今宵 決行
『まあ、フランさん。お久しぶりですわね?5年くらいかしら?あれからお仕事は上手くいきまして?』
暖炉の間でジュリアス婦人に再会を果たした。
5年もの年月が過ぎたのに、彼女は変わらない美貌を放っている。
[この美しさもまやかしなのでは?]
その姿ですら疑いたくなるが、怪しい動きは今は禁物だ。
笑顔を作り私は
『お陰さまで。あれから商売も軌道に乗りまして、従業員を雇えるまでになりまして』
うん。嘘は言ってない。
『そうでしたか。それは良かったですわ。』
ジュリアスもにこやかに返してくる。
奏功してるうちに料理が運ばれてくる。
あの双子のメイド[アインとツヴァイ]も変わらずに世話を焼いてくれるし、食事も変わらずに美味しかった。
私は気になっていたことを聞いてみる。
『婦人。あれから息子さんは見つかりましたか?それか。娘さんは来られたりしてますか?』
ジュリアスは一瞬暗い顔をする。
『いいえ。息子はあれから一度も連絡はないので、捜査は打ち切られました。娘は心配だったのか、何度か訪ねてきてくれましたが、やはり忙しいのか最近は来ていません。』
聞いてはまずかったのか、空気を重くしてしまった。私はすかさず頭を下げた。
『ジュリアス。申し訳なかった。場にそぐわない質問だった。気分を悪くしたなら謝ります。』
ジュリアスは静かに首をふる
『フランさん。お気になさらないで?私も踏ん切りはついているの。でも、やはり時間はかかるわ。』
無理やり笑顔を作ってるのがかえって苦しく見えた。
私はすかさず別の話を振る。
今回は働きすぎだから、休暇を友人から取るように言われたこと。
訪ねた町の景色や食べ物等を。
婦人は穏やかに聞いていてくれて、重かった雰囲気は少しずつ消えていった。
特に南の地で食べた蟹の話にジュリアスは興味津々で、是非食べに行きたいと。
(あまり旅行に行かないので、食べ歩きをしてみたいと言っていたな。)
気付くと夜はどっぷり更けてしまい。
結局、この日も泊まらせてもらうことに。
しかし、私の心は決まっていた。
フリードリヒ家は何を隠しているのか?
できる限り探ることにしよう。
寝室に入り、ベッドに潜る。
屋敷の中が静かになるまでフランは息を潜め
眠ったふりをしたのだ。




