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捜索

 私たちは村長宅の扉から勢いよく飛び出した。

 そのときに生まれた風で、地面に落ちていた木の葉が舞い上がる。


 本来ならヒラヒラと落ちるはずのそれは、思考加速の影響で、まるで鳥の羽のようにゆっくりとした動きに感じられた。


 そうして世界がスローモーションになる中、私たちはアーシェを見つけるための作戦を瞬時に立てる。


「早く見つけ出さなきゃ」


 私は以前見た、遭難時の生存率と経過時間の関係を示すグラフを頭の中で思い浮かべた。

 でもここは異世界だから、きっと危険な場所とか動物とかの影響で生存率はもっとずっと低いんだと思う。

 だからこそ、アーシェの父さんはあれほど切羽詰まった様子だったんだろう。


「効率よくいかないとね……」

〈位置を絞れば探知速度を向上できます……〉

「どの辺りに居るかは私が考えるから……」

〈はい、高速探知用の魔法を生成します〉


 そうして息ぴったりといった様子で、あっという間にアーシェを探すための段取りが組まれる。そして私たちは即座に行動に移した。


〈作戦行動を開始します〉

「絶対に無事に連れ帰るよ!」

〈もちろんです!〉


 私にたくさんの暖かいものをくれたこの村に少しでも恩を返そう。

 アーシェちゃんは絶対助けるんだ。

 心のなかでそう決意し、高速で思考を巡らせアーシェの居場所について冷静に思案する。

 心は熱く、頭は冷静にね。


(アーシェちゃんが家を出たのは、流石に夜ではないと思う。そう仮定すると、この村を出発したのは今朝ってことになるよね。だとしたら、それほど遠くへは行っていないはず。昨日の様子だと、それほど身体能力が高いようにも見えなかったし、遠くても10キロ圏内には居るんじゃないかな。

 あとは方角だけど……)


 私はそう思って村で一番高い建物を見繕う。


(やっぱり村長の家がいいね)


 ──身体強化


 私は、女神装備の力を使って思い切りジャンプし、村長の家の屋根に飛び乗った。身につけているクリムゾンシリーズの腰マントが風で軽くなびいているのを感じる。


 ──知覚強化


 こうして、女神装備の力をフル活用することで、かなり遠くまで見渡すことができた。


 畑の周囲には緩やかな丘陵地帯が、更にその向こうには風に波打つ大草原がどこまでも広がっていた。反対側には、広大な森があり、それよりも更に遠くには白く雪を被った美しい山脈が見える。

 森をよく見ると、一箇所だけ花が咲き誇っている所が見えた。


(あれって、アイカがやっちゃった所かな)


 そうしてぐるりと村の周りを見渡すことで、周辺地形は概ね把握できた。

 用も済んだので、屋根から軽やかに飛び降りる。

 それにしても女神装備のおかげで、人間離れした身体能力になっちゃったなあ。



 私がそうして飛び降り再び思案を始めると、アイカもこの場に最も適した魔法を構築をしていた。


 魔法核作成、探知術式、光信号術式、連鎖術式刻印……


 アイカの魔法生成に伴って、周囲の温度が少しだけ下がり、空中に氷の結晶が発生する。その結晶は見る間にも大きく成長し、腕くらいの氷柱が生成された。


 その氷柱は、ゆっくりと空中に浮かび徐々に回転をはじめる。陽光を浴びてキラキラと輝くそれに、アイカが次々と光る文字を刻印していく。

 その文字の光は、力ある文字(ルーン)のものだった。


 そして氷柱が2回ほどピカッと瞬くとアイカは軽くうなずいた。


〈完成です! マスター、どの辺りを探しましょうか?〉

「半径10キロの範囲を探して。いや、仮定も多いし安全みて15キロかな。方角は、あっちは見える範囲に人は居なかったし、魔法で探すなら森が優先かな。それに、こっちのほうが危険らしいからね」


 私は森の方向を指差しながら、アイカにアーシェの位置の予想を伝えた。


〈了解です。探知開始します!〉


 アイカはそう言うと、宙に浮かぶ氷柱に手を添える。


 ──カスタムマジック──マルチプル・サーチ・アイシクル


 アイカが探知魔法を発動した瞬間、氷柱がピカッと輝きを放った。


 私は眩しさに驚き、思わず目を瞑る。


 そして目を開けると、次の瞬間にはいくつもの氷柱が複製され宙に浮かんでいた。オリジナルと全く同じそれらの氷柱には、ルーンが刻まれており空中で高速回転をしている。


「わっ! なんかたくさん浮いてる!」


 私の驚きの声に、アイカが一瞬だけフフッとニヤケ顔になったが、すぐに気を取り直して手を振り上げる。

 すると、それらの氷柱が素早く上昇し上空で静止した。アイカも複数の氷柱と共に上空へと向かう。


〈ちょっと行ってきます〉


 アイカがそう言った後、氷柱が上空で四方に飛んでいったのが見えた。その氷柱のうちの一つが、遠くのほうの空でキラキラと光を放っている。目を凝らして見ると、明滅して何かの光信号を放っているのだと理解できた。


 その後すぐに、アイカが降りてきて状況を知らせてくれる。


〈マスター、見つけました! あちらの方角の森にいます。しかし周囲に複数の生体反応があります! 危険かもしれません!〉


 アイカは焦りまじりの声音で早口にそう言った。


 囲まれてるって、かなりまずい状況なんじゃ……。

 私は以前見た映画の危機的なワンシーンを思い出す。

 食べられちゃうかも!


「急ぐよ! つかまってて!」

〈はい!〉


 アイカが私の肩に乗り、がっちりと服を掴んだ。耳元で動かれるとちょっと、だけくすぐったかったが今はそんな事を気にしている余裕はない。

 私は体勢を低く構え、女神装備の力をフル活用して全力で駆け出した。


 ダッッッ!!!!!


 クラウチング猛ダッシュの一歩目。

 私が思い切り蹴ったせいで、足元の土が砂のように崩れ、派手に飛び散ったのが分かった。


 あちゃ~と思いながらもシュタタタッと駆ける足は止めない。

 ちらっと振り返ると、もくもくと砂埃が舞い上がっているのが見えた。


 そんな砂埃の中、獣人たちは叫ぶ。


「ゴホッゴホッ! 一体何が起きたの!?」

「妖精様たちが何か光らせたのが分かったが……」

「もしや俺の娘を探しに!? 後を追うぞ!」

「「「お、おう!!!!!」」」


 ここまで、扉を開けた時の勢いで宙を舞った木の葉が、地に落ちるまでの極短時間の出来事であった。


 ◇


 私は疾風よりも早く森を駆け抜けていた。


 次々と木々の間を抜け、倒木を軽々と飛び越えていく。

 状況が状況でなければ、爽快感を感じられるほどの速さだろう。


 そんな中、初めて人前で使用した女神装備の力について思ったことを口にする。

 だが、もちろん走る速さは緩めない。


「思考加速で会話出来ないってちょっと不便だね。あとででも良いからどうにかならない?」

〈それでしたら、即座に対応可能ですよ〉


 アイカはそう言って私のイヤリングに何かの術式を打ち込み始めた。「先程の同期を応用すれば……」などとぶつぶつ言いながら作業を進めている。


(もしかして、女神装備を改造してるの!?)


 神様の装備を借りパクしただけじゃなくて、改造まで!?

 うちの子はなんて恐れ多いことを!


「アイカ、後で返すんだからね!? 分かってる!?」

〈もちろん分かっておりますとも! アップグレードですから何も問題は有りません! さあ終わりましたよ!〉


 え、もう終わっちゃったの!?


(はぁ。女神様ごめんなさい!!!

 返す時には違う物になってしまっているかもしれません)


 私は心の中で五体投地をして、女神様に全力で謝った。


〈マスター! まもなく着きます!〉


 そんな女神様からお借りしている装備の力をフル活用したかいもあり、私たちは風の精霊もびっくりな速さで、アーシェの近くまで来ることができた。


〈カウント開始します。目視可能な位置まで5、4、3、2、1……0〉

「見えた!」


 その瞬間、私とアイカの緊張が一気に高まり、思考が更に加速する。


 私の視界に飛び込んできたのは、アーシェが森の獣たちに囲まれた姿だった。アーシェの顔を直接視認することはできず、かろうじて見えるのは、森を歩き回って汚れた細い足だけだった。


〈あれは!?〉

「魔獣かも!」


 アーシェの視認を阻むのは、ひときわ大きい白い魔獣の後ろ姿だった。

 見方によってはその魔獣に抑えつけられているようにも、今にも食らいつかれる寸前のようにも、あるいは手遅れのようにも見える。

 私は頭の中で最悪の事態を想像してしまう。


(無事でいてよ!!!)


 急がなきゃ、きっと手遅れになる!

 でも足音を立てたら魔獣に気づかれて、アーシェがもっと危ないかも!

 私はそんな葛藤の中、走るスピードを少しだけ緩めた。


「きゃっ! だめ!!!」


 少女の消え入りそうな叫び声。

 これは間違いなくアーシェの声だ。

 まだ生きていた!

 けれど、それは最後の叫びかも知れない。


((食べられちゃう!))


 私とアイカが同時にそう思った。


 この時アーシェまでは、まだ数歩ほどの距離があった。

 見えているのに、目の前にいるのに、すごく遠い。


 くそっ!

 こんなことなら、最後まで全力で走っていれば!

 私は足音を気にして、スピードを緩めた事を後悔した。


 そんな私の肩に乗るアイカは泣きそうな顔で、魔法式の構築を始めていた。少しでも早く魔法を放てるように。


 間に合わなかったんだ……。

 そう考えて心が挫けそうになる自分を必死に律して、すがるような想いで手をのばした。


(お願い……! 間に合って!)


 その瞬間──


 キュイーーーッ!


 ──白い魔獣が大きく鳴いた。



 聞き覚えのある鳴き声。


「あはは! そこはダメだよ! くすぐったいよぉ~」

〈マスター、この声って……〉

「もしかして……」


 白くて綺麗な毛並みに、モフモフの尻尾、そして決め手は額にある梵字のような朱色の模様。


 間違いない。


「ましゅ丸なんかーいっ!!!!!」

〈ましゅ丸かよーーーっ!!!!!〉


 私とアイカは駆けつけたときの勢いのまま、ズゴーッ!という音を立てて──

 ──盛大にすっ転んだのであった。

次回、聖獣。


**************************


読んで下さってありがとうございます!!!


この度、「評価10人」「ブクマ40人」を突破しましたーーーっ!!!

感想も頂けて感無量です!!

ここまで応援して頂き、ありがとうございました!!!!!


過去作でずっと埋もれていたのが嘘のようで

とーーーっても嬉しいです!!!!!


今回はそのお礼ということで……

魔法あり、女神装備あり、シリアスありで、笑いもありの

ボリュームたっぷり4000字でお届けしました!!!


もし『アーシェちゃん無事で良かった~』『面白かった!』『かっこよかった!』と

思って頂けていたら、ぜひ小説評価☆☆☆☆☆や感想で聞かせてください!!!

今回のような話が良いのか、どんな所を楽しみに読んで下さっているのか

知りたいので、ぜひぜひお願いします!

ブクマもして頂けると、続きを楽しみにして下さっているんだと実感できて

更新がんばろう!って気持ちになります!!!


長くなってしまいましたが、今後とも応援よろしくお願い致します。

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