ラブコメ展開ですか?
王宮に着くと、やっぱりアルにお姫様抱っこをされたまま、私に宛がわれている部屋まで戻ってきた。
「アルバート王子!!ミナ様!!どうなさったんですか!?」
アルに抱かれたまま寝室のベッドに寝かせられた私を見て、ロズさんが慌てて駆け寄ってくる。
心配そうな表情で私とアルを交互に見つめるロズさんはこんな時に不謹慎だが、可愛い。久々のロズさんに癒される。
「ミナ何をニヤニヤしているんだ?」
横になったままでロズさんを見ながらニヤニヤしている私に怪訝な表情でアルが問い掛けてくる。
「ロズさんが可愛いなぁ…と思いまして」
「お前は相変わらずズレてるな…そこがミナらしいのだが」
私の頭を撫でながらアルがぼんやりと答える。気のせいか、よく頭を撫でられるようになったような。気持ちいいから構わないけど。
これ普通の女の子なら勘違いしてしまうのではないだろうか。
「ミナ様とりあえず何かお茶をお持ちしますね」
視線を外したままロズさんが慌てて寝室を出て行ってしまった。
ちょ!?何か勘違いしていないだろうな彼女。
ロズさんが出て行った扉を見ながら「彼女が誤解しないと良いのですが」と呟くと、アルがキリッとした顔でこちらを見つめてくる。
「俺は誤解されても構わないぞ」
「へ!?何でですか?アルはこの国の王子様なんですよ」
「王子とか関係ない。俺はお前が――…」
「ミナー!!お邪魔するよ〜」
アルが何かを言い切る前に、寝室の扉が盛大に開く。
そこにはセオ王子が笑顔で立っていた。
「チッ…何の用?セオドア」
「ん〜あれぇ?アルバートも居たんだ。僕は君じゃなくてミナに用があるんだよね〜」
ちょ!?アル今「チッ」って舌打ちしませんでしたか!?王子がそんな事しちゃいかんでしょう。
「ミナは貧血で体調が良くないから話は別の日にしても構わないか?」
アルがそう言うと、セオ王子が驚いた表情でこちらを見てくる。
「本当なのミナ?」
「すみません…少しだけふらふらしちゃうので、ご用件は明日でもいいですか?」
「大丈夫。それよりも貧血って事は血が足りないのかな?」
「はい…」
軽く頷いて包帯の巻いてある腕を見せる。血は止まっているが、白い包帯には微かに赤く染まっている部分がある。
「色々ありまして…」
苦笑いをしながら肯定すると、セオ王子が近付いてきて、包帯の巻かれている腕を取ると、そこに唇をあてた。
ちょ!?え!?な…!?
「早く体調が回復するおまじない。傷はウラディミールに癒してもらったらいいよ。さっミナを休ませないと、行くよアルバート」
「ちょ…おい!?セオドア!!俺はミナの側に――」
そう言ってセオ王子は何事か文句を言っているアルを連れて寝室を出て行った。
嵐のようだった。
しかしセオ王子、以前も血を飲むのに首筋に舌を這わせてきたけど、今度は腕の包帯とか…。
やっぱり変態だ。
二人が出て行ってからしばらく後にロズさんが紅茶を持って戻ってきた。
「あら!?アルバート王子は?」
「アルならセオ王子に連れられて出て行ったよ」
「まぁそうでしたか…遅くなり申し訳ありません」
「気にしないで。せっかくだし一緒に飲もうよ」
上半身を起こして、ロズさんを手招きする。ロズさんも慣れたもので「ではお言葉に甘えまして」とベッド側の椅子に腰掛ける。
早い内から気兼ねなく一緒にお茶を飲んだり話をしたいとお願いしていたので、ロズさんも私にそれとなく合わせてくれるのだ。
ロズさん好きだなぁ。
やっぱり女の子はいいよ。落ち着くし、可愛いし、良い匂いがするし。
言っちゃ悪いけど騎士さんとかね…プレートアーマーって言うの?ある程度体を覆う鎧で蒸れるのか、汗臭い時があるんだよね。
特に魔物さんを討伐した時なんか、魔物の返り血と腐敗臭と、そこにプラスして鎧を脱いだ騎士さん達の体臭が混ざりあってね…。
物語のように格好いいだけじゃないんだな――って、現実が見られたよ。
香水で誤魔化す人もいたけど、香水と体臭が混ざり合うと、これまたちょっとした拷問でした。
臭覚の良い人間相手には驚異の威力を発揮する事間違いなし。
アルは鎧じゃないから臭くはないけど。ほんのり香水の良い香りがするし。
しかし布製の服で魔物と戦うのは自殺行為なのではないだろうか。今度聞いておこう。
「それにしてもお戻りになるなり寝室に向かわれましたから、何事かと思いました」
「あぁ…ごめんね。ちょっと貧血気味で。心配してくれたアルが運んでくれたの」
「まぁ!!ではすぐにでも休まれた方がよろしいです。気が付かなくて申し訳ございません。私はてっきりアルバート王子と――」
続きは言わなくても解る。なんだか誤解されている。はっきり否定しておいた方が今後の安寧の為にも必要だろう。
「ロズさん誤解してるみたいだけど、私とアルは何でもないからね。寧ろそれだったらロズさんのが好きだから!!」
精一杯否定する。
「ミナ様…えっと…今日はゆっくり休んで下さい。目が覚める頃に体力のつく料理をお持ちしますから」
視線をさ迷わせながらロズさんは言いきると寝室を出て行った。
何?別の意味で誤解してる?
布団に潜り込むとひっそりと溜め息を吐きながらこう思う。
早く日本に帰りたい。




