第七話「鋼の決意」.1
――レイハガナ、起動!
突然、ハンターナイト教会の中に投げ入れられたものに対し、ボクは力の解放を判断した。
「フィオガッ!?」
アナトとマザー・コーエン、二人に覆いかぶさりながら、アクシャハラ・リアクターを起動。レイハガナを纏い、腕の中に二人を包み込む。同時に背部のスラスターノズルを展開、放出したエネルギーを広域低速噴射させ、簡易的な防御壁を創り出す。
アクシャハラ・リアクターから発する防御機能ももちろんあるが、それだけで防げるかどうかわからない。
なら、最大までできるかぎりのことをする。直後、爆発とその光が体を包み込んだ。
「ううぅ……すごい、光……」
「フィオガちゃん、一体何、が……」
煙が立ち込め、木でできた椅子や壁の崩れる音がする。背中が少しひりひりするけれど、痛みを感じるほどではない。
まだ、地球人が銀河系の端っこで、石を研いで斧を造っていた時代より更に昔。クワハウ人は、銀河を支配する力を持っていた。
今から実に数万年レベルで昔の話だ。
『ありがとう、コンゴー父さん。力をくれて』
その数万年前に、クワハウ人文明最盛期の時代に造られたのが、この『レイハガナ』
異次元空間からエネルギーを抽出するアクシャハラ・リアクターがあって初めて稼働する、生体融合金属装甲。
「え? フィオガ……?」
「なんだい、こりゃ……アーマーガンナー?」
二人を腕に抱えて立ち上がり、破壊された教会を見渡した。
『二人とも、無事?』
頭部のカメラ部分から、脳波入力した文字が投影される。
ホチャーとの会話でなら必要なかったけれど、外部と交信するには必要だった。
「う、うん! フィオガ、なんだよね?」
『そうだよ。これがボクのアーマーガンナーだ』
「すごい! 片手ブレード一本とは思ってなかったけど、こんなすごい物……どこから出したの?」
彼女は興味津々といった様子で聞いてくるけれど、答えている時間はない。
『今はその説明はあとで。マザー・コーエン』
「構わないから、アテクシの家を吹き飛ばしたクソ野郎を蹴散らしてやんな!」
『わかった!』
左腕で抱えた二人の周囲を、腕部の光学防壁で囲み、空いている右手は形態を変化させる。近接突撃破杭拳、殴りつけた拳が左右に分割され、手首内部から杭を放つ。
相手の装甲を貫き破壊する。通常のレイハガナでは装備できないが、ボクの体が胴体周りにしかない以上、腕や足の中には空きスペースが存在する。
むろん、骨格フレームの分は埋まるが、それでも内蔵できる火器は複数ある。『アクハト』もその一つだ。
「外に出るんだ。この中に居たら、外からなぶり殺しにされかねない!」
『壁を破壊する』
マザー・コーエンの助言に従い、壁を突き破りながら教会の外に飛び出す。
そこにはアーマーガンナーを装備した者たちが複数いた。各々の手には鎧の射撃兵の名の通り、ライフルが握られている。
安定と信頼の実弾仕様――もっとも高出力光学兵器は、ライセンス持ちのハンターナイトか、軍の正式採用品にしか使うことが許されていない。
「おいコソ泥野郎! 俺たちから奪ったもんがあるだろう。そいつをさっさと返しやがれ! それとも穴掘り雀の巣みたいにされたいか!?」
穴掘り雀は、確か地球に住むスズメとよく似た形の鳥だけど、穴を掘って巣を作る特性がある鳥だったか。焼くより煮るのがうまいと、前にコンゴーが言っていたっけ。
「んなでけぇアーマーガンナーを持ってるからって調子に乗ってんなよ。こっちとの兵力差がわからねぇわけねぇだろ!」
「囲まれてる……ごめんなさい、マザー。あたしのせいで……」
「今更よ。けど、こいつらは確かマンゾー一家の構成員ね。ハンターナイト教会からも目を付けられている、害悪マフィアよ」
マザー・コーエンの容赦ない言葉も、興奮する彼らには届いていない。ただ、脅しをかけては来るけれど、撃っては来ない。
『彼らもリアクターコアを傷つけたくはないんだ。だからうかつには撃てない。撃ってきたとしても、一発も通さない』
「あら、頼もしい子。それじゃあエスコートをお願いできる、ナイトさん」
『喜んで』
「おいっ、何とか言ったらどうだゴラァ!」
アーマーガンナー、さらにマフィアの構成員十数名がすごんでくるが、スペースパイレーツに比べれば装備は貧弱だ。奴らは宇宙で海賊行為を、連邦軍や連邦警察と戦いながら行えるほど、高度な軍事力を保有する。
一惑星のマフィアとは、雲泥の差がある。
『「アクハト」、プラズマビームチャージ!』
【プラズマビーム充填、高速重突撃戦闘態勢へ移行】
頭部カメラに当たる部分が、紫の光を放つ。
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