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彼の友人は彼女の敵  作者: 石月 ひさか
疑心暗鬼
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6

「マジかよ?あいつまさか、こんな事……」


『彼氏・旦那の浮気チェックリスト』に、いくつか印がついていた。


【帰りが遅く、連絡がつかない事が多々ある】

【最近妙に優しくなり、プレゼントが増えた】

【突然家を空ける事が多々ある】

【セックスの頻度が減った】


印がついているものの中には自覚がないものもあったが、自覚があるものだけでも結果は70%だ。


どうやら深雪はこれを見て、公一が浮気をしているのではないかと疑っているらしい。


「あっははは。馬鹿だなぁ。なんで俺が浮気なんて」


普通の女なら未だしも、深雪がこんな心配をして、ご丁寧にチェックリストに印までつけていたなんて。


その姿を想像するだけで笑えてしまう。


と同時に、ちゃんと愛されているんだなと、少しだけ嬉しく思った。


「にしてもプレゼントが浮気チェックに入るとか。機嫌取ろうとすると、逆に不機嫌の理由になるんだなぁ」


皮肉なものだ。


多少なりとも不安にさせた自分にも問題があるのだろうと反省していると、風呂から上がった深雪が戻ってきた。


「洗い物してくれたのね。ありがとう──どうしたの?」


にやにやが止まらず、深雪は訝し気に首を傾げた。


公一はソファから立ち上がると、体を抱き寄せて徐にキスをした。


「んっ……!?ど、どうしたのよ急に」


寝間着代わりのキャミソールの隙間から手を入れる。


耳から首筋に舌を這わせると、甘い声を漏らした。


「んっ……な、なに?急にそんな事──」


「最近してなかっただろ?」


「だけど、そんな急に……」


まだ何か言いたげな表情をしていた為、唇を塞いで舌を絡めた。


「んっ、んん……」


いつの間にか深雪の腕は首に回され、積極的に舌を絡めてきた。


──────────


暫くの間、互いに呼吸を整える為に荒い息遣いだけが続いていた。


深雪は目が合うと、笑顔を浮かべて「気持ち良かった」と囁く。


とたんに公一は赤面し、胸に顔を埋めてぼやく。


「今日は──いつもと違ったな」


「公一がそうさせたのよ。ねぇ、キスしたい」


髪を撫でながら言うと、公一は体を起こし、唇を重ねた。


「なんか今日は、初めての時より興奮したかも」


「私も。まだ、抜かないでね」


背中に腕を回すと、中に収まったまま強く抱き締める。


「まだするつもりなのか?」


さすがに2回もいったからすぐには無理だぞ……と苦笑いする。


しかし深雪は小さく首を振った。


「まだ、繋がっていたいだけ。こうしてると凄く安心するの。公一は、私のものなんだなって」


「なんだよそれ」


笑うと、態勢を変えて隣に寝転ぶ。


「俺はお前のものに決まってるだろ?ま、お前も俺のモンだけど」


「うん……。でも最近、少しだけ心配だったの。もし公一が、誰かのものになってしまったらどうしようって」


「あぁ……。俺さ、浮気とか不倫とか絶対しないから」


「……」


何故すぐにそんな言葉が出てくるのだろうか。


そう思った時、ソファの隙間に雑誌を隠したままだった事を思い出した。


慌てて起き上がり、雑誌を探す。


しかしそれはもう、そこにはなく、テーブルの上に広げられているのに気付いた。


「み、見たの!?」


「あぁ、見た。あんな場所にあったら、誰だって気になるって。まさかお前が浮気を心配してるなんて」


前みたいに殴りかかられなくて良かったと笑われ、今度は深雪が顔を真っ赤にする。


「だ、だって!最近、公一の様子がおかしいから……。もしかしたらって心配で」


「ごめん。俺は深雪の様子が変だから、何か怒ってるのかなって思って。でもそれが、逆に不安にさせちゃったんだな」


呟くと、真っ直ぐに目を見ながら言う。


「俺が愛してるのは深雪だけだよ。これからもずっと。だから、もし何か心配したり、不安に思うことがあったらすぐに言って欲しい」


「……公一」


真剣な目に、思わず罪悪感を抱いてしまった。


勿論それは、先程スマホを覗き見ようとしてしまった事に対してだ。


今なら、きっと答えてくれるかもしれない。


そう思い、恐る恐る問う。


「土曜日、いつもどこへ行ってるの?」


「えっ」


しかし公一は顔を強張らせ、目を泳がせた。


「いや、仕事だって。前に言っただろ?」


「でも、夜の9時よ?朝まで帰って来ない事もあるし……。一体誰と会ってるの?」


「それは──取引先とか色々だよ。中には、夜しか時間が取れない人もいるんだ」


「──そう。わかったわ」


ショックだった。せっかく心を通わせて、わだかまりがなくなると思っていたのに。


Kは絶対に仕事仲間ではない。


どうしても彼の事を隠したいのだ。


だが仕事相手だと言い張るのならば、別の方法で阻止するまでだ。


「じゃあ、今週の土曜日はでかけないで家にいて欲しいの。それで、1日中してましょうよ」


甘えた声で良い、すり寄る。公一は僅かに反応した。


「1日中するって……マジで言ってるのか?」


「勿論本気よ。だって何週間もしてなかったのよ?今日のだけじゃ足りない……もっとたくさんしたいの。だから、土曜日は仕事になんか行かないで」


わざと胸を押し当て、誘惑する。中に収まったままのものが反応しかけていることに気付き、敢えて体を離した。


「いや、だけど先約が……。今日じゃだめなのか?」


「今日はもう、体力がないもの。それに明日は仕事でしょう?足腰が立たなくなるかもしれないんだから、土曜日にしなきゃね?」


「……」


かなり葛藤しているのが手に取る様にわかる。だが、こんなに誘っているのに即答してくれないのが気に入らない。


それほどまでに、相手は大事な人間なのか。


だが妻として、男相手に負けるわけにはいかない。


「お願い公一。私の事愛してるんでしょう?だったらそばにいて。そして、1日中ずっと……」


「わ、わかった!わかったから挑発するような事をするのやめてくれ!」


いつの間にか公一のモノは、先程のように昂っていた。


勝った。どこの誰かもわからない男にだが。


「嬉しい!絶対に約束よ!」


「あぁ、わかった。取り敢えず、これ、どうにかしないと」


呟き、下半身に視線をやる。


正直もう気分は冷めてしまったが、このまま寝ろと言うのは可哀想だろうと思った。


「じゃああと1回だけ。でもここじゃいや。ベッドに連れていって」


両手を伸ばすと、深雪の体を抱き上げて寝室へ向かった。


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