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「先に入るよ」
「え、えぇ。ごゆっくり」
見送り、湯船に浸かったのを音で確認して寝室へ向かう。
「あった」
ベッドの上には、案の定公一のスマホが起きっぱなしになっていた。
画面をつけ、ロック解除を試してみる。
しかしフェイスIDになっているらしく、解除できなかった事を意味する悲し気なアイコンが出てきた。
「まぁ、さすがにロックはしてあるわよね。顔認証か……。ロック番号ならなんとかなると思ったのに」
恐らくロック場所で解除する事もできるだろうが、何度も間違えるとスマホ自体に数分のロックがかかってしまう。
その表示を見られてしまうと、解除を試した事がバレてしまうのだ。
「何かないかしら。相手を特定する方法が──」
じっと画面を見ていると、ロック画面に新着メッセージの一部が表示された。
そこには『K 忘れるなよ』とだけ出ている。
その名前を見た瞬間、深雪は思い出した。
あれは確か、まだ秘書課で仕事をしていた時だ。
公一が誰かと口論しており、そのあとに来た電話にうっかり出てしまった。
その事で強く怒られてしまい、もう二度と勝手にスマホを見ないと約束したのだ。
「確かKって、男だったわよね。じゃあ浮気じゃないのね……良かった」
結局の所、誰なのかはわからないが、男ならば浮気の心配はない。
夜に出掛けていくのも、煙草臭いのも納得だ。
下らない疑いを持ってしまった自分を恥じた時、ふと気付いた。
それなら何故、仕事だと嘘をついたのだろうか?
思えばあの時もそうだ。
相手が誰なのか教えてくれなかったし、ビックリするほど強く怒られた。
それに多分──深雪が皆とスパに行っている間に部屋に上げた筈だ。
部屋に上げるのは構わないが、何も報告がないのは気になる。まぁ、その後自分も似たような事をした為、責められる立場ではないが。




