表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/7

7 ※残酷・ネタばれ注意


 ……恨みの声が革命広場を席巻しています。数百年に渡り民衆の上に君臨し、虐げてきた憎い王家。その最後を見届けようと集まった人々が、広場の中心に置かれた器具へと視線を注ぎます。


 地味で薄幸な王妃リディアーヌ、つまり私が、最後の最後に目立つシーンです。心して臨まねばなりません。


 見物する人々の中にロラン様はいるでしょうか? 私を助けに来てくれる? 私はもう一度だけでも、最後にロラン様に会いたいでしょうか?


 いいえ――いいえ。


 むしろここに、あの人にはいてほしくない。このあと自分がどうなるかと思うと、彼には絶対に見られたくないのです。ロラン様の記憶に残る私の姿がそれでは、とても耐えられないでしょう。


 だから彼の姿を捜しません。いないと思っていたいのです。


 階段へと踏みだす私の足は震えています。

 うそみたいです、自分がもうすぐ死ぬなんて。怖いです。怖くてたまりません。


「ああ……」


 何度も悪夢に出て来たあの器械が、とうとう本当に目の前に現われました。


 大きく肩で息をし、つばを飲み込みます。怖くてたまりませんから、何か楽しいことでも考えましょう。……だめです、無理です。紛れるはずがありません。


 すでに髪は短く切られていました。露わになったこの首が、あの器械に嵌められます。


 誰だって自分の命は惜しいです。私も本当は死ぬのは嫌です、怖いです。ロラン様にも恨み事を言いたくなってきました。後悔しないと決めたはずなのに、揺らいでしまいそうです。


 処刑台の床についた、赤黒い染みが見えました。


 全身の血が沸騰するような、またその反対に、全て絞り取られてしまったかのような、おかしな感覚に襲われています。熱いのか冷たいのか、もうよくわからない。


 あまりの恐怖でこれが現実なのかどうか、段々わからなくなってきました。私、本当にしぬんでしょうか? いいえ、これは夢です。現実のはずがありません。




 現実からの逃避を望んだ私が最後に思うこと。


(マリウスの腕の中で死んだエポニーヌは、最後に何を考えたかしら。たとえ死ぬ前でも、愛する人を救えて、腕にも抱かれて幸せだった?)


 『愛する人を守って死ねたら幸せ』。


 そんなのは綺麗事でしょうか。どうしようもないほど哀れな自分を慰めるための、ただの思い込み? 哀しい自己欺瞞ですか?


(……だけどね。もしも、もしもそれが)


 その綺麗事こそ真実だったら? エポニーヌが幸せだったなら。


 きっと、私も――。



 




偉大な文豪に尽きぬ敬意を。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ