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彼の友人は彼女の敵  作者: 石月 ひさか
彼のこれから
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1

公一は目を覚ますと、ぎこちない動作で体を起こし、大きな欠伸をした。


ベッドのすぐ横にある窓はすでにカーテンが開けられており、見慣れた中庭が見える。


「あー……めっちゃ寝た。今何時だ?」


最近仕事やプライベートが忙しく、1日5時間眠れれば良い方だった。


アラームもかけず、自然と目が覚めるまで爆睡したのは久々かもしれない。


あの事件から、今日で一週間が経った。


二人は神奈川の某所にある公一の実家へと来ており、この部屋も子供の頃から使っていた自室だ。


家庭を持つ際に殆どの私物は処分してしまった為、酷く殺風景だが、使い慣れたベッドは寝心地が良く、ついつい昼近くまで熟睡してしまったらしい。


「腹減ったな。そういや、深雪はどこにいるんだろ」


ぼやきながら、ベッドの隣を見る。


昨夜は確か、ここに布団を敷き、一緒に就寝したはずだ。深雪は深雪で別室を用意されているのだが、何かあった時に側にいなければと、急遽添い寝をしてくれる事になったのだ。


だが当然、寝具は綺麗に畳まれており、深雪の姿はない。恐らくもう起床しているのだろう。


取り敢えず何か腹に入れたいと思い、キッチンに内線をかけようと受話器を手に取る。するとドアが控え目にノックされ、深雪が顔を出した。


「起きていたのね。おはよう、気分はどう?」


「寝すぎたせいで、逆に眠たいって感じだな。今何時なんだ?」


深雪は自身の腕時計に視線をやる。


「11時位。もうお昼だから、まだ寝ていたら起こそうかなって思ったの」


「いいタイミングだったんだ」


小さく笑い、右腕だけを使い伸びをする。


「そういえばさっき、大木さんから連絡があったわ。まだ取り調べとか調査をしている最中みたいだけど、余罪がたくさん出てきたんですって。今回の不法侵入と傷害罪、器物破損とかで、相当長く食らうだろうって。もしかしたら、殺人未遂も適用されるかもしれない」


「そうか……」


こんな形で長年の友人を失う事になり、正直少し悲しい気持ちもある。だが、奴──笹川が犯した罪は、それほどに重い。


今回の件だけで何年になるのかはわからないが、奴はもともとヤミ金業をしており、他の余罪もたんまりあるだろう。


少なく見ても、10年以上は実刑判決をくらうはずだ。


無意識に俯いていると、深雪は心配そうにベッドに腰かける。


「大丈夫?肩と足、まだ痛む?」


「あぁ……まぁ、痛いけどなんとかな」


苦笑いを浮かべ、自身の左腕を見る。あの時は気付かなかったが、やはり鉄パイプで殴られた為、肩の骨にヒビが入っていた。加えて足の怪我もあり、療養を予て実家へ戻ってきたのだ。


深雪は全て自分が看病すると言っていたが、さすがに限界がある。


ここなら使用人も居るため、人手には困らない。

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