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脱リア充のススメ。~発達障がいの子に家庭教師をしていた陰キャの僕はいつの間にか生徒会長~  作者: 霧


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10/23

かみ合わない会話

「そういえば、今度の小野不由美先生の新作、三年ぶりだよね」

 歴史総合の時間の合間。


 まとめるのも疲れて、こうして資料作りとは関係ないことを話していた。


 同じ班になって。祇園さんと資料のこと以外でも話すことが増えた。彼女も図書館で僕のことを見かけていたらしく、時々こうやって小説の話題を振ってくる。


 吉塚と古賀は小説に興味があまりないのか、話題が移るとすぐにスマホをいじるか、二人で話始めるので。祇園さんとは二人きりで話せる。


 喫茶店とかでデートしたらもっと楽しいんだろうか。彼女のカラスの濡れ羽色の髪を眺めながら、そんな妄想が浮かんできた。


 祇園さんとは気になっている女子、という色眼鏡を外しても親しくなったとは思う。

他の女子より明らかに話す時間も多いし、どもりやすい僕が彼女とははきはきと話せている。


 一緒に遊んだわけでも、デートしたわけでもないけれど。


 恋愛指南や心理学の本によれば、一緒にいる時間が長いほど心理的な距離は近づくものらしい。単純接触効果というやつだ。

 夫婦でも、愛は冷めても情は深くなるという。


 接点がほぼなかった時に頑張って話し掛けたのも、少しは意味があったのかと思う。

 でも。


「新作、読んでみた?」


 小野不由美先生なら、一千万部越えのベストセラー作家だし代表作の名前くらいは聞いたことがある。地球から異世界にやってきた様々な時代の人間が、十二の国を舞台に謀略の渦に巻き込まれていく。


 でも軽く斜め読みしたくらいで、詳しく読んだことはない。主人公が女子だし、文体がとっつきづらかったから。


「うん、陽子が襲われた所に麒麟が間一髪助けに入ったところなんか、面白いよね」


 一巻の始めのシーンだから、これくらいはなんとかわかる。


「そう! その後海に落ちて、幻に苦しむところとかぐっときて」


 幻? そんな描写はあったような気がするけれど……


「……そうそう、苦しそうだった」

「そう、だね。そういえば、フランス革命と舞台が似てる本なんだけど……」


 僕の口調からよく理解できていないことを察したのか、祇園さんは本の内容を変えてきた。

今度は名前もよく知らない作家さんだ。


 でも祇園さんが僕と本の話をしようとしてくれるのはうれしくて。

 僕はよく知らない作家さんの名前と本の内容を、「そうだね」「面白そう」などの適当な相槌で受け答えする。

 祇園さんは図書館によくいる。だから同じ本好きの僕と、会話が合うと思った。

 でも僕が好むのは主にラノベと純文学だ。

 一方祇園さんは少女向けのティーンズノベルを好む。今は悪役令嬢ものにもはまっているらしい。


 でも僕は、それらをあまり読まない。

 太宰治や司馬遼太郎といったメジャーな作家も読んだことはあるらしいけど、それほど内容に詳しくないらしい。会話が盛り上がることなくすぐに終わってしまった。


 同じ本好きでも内容が良くわからなくて、うまく会話がつなげない、というか盛り上がらない。今までの読書経験を活かして、どこが面白いかを推測しながら会話をつなぐのが精一杯で。


「ごめんね、わかりにくかったよ、ね」


 妙な間が空いてしまったせいか。僕が彼女のテンションについていけていないのを感じたのか、彼女の口調が尻すぼみになる。

 ああ、まただ。


 会話が上滑りしてしまう。


 所々盛り上がっても、彼女の心の琴線に響かないのがよくわかる。

 どうして気になった異性と、こんな風になってしまうのだろう。


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