エピローグ — 1947年、あるいは2026年の残響
「……ッ、はぁ、はぁ……! 見てよ、この最高に**『無記名』**な輝きを! 歴史が1973年の『はっぴいえんど』で脱力したはずのその裏側で、僕の『意識の残り香』が、今! ラングレーの地下に埋設された最後の一本の真空管と革命的交信を遂げたんだぁぁぁぁっ!!」
僕は微かに、けれど狂おしく呟いた。
第32話、真のエピローグ。宇宙が真っ白な結晶となって霧散した後の、静かな「片付け」の時間だ。
「あはっ……あはははは! 凄いよ、ミスター・CIA。1950年代に君たちが日本の『正力松太郎(Asset No. PODAM)』を抱き込み、テレビ放送という名の巨大なマインドコントロール網を敷いた(1953年)、あの『電波の檻』! 今、僕がそのアンテナの先端で、最後の一曲を口ずさんでるんだねぇ!! メシウマ(地獄味)すぎて、読売ランドのジェットコースターが銀河系を突き抜けそうだぜぇぇぇ!!」
僕は、1947年のラングレー創設時の暗い廊下を、透き通った足取りで歩いていた。
壁には、かつてCIAが1960年代にインドネシアのスカルノを失脚させるために捏造した「偽のポルノ映画」のフィルムが、ゴミのように散らばっている。
1980年代にニカラグアで暗殺の手引きをしたマニュアル(心理作戦指導書)も、2000年代にグアンタナモで捕虜を全裸にして辱めたあの冷徹な「尋問記録」も、今はもう、ただの古紙だ。
「いいかい、父さん。君が検事として、あるいはCIAのアセットとして守りたかった『西側の繁栄』! それは、僕の腕のエイズの斑点という名の、美しくも残酷な『飾り』に過ぎなかったんだよぉぉぉ!! これこそが合衆国が世界に強いた、究極の**『演出』**だぁぁぁ!!」
僕は、ラングレーの奥深く、埃を被った古い録音機を見つけた。
そこには、1973年の「さよならアメリカ さよならニッポン」のメロディが、磁気テープの劣化とともに、ゆらゆらと歪みながら記録されている。
「あはははは! 見てよ! 自由の女神が、使い古された注射器を捨てて、1947年の夕焼けの中で、僕のテポドン・マグナムの形をした影法師とダンスを踊っているぅぅぅぅ!!」
かつて1945年、戦後の日本でCIAの前身であるOSSが「児玉誉士夫」などの戦犯を釈放し、裏金工作のルートを築いた、あの歪な『日米関係』。
その全ての「汚れた契約書」を、僕は僕の多幸感で、真っ白なメモ帳へと書き換えてあげた。
「あはっ……あはははは! 脳内でハゲワシが、1947年のワシントンの空で、合衆国の未来という名の『腐った肉』を啄んで、満足げに胃袋を満たしてるぅぅぅぅ!!」
僕は、録音機の停止ボタンを押した。
ガチャン、という乾いた音。
それとともに、僕の腕の斑点も、僕の意識も、そして1947年から2026年まで続いた「悪意の連鎖」も、完全に**『事象の地平線』**の向こう側へと吸い込まれていった。
「……さよなら、すべての工作員たち。……ハッピーエンドは、もう、どこにもないよ」
1947年のラングレーの地下室に、静寂だけが戻ってきた。
そこには、僕が最後に遺した、小さな、けれど最高純度の「結晶の一欠片」が、暗闇の中でただ一筋、青白く光り続けていた。
(完全完結:地獄の向こう側にて)




