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タクシーを拾う為に繁華街を歩きながら、深雪はちらりと公一を見る。
「ねぇ、出張って何日くらい?どこへ行くの?」
そう問うと、公一は「あぁ」と呟き、笑う。
「あれは嘘。──いや、嘘ではないか。日帰り出張だから。でも、準備が必要ってのは嘘」
「そうなの?」
てっきり、1週間くらい留守にするものだと思っていたため、拍子抜けしてしまう。
「あれは、帰る為の口実だ。あの小林ってのが気に食わなかったから。調子こいてる奴にマウント取るのって楽しいな」
手にしていた名刺を丸めると、近くのゴミ箱へ放り込む。
「そうだったの。でも良かった。和康は確かにしつこかったから、あなたと喧嘩し出すんじゃないかって冷や冷やしたわ」
昔の公一なら、まず間違いなく乱闘騒ぎになっていただろう。
予想外の穏便解決に、心の底から安堵している。
「そりゃ、本音を言えば、表に引っ張り出して殴ってやりたいさ。だけどあんな場所だし、俺にも社会的地位があるから。取引先の社員をぶん殴るわけにはいかないだろ?」
「それもそうね」
意外にも常識的な返答に、ちょっとだけ意外性を感じた。
公一ももう、充分大人だ。
昔の様に、感情任せに行動する様な事もないのだろう。
「で、同窓会は楽しかったか?」
改めて問われ、複雑な表情を浮かべる。
「楽しくないって事はないわよ。だけど、ちょっと疲れたわ。だって、知らない人ばかりなんだもの。あ、でも会いたかった人に会えたのは良かったわ」
そう言うと、公一は少しムッとした。
「会いたかった人って誰だよ?初恋の人とかか?」
「まさか。担任の先生よ」
「担任?意外だな。先公なんて、一番会いたくない奴だけどなぁ」
どうやら公一は、未だに担任が苦手らしい。
「タクシー捕まらないな。やっぱ週末は出払ってるのかな」
呟き、スマートフォンを操作していると、ふとなにかを思い付いたらしい。
「そうだ。今度は知っている人達だけの同窓会をやろうか。例えば、昔の仲間を集めてとか」
「昔の仲間を………?」
2人の間にいる共通の仲間と言えば、自ずとメンバーは限られる。
そのメンバーは、一番気心が知れている仲間なのだ。
「うん、それなら会いたい。会いたくない奴もいるけど………でも、今の同窓会より楽しそうね」
悪い仲間は、なんだかんだで付き合いが長く、結束も固い。
公一の口調的に、気まぐれで言っただけだということはわかっていたが、可能性は低くても、そう提案してくれた事が嬉しかった。
「じゃあ、近いうちに連絡とってみるよ。あ、ナイスタイミング。あれに乗ろう」
ちょうど空車がやってきて、手を上げて止める。
乗り込むと、タクシーはまっすぐマンションへと走り去って行った。




