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忍者にはなれそうにありません

サブタイトルと内容は全然違います。

「おぇ…」


あまりの気持ち悪さに胃の中がキリキリする。


私は胃の辺りを擦りながら、騎士さんの訓練所の屋根で空を見上げていた。

もう夕暮れ時なせいか、陽も沈みかけて訓練所から見える真っ白な王宮が、オレンジ色に染まって綺麗だ。


今日は朝から今まで一日中反復横跳びならぬ、ひたすらジャンプをしていた。


地獄だった。


初めは小さな苗木から始まって、それが徐々に高くなっていき、訓練所の回りに生えている木々を飛び越えた辺りからウラディミールさんのスパルタが始まった。


ジャンプの後の着地でふらつくな

着地は華麗に美しく

怖がらず翔びなさい

滞空時間を少しでも長くしなさい



○ねばいいのに――



まさか、平和主義の私が他人に対してこんな事を思う日が来ようとは、異世界…恐ろしい()


そんな訳で、ひたすら翔ぶ練習をしていた私は奇妙な浮遊感で気分が悪くなり、訓練所の屋根で小休憩をしていた。


「ミナ様ー!早く降りてきて下さい!」


下の方からウラディミールさんの声が聞こえてくる。


神官って、静かで清楚なイメージだったのにウラディミールさんのおかげでドンドン神官のイメージが変わっていく。


「気分が悪いので少し休ませて下さい」


そう返して、屋根の上にゴロンと横になる。


屋根は仄かに暖かくて気持ちが良い。朝から訓練ばかりで正直疲れていたから、ちょっとだけ眠らせてもらえないだろうか。


目を閉じると、うつらうつらしてくる。

少しだけ、少しだけ眠らせて下さい。


そのまま私は夢の世界に沈んでいった。


ふわふわと揺れる揺り籠に乗っているような心地好い浮遊感と温かさ。温もりが気持ち良くて、離れがたい。


甘えるようにぎゅっとしがみつくと、浮遊感が止まったかと思うと、さっきよりも温もりを近くに感じる。そして、また心地好い浮遊感に包まれる。


温もりから離れないようにしていると浮遊感がなくなり、かわりに背中に柔らかな感触。


それから、額、頬、唇にも温かく柔らかな感触がする。


その心地好い感触にうっすらと目を開けると、すぐそこにはアルバート王子の顔があった。


「起きたのか?まだ寝ているといい」


そう言うとアルバート王子の掌が私の頭や髪を何度も撫でてくる。気持ちいい。


「アル…バート…王子?」

「アルでいい。それよりも気分が悪いのだろう?ゆっくり休め」


優しく微笑まれて、私も微笑み返しながら再び瞼を閉じた。






◇◇






「ふわぁ〜」


瞼をこすって伸びをする。

知らない間に眠ってしまっていたようだ。何だか良い夢を見ていたような気がする。


上体を起こして辺りを見回すと、そこは私に与えられている私室だった。ベッドで寝ていた所を見ると誰かが運んでくれたらしい。


誰が運んでくれたんだろう。


訓練中に横になって、そのまま眠ってしまったのだろう。思い返すと恥ずかしい。

しかし、あの時は本当に気分が悪かったので仕方がないと思う。


そこまで思い出して、ハタと気付く。あれは夢ではなかったのかもしれない。


眠っていた私を運んでくれたのはアルバート王子かもしれない。温かくて気持ち良くて甘えてしまっていたような――…


うがぁぁぁぁ!!!!


なんたる黒歴史!!

羞恥に顔が真っ赤に染まる。


枕に顔を突っ伏して、布団の中で足をジタバタさせていると、扉をノックする音が聞こえた。



「ど…どうぞ」


いそいそと髪を整えて、ベッドから起き上がる。すると、「失礼致します」の声と共に、タイミングよく扉が開いた。


「ミナ様お加減はいかがですか?薬湯をお持ちしました」


ロズさんが手にお盆を持って入ってくる。お盆の上には、コップとお菓子が乗っていた。


「ミナ様…体調はいかがですか?」


ロズさんの後ろから、伺うようにウラディミールさんが顔を出す。


「ロズさんありがとうございます」


ベッドに腰掛けたままコップを受け取ると、お茶のような緑色をした液体が入っていた。これが薬湯なのだろう。


「ウラディミールさんすみません…訓練の最中だったのに、眠ってしまって」


ペコリと謝ってから薬湯を口に含む。苦味があって、独特な味がした。


口直しにと、お菓子を進められたので、それも一口食べる。甘味が強いが薬湯の苦味を緩和してくれて、丁度良い感じだ。


「ミナ様申し訳ありません。貴女の体調の異変に気が付かず、急かすように訓練を続けた私の落ち度です」

「私も気分が悪いのを直ぐに伝えなかったのが悪いのだし、気にしないで下さい。寧ろ心配をおかけしてすみません」


お互いに謝り合って、目が合うとくすりと笑い合ってしまった。

そのまま一気に薬湯を飲むと、私は疑問を口にした。


「それよりもここまで運んでくれたのは――…」

「はい…失礼かとは思いましたが、こちらまで運ばせて頂きました」


アルバート王子ですか?と全部言い終える前に、ウラディミールさんが口を開いた。


ウラディミールさんが運んでくれたのか…。

じゃあ、あれはやっぱり夢だったのか。


何となくガッカリ半分、ホッとしたの半分で「運んでくれてありがとうございました」と伝えた。






あれ?何でガッカリしているんだ私?








狩りの話は次回になります。

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