帰還
目を開けると見覚えのある景色。そこは私の部屋だった。
召喚された場所に戻るのかと思っていたから、肩透かしを食らったようだ。懐かしさと代わり映えのない光景に足の力が抜けて、床にペタリと座り込む。
「帰って…来たんだ…」
思わず溢れた呟きは静かな部屋に吸い込まれていく。
そういえば手紙や金貨と一緒に左手がうっかり巻き込まれて送還された時、直接家に送られたんだっけ。
セオ王子はそれを応用して私を送ってくれたのかもしれない。凄い人だ。変態と思っていてごめんなさい。
ぼんやりとそんな事を考えているとアルの顔が浮かんでくる。ついさっき別れたばかりだと言うのに、会いたいと思うのは仕方がないと思う。
涙が出てきて止まらない。
自分で決めた事じゃないか。それなのに泣くのはズルい。目を擦って息を整える。そうしないと、また泣きそうだったから。
そのまま、脱力したように動けないでいたが、背中に感じる重みを思い出して、のそりとそれを降ろす。
背中に背負っていた物はそこそこ大きめのリュック。召喚された時には持っていなかった物である。それの中を確認すると、大量の金貨が目に入る。
「金貨…」
そうだ。私は金貨と言う対価と引き換えに異世界で勇者となったのだ。これは自分の望んだ事ではないか。しっかりしろ!私は本来の世界で生きていく事を決めたんじゃないか!こんな事ではアルに顔向けできない。
頬をペチッと叩くと、金貨を手に取る。
幾らになるかは分からないけれど、大量にあれば当分困らないだろう。リュックを持って2階の自室を出て、階下に向かう事にした。
部屋にある時計を確認したら、今は夕方の6時を回った所だった。確かに外も薄暗い。カレンダーは私が召喚された月のままで放置されていたので、正確な日付は分からないからそれも確認しないと。
今の時間ならば夕食の仕度をする母が台所にでも居るだろうと、足に力を入れてそちらに向かう。
台所に行ったら母と弟が居た。久しぶりに会えた喜びに抱きつかんばかりで歩み寄ったら、思いきり叫ばれた。
「いやぁぁぁぁぁぁ!!触らないでぇぇぇぇ!!!」
ちょ…あんまりじゃないか。
今回は話の流れ上かなり短くなってしまいました。すみません。
次回からはコメディなノリに戻ります。




