第二十七話「幕が上がる」.4
文官たちを置いてガイドーは護衛兵たちともにエレベーターを降りていく。
彼にとって重要なのは、自分の研究室であるリアクター工場だ。そこさえ死守できれば、研究はいつだって再開できる。
「この際、アルヴァス人たちを完全に管理下に置くぞ。奴らの住居はいくら探して見つからないとは言っても、奴ら自身から聞き出してしまえばいい」
衛星軌道から攻撃してしまうことも考えたが、あまりにも大規模な攻撃を行えば惑星環境にも影響を与えかねない。農業惑星である以上環境汚染は絶対に起こせない。
また、開拓から十年近く経つ現在でも、希少・新種の動植物が発見されるこの星の生態系を、たかが原住民の反発があるからという理由で焼き払うことはできない。
「アンブロス・ジェネレーターのエネルギー供給を厳戒態勢に変更し、供給先をここに集中城。対砲撃バリアを展開し、奴らの突入を防げ」
「民間への避難指示は?」
「そちらは上の奴らにやらせればいい。俺は海賊だぞ。守るのは自分の宝だけだ」
「ではそのように」
彼は帝国の総督、提督であるが、その本質は宇宙海賊、スペースパイレーツだ。
奪い、むさぼることこそがその本質だ。
「敵の総数は?」
「確認されているアルヴァス人はおよそ五十名。都市防壁を警備していたアーマーガンナーが、すでに七機が機能停止、駆け付けた兵士たちも、三十名以上が負傷しております」
「早いな。攻撃手段は?」
「やはり、いつも通り弓矢のようですが、その威力は……」
銃弾ですら弾くアーマーガンナーの装甲が矢に貫かれる。そんな現実に困惑する部下に対し、ガイドーはにやりと笑う。
「やはり、文献にあったアムリット・エンジンを、奴らは持っているのか。アクシャハラ・リアクターエネルギーは検知できていないと言うことは、別のエネルギー機関を持っているのは間違いないな」
「しかし、奴らは壁際で戦うばかりで、こちらにあまり攻め込んでは来ません。狙いは……」
部下が何かを懸念し始めた時、ガイドーはようやくかとため息をつく。
「狙いは間違いなくリアクターだ。あれがクワハウの遺跡から掘り出したものであれば、奴らが神聖視するアーティファクトなんだからな」
「そ、そちらの状況を確認します」
エレベーターを降りた部下が急いで走っていく。追加のドローンを発進させたのだろう。
「問題は、攻めてくるとしたらどう攻めてくるかだな」
この惑星に突入したスペースシップの存在は、未だに所在不明だ。
そして、先日やってきた交渉役のルミスは、買い取ったというモノホイールに乗ってきた。アルヴァス人は機械文明にはさほど頼らず、かつての交渉でも肉食動物に乗ってやってきた。
見た目は未開拓人そのままなのだが、どこか自分たち帝国人をも超える気品を、ガイドーは感じていた。
「しかし、こんな突発的に攻撃を仕掛けてくるとは、奴らに何か心境の変化でもあったのか?」
何か、大きなきっかけがなければ突然の攻撃とはならないはずだ。
これは強烈な締め付けに対する反乱というより、自分たちは黙って従っているばかりではないという意志表示に思える。
「侵入者は、まさかクワハウ人そのものなのか?」
クワハウ遺跡の研究を長年続けてきたガイドーでも見たことがない本物のクワハウ人。
もしかしたら会えるかもしれないという予感に、ガイドーはどこかわくわくしていた。
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