じゃない方とほぼ完璧な朝
今週も読みにきてくださってありがとうございます。
「おはようございます」
未亜が2階から降りてくると、キッチンの方からはいいパンの匂いがした。
「おはようございます。」
そう言ってマーサはお皿をダイニングテーブルに並べていく。
「手伝いますね。」
そう言ってコンロの横に置いてある山積みのパンと卵が載っているお皿を取ってダイニングに運ぶ。
(今日はスクランブルエッグだー。)
ダイニングテーブルにはすでに美味しそうなソーセージとサラダも並んでいる。一人暮らしをしていた時は、朝ごはんを食べずに出かけ、お腹が空いたら行きしなのコンビニで10秒チャージのゼリー飲料を飲んでいた身からするとすごく贅沢な朝ごはんだ。何気にパンはマーサの手作りだったりする。
「...おはよ...」
まだ髪の毛がボサボサで眠そうなリックが降りてくる。みんなが揃ったところで朝ごはんの開始だ。
(なんと言う平和な朝!)
窓からは日差しが入り込み食卓を照らし、先日未亜が初給料で買ってきたお花もテーブルに飾られ彩りを添えてくれている。
「いただきます。」
未亜が、こちらの世界に来てからもずっと続けていり習慣。いつの間にかマーサもリックも一緒にやってくれるようになった。一度リックに多分、宗教的には違うけどやって大丈夫?と聞いたら、
「『命の恵みをありがとう』って意味なんだろ?本質があっていれば気にしないさ。」
って言うことだった。と言うことで今はみんな揃っていただきます。と言っている。
(知らない別世界で「いただきます」か...)
未亜は懐かしさ半分嬉しさ半分でふふふと笑った。
「あらあら未亜様ご機嫌ですね!」
「だってマーサがいてくれて、リックがいてくれてこんな美味しい朝ごはんが食べれて、仕事まで見つかって...幸せだなぁ〜って。」
マーサの目も嬉しそうにきゅっと縮まる。
リックはまだ眠い目を擦りながら、
「恥ずかしいやつ」
とちょっとそっぽを向く。その態度がおかしくて未亜もまた笑い声を上げる。数ヶ月前にこの世界に来た時には考えられなかった光景だ。マルディナに移り住んで本当に良かったな、と思う。
「で、今日は何する予定なんだ?」
ふわーと大きなあくびをしながら心底興味が無さそうにリックは未亜の予定を聞く。監視役としてきているリックとマーサには重要な情報であるはずだが、最近は事務的に聞いているだけのようだった。二人は未亜を本当の家族のように扱ってくれているように感じていた。
(ありがたいな)
だからどんなことがあっても彼らには誠実でいたいと思う。
「うーん。今日は、来客の予定もないし、事務所でこの間の商談の続きのプロポーザル作りかな?あとは、過去の資料の整理とかかなぁ。どちらにしろオフィスにずっといる予定。」
お腹いっぱいになった未亜はマーサが入れてくれたお茶を飲みながら答える。そして
「ご馳走様でした。」
と小さく唱える。
「マーサとリックは?」
「私もいつもと変わりませんね。卵が切れているので卵と、後今晩はお魚をメイン料理にしようと思っているので海辺に買いに行くぐらいでしょうか?」
「俺は今日はちょっと教会に顔を出せって言われてるから行こうと思っている。」
顔全てにめんどくさいと書いてあるリックを見て笑ってしまう。
「珍しいね。教会に行くの。」
リックは司祭見習いのはずで、監視役という役割からももっと頻繁に教会に行っているのかと思いきや、未亜が知る限り、マルディナに引越してきてから片手で数えられるくらいしか行っていないように思う。そんなのでいいのだろうか...。
「んーなんか呼び出し。って言ってもミアのことじゃないぜ。内容は俺も詳しくは知らされていないけどさ、この町にいるなら来いって感じの連絡。いわゆるギョームメーレー」
手をひらひらさせながら心底嫌な顔をする。
「ということで、何かあっても俺は助けに行けないから、今日は事務所で大人しくしてろよ!」
未亜はは吹き出し
「なにそれ。そんな危ないこといつもしていないし、今日もしないよ。」
そう言いながらパタパタと使った食器を洗い場に持っていく。マーサは食器まで洗ってくれる。本当にありがたい!でもあまりにも申し訳なさすぎて、晩御飯の食器は未亜が洗わせてもらっている。
歯を磨きながらカバンの中身をチェックして、身だしなみを整えたらドアに向かう。
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい」
「おう」
そんな言葉に送り出されて未亜は太陽が降り注ぐ町に繰り出す。今日もいい日になりそうだなぁ〜なんて呑気に思いながら。
事務所のドアを開けながら元気よく
おはようございます!と声をあげる。そこには大抵誰もいないか仮眠をとっているディオゴがたまにいるだけだった。だから未亜はちっとも返事を期待していなかった。
「よ、邪魔してるぜ!」
白髪の短い髪を持ち日に焼けた肌、ある程度の年齢はいっているだろうに質の良さそうなシャツやベストの上からでもわかる筋肉質の体格、何より纏うオーラ。どうしよう、この人ってまさか...まさか...
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