べたところ、実に26万以上のアカウントが、彼女達についての呟きをしていた。最早数字の"1"を検索窓に打ち込むだけで、その予測に【(イッ)(ツサ)(ンシ)(ャイ)(ンゴ)(ー!)】が出て来るくらいだ。


 あの【Cutie(キューティ) Poison(ポイズン)】の、しかも新曲発表ライブがあった直後にライブを行った彼女達【(イッ)(ツサ)(ンシ)(ャイ)(ンゴ)(ー!)】が日本の話題の中心となれたのは何故なのか。

 その理由は、各メンバーについて触れることから始めてみよう。


 まずは【(イッ)(ツサ)(ンシ)(ャイ)(ンゴ)(ー!)】のセンターを務め、彼女達の放つ''輝き''の中心にいた少女──その名は、''甘粕(あまかす)清蘭(きよら)''だ。

 そう。秀麗樹(しゅうれいじゅ)学園の頂点に立つ美貌の持ち主、''学校一の美少女''として名高い清蘭様本人なのである。

 学園では自分の心の赴くままに行動なさり、喜怒哀楽がハッキリとしている清蘭様。そんな彼女は、あの夜のステージ上で燦然とした''輝き''の中心にいらっしゃったのだ。

 メンバーの誰もが魅力溢れる笑顔を魅せる中、最も彼女の笑顔が輝いていたと思う。動画越しでありながら、普段から彼女の笑顔を見ることがある私でありながら、それは確信に近いものがあった。

 また、彼女は''自由''でもあった。

 学園での振る舞いそのままに、それは昨夜のステージでも同じであった。自分の思ったことを、素直な心の在り様を観客に向かって叫び、伝える。メンバーの誰よりも先に口を開いて、台本などではない自分自身のありのままの気持ちを伝播していく。

 間違いなく、それはセンターに立つ者としての素質であった。観客を巻き込み、メンバー自身も巻き込み、そうして【(イッ)(ツサ)(ンシ)(ャイ)(ンゴ)(ー!)】という存在が作る世界の中に誘う……彼女達をプロデュースしている人物はどうやら分かっているようだ。

 ''楽しい''や''嬉しい''と言った感情、それらが全面に溢れ出したパフォーマンスというのは、見ているこちらもそういった気持ちになる。

 ステージ上でそれを全力全開で表現していた清蘭様に魅了されるのは、ある種の必然であったと言えるだろう。


 清蘭様の魅力についてまだまだ書き記したい所ではあるが、そろそろ次のメンバーに触れようと思う。

 次に紹介するのは、そんな清蘭様と同じく我らが秀麗樹学園では有名人の少女──能登鷹(のとたか)音唯瑠(ねいる)

 清蘭様と同じ事務所、881(ヤバイ)プロ所属であったことも衝撃だが、同じグループだったとはまさに予想外。

 清蘭様とは異なり、彼女は控えめなタイプだ。実を言うと、アイドルには向いていないとも思っていた。

 何故なら、能登鷹音唯瑠という少女が持つ最大の魅力は歌声であり。それを最大限発揮出来るとすればソロシンガーに違いなかったからだ。

 わざわざダンスを踊って疲弊し、歌声の部分でも他のメンバーという言わば不純物が混ざりこんでしまうアイドルだと、彼女の魅力は半減してしまう……。

 そんな風に考えていた私を、今の私は殴り倒したい。

 アイドルだと能登鷹音唯瑠の魅力は半減する? 冗談じゃない。私はまだまだ自身の目が節穴であったことに気づかされることになる。

 アイドルとしての輝きを放つ彼女は、本物だった。無理してアイドルをしている訳ではない、望んで清蘭様達と同じステージに立ち、踊り、歌っていた。

 自身と同じステージに立ってくれる仲間、それを得たかつて孤独の中に長い間いた少女は、その喜びを遺憾無くその歌声に乗せて観客の心を震わせたのである。彼女が元々持っていた歌声はますます神々しい光と優しい慈悲に満ちた旋律となって、観客の心に染み渡ってゆく……。

 全く以て素晴らしい。それ以外に言葉が見つからなかった。彼女はあの夜に、清蘭様達と共に大きく羽ばたいたのだった。

 

 さて、ここでも名残惜しいが次のメンバーの話に移行しよう。

 次のメンバーは【(イッ)(ツサ)(ンシ)(ャイ)(ンゴ)(ー!)】の中では最年長となる存在──大山田(おおやまだ)白千代(しろちよ)氏である。

 日本経済の一端を担うほどの大企業、あの大山田グループの社長令嬢がアイドルをする。それだけで記者は飛び出さずにはいられない大スクープだ。

 しかしながら、さらにその上をいく超大スクープは、白千代氏がアイドルとして一級品の実力を持っていたことに他ならない。

 清蘭様や音唯瑠と同様に、彼女もまた超ド級の美少女だ。そのルックスは間違いなく魔性のそれであり、男女を問わず魅了する。

 さらには、彼女の場合他のメンバーと異なり大きな武器がある。それは(おっぱ……)じゃなかった。私はそんな小学生みたいな奴ではない。

 白千代氏は話し方からも分かるようにおおらかでマイペースな性格が特徴的である。その話し方や声色は非常にリラクゼーション効果が高く、長々と聞いていると思わず眠たくなるほどの安心感を得られる。

 彼女のASMRなどがあると快眠出来そうだ。ともかく、そんな白千代氏のマリアナ海溝級の癒し度の半端なさは、間違いなく彼女の魅力であると言えるだろう。

 ルックスは絶世の美女、さらには抜群のプロポーション、トドメに癒し系担当。こんなの人気が出ないはずがない。私でさえ「うっひょおおおたまらねえ……膝枕して欲しい……」と本能が疼いた程だ。しかしこの衝動は言葉にすると大山田グループから消されるかもしれないので、このメモだけに留めておこう。

 ともかく、白千代氏のアイドルとしての実力は一級品、それだけは確実である。


 白千代氏への良からぬ欲望に溺れる前に、次のメンバーの話にいかねば。

 という訳で続いてのメンバー。ちなみにその性質上、2人まとめていかせてもらおう──エデン・エクスカリスとエルミカ・エクスカリスについて。

 なんと誇らしいことか。【(イッ)(ツサ)(ンシ)(ャイ)(ンゴ)(ー!)】のメンバーの内4人が、我らが秀麗樹学園の生徒であるということが。

 しかも、2人は今年の4月に入学したばかりのピッカピカの1年生だ。だが、その''輝き''が比喩ではなくまさか本物になろうとは思いもよらなかった。

 エデンは確実に他のメンバーとは一線を画す魅力を持っている。何せ、男性らしい凛々しさと女性らしい気品を兼ね備えたあの中性的なルックスに人気が出ないはずがない。(おっぱい)のついたイケメンは、いつの世も歓迎されて然るべきだ。

 エルミカはエルミカで当然需要のある枠、ロリ担当である。昨日のステージでは、その魅力を嫌というほど観客に叩きつけていた。当然、エルミカのマジ天使な可愛さを嫌だという観客はいなかったが。寧ろウェルカムだろう。

 双子の2人、故にそこで完成されていたシンクロ率200%のパフォーマンスは、しかし5人となっても変わらなかった。

 その歌声も、その動きも、2人が3人に合わせているのか、あるいは逆なのか、あるいは……両方なのか。兎にも角にも、2人だけの時のクオリティを損なうことはなく、魅力はさらに増し増しになっていたことは一切否めない。

 仲間達を得たことでエデンとエルミカのパフォーマンス、アイドルとしての才能はさらに花開いてゆくことだろう。ますます秀麗樹学園の未来は明るくなった事だ。

 

 おっと、そうこう書いている間に時刻はとっくに4時半を回ってしまっていた。

 美容の為にもう寝るべきか……否!

 彼女達の、【(イッ)(ツサ)(ンシ)(ャイ)(ンゴ)(ー!)】の魅力を最後まで書ききらなければ! その使命感が私を突き動かす。

 うおおおおッッッ!! カラダもってくれよ……エナドリ拳3倍だぁぁぁぁぁぁッッッ!!!


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