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【12345!】──『It’s Sunshine GO!』──②


 【(イッ)(ツサ)(ンシ)(ャイ)(ンゴ)(ー!)

 そのデビュー曲のタイトルは『It’s Sunshine GO!』と、彼女達のグループ名と掛けたものとなっていた。

 それが彼女達の口から宣言されると共に、照明の光が僅かに落とされて。会場内は静寂と一種の緊張に包まれる。これから初めてパフォーマンスを披露する清蘭きよら達もそうだが、その場面にこうして立ち会えた観客の側も、感激すると共に緊張をしていた。

 鼓動が速くなる。清蘭も、音唯瑠ねいるも、白千代しろちよも、エデンも、エルミカも、本番前から騒がしかった5人の心臓はさらに声を上げていた。

 それは、まるでこれから誕生をしていく卵のように。

 あるいは、これから飛び立つ蝶となる蛹のように。

 期待と希望に満ちた、鼓動の高まりであった。


 静寂を打ち破ったのは、穏やかなピアノの旋律。

 1小節目はただひたすらピアノの独壇場であり、5人はそれぞれポーズを取ったまま動かず。しかしその立ち姿というのも完全に静止しており、まるで人形のような不思議な魅力が観客の目を惹きつけていた。

 2小節目に入ると、"変化"が訪れる。

 両端を務めるエデンとエルミカが、遂に動き出したのだ。

 踊りもそうだが、改めて動く2人の姿──その衣装に、観客の目は集まっていた。


 中性的で男女のどちらも思わず息を飲むような微笑みを浮かべるエデン、そのトップスはツートンカラーで彩られていた。左半身は水色に、右半身は深紅とその大胆な色合いに観客の意識が奪われるも、さらに注目を集めるのはその。他の皆がスカートタイプである中、エデンは唯一ズボンタイプのものを着用していたのだ。

 しかも、さらにそれは燕尾がついており、さながら男性が着るようなものであることを強調している。しかし、エデンのその見た目には何の違和感もなかった。

 "男"として生きることを余儀なくされていた期間。それは何も無駄になることはなく、今のエデンの魅力の一要素として輝きの手助けをしていた。


 エデンが観客の目を独り占めする……ことはなかった。彼女と同じように、同じタイミングで踊る小さな少女、エルミカの存在があったことで。

 エルミカの衣装もまた、エデンとは異なる方向性で人々の注目を集める。トップスはエデンと同じくツートンカラー、ただ大きな違いとしてエデンと色の配置が逆になっており、左側は深紅、右側は水色に染められている。

 そして、女性らしさと男性らしさを融合させたエデンとは対照的に、エルミカの衣装はまさに"少女"というのを象徴するような作りとなっていた。水色のフリルスカートは彼女の動きに合わせてふわふわと可愛らしく動く、というのもあるが極めつけはエルミカの身につけているアクセサリーだった。

 それはもう見て分かる明らかなやつで。エルミカの頭の上には光り輝く天使の輪があった。さらに言えば背中からは天使の羽根が生えていて。それらはエルミカの無邪気で純粋さが爆発したような笑みと併せて人々に一瞬天国にいることを錯覚させていたのだった。


 "ダイヤモンドハンティングカップ"同様、2人のダンスは優雅で静かな曲調においても冴え渡っていた。それでいて、その絆の深さ故の動きのシンクロ率は、今宵も100%。

 だが、今回は──違う。

 深い絆で結ばれているのは、何もエデンとエルミカの姉妹同士だけではなく。2人と苦楽を共にした他の3人も同じで。


 エデン、エルミカに続いて次の小節からは音唯瑠と白千代もダンスに参加していた。その動きは、ほんの少しのズレもなく2人のダンスに合わさっていた。

 元々マイペースでゆるふわ系な雰囲気を放つ白千代。それをますます効果的に、且つ魅力的に映えさせる衣装を白千代は着ていた。

 ドレスタイプのトップスは、両肩から脇下にかけてクリーム色に染められており、それ以外の部分は純白という構成になっている。さらにそこに紫紺のストールでクラシックな上品さを演出し、スカートはふわふわとしたタイプのロングスカートであった。

 その上、頭には小さなティアラが載せられていてお姫様のようにも見えていて。しかし、自身の最大の武器である胸もまた、布の薄地さ故に白千代の動きに合わせて大いに揺れるため、主に男性客の目線を集めざるを得なかったのだった。


 刺激の強い格好をしている白千代と同じダンスを精一杯に踊る音唯瑠。

 確かに真剣、されど笑顔。そんな音唯瑠はワンピースタイプのトップスを着込んでいた。色は黒であり、スカートは膝あたりまで伸びているが、下地は煌めく星を思わせるグラデーションの青に、上から薄地の布で包んでそこに小さなアクセサリーをつけている。

 黒が基調とされた衣装ではあるが、全く暗い印象などは感じられなかった。今の音唯瑠は、本当に楽しそうに笑っているのだから。その証に、頭には前髪部分に、鳥の羽根のような髪留めがしてあった。


 それぞれがそれぞれの個性を演出し、魅せ、輝きながらダンスを踊り。それだけでもこの上にないほど彼女達に魅せられていた観客。


「輝け──自分らしく」


 だが、観客達は知る由もない。

 今から訪れるたった2分間余りの時間。

 それが、生涯忘れ得ぬ感動やインパクトを与えることになると共に。

 その始まりの予兆が、そんな言葉を歌った清蘭によって訪れることに──。


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