第二十八話「感動の再会」.1
ビルを降りたガイドーは、すぐそば、その地下にあるリアクター施設まで向かう。
その姿を、瓦礫を足場にして飛び越えたモノホイールの上からボクは見た。
「――ッッ!!」
「なんだ、テメェっ!?」
プレートブレードにアンブロス・ジェネレーターのエネルギーを流して刃を構成する。
モノホイールから飛び降りたボクは、ガイドーの頭に刃を振り下ろした。それをガイドーは腕を振り上げ、そこにアクシャハラ・フィールドを形成して受け止めた。
反発するエネルギーが刃を押し止め、皮膚の数センチ上で勢いが止まる。
「ァィ……ォー」
「声が出てねぇぞ。どこぞのハンターナイト!」
フィールドを纏った拳が振り上げられた。左腕のアンブロス・ジェネレーターから光学防壁を展開して受け流す。ガイドーより圧倒的に軽いボクの体は吹き飛ばされ、空中を回転しながら着地する。
「フィオガ!」
同じく着地したアナトが声をかけてくるが、応えている暇はない。ただ腕を振って、リアクター施設を指差す。その先に、アクシャハラ・リアクターがある。
そちらの確保を優先してもらう間に、ボクはガイドーを前に刃を構えた。
「……声が出ないのか。懐かしいな。あれを手に入れた日、確かそんな目をした奴と、あった覚えがある」
その言葉に、ボクは刃を逆手持ちにして左腕のガントレットを操作する。最大距離まで伸ばした空中ディスプレイが、ガイドーの前に表示された。
『覚えていてくれたんだ。ボクのこと』
「覚えて……? 本当にあの時のガキか?」
『そうだ。お前が奪ったアクシャハラ・リアクターの研究船に乗っていた二人の研究者の息子だよ』
その言葉に、ガイドーはしばし考えるように視線を上に向けた。その鋭い爪で顎の裏をかく動作から見て、つぶさに光景を思い出しているのだろう。
「やっぱりかぁ。アクシャハラ・リアクターのエネルギーが観測されたと聞いたが、あの研究船の生き残りなら納得もできる。俺も結構、研究がんばっていたんだがなぁ」
『あの研究船は、連邦政府の特別保護プログラムが適用されていた。どうしてお前みたいな宇宙海賊が近づけた?』
「スパイってのはどこにでもいるもんでな。帝国の中には連邦の、連邦の中には帝国の奴が紛れ込んでいて、お互いに強力な兵器や技術を持つことを牽制してあっている」
『じゃあ、父さんと母さんが死んだのは、そのせいってこと?』
「大雑把に言うとな」
ガイドーは、ガッソーとは違ってどこか粗暴だ。だが、ガッソーよりはるかに力強い圧力を持つ。
「お前の両親には感謝している。あそこまで完成したリアクターコアがなければ、俺は手も足も出なかったからな」
『お前は、研究者なのか? 海賊なのか?』
「海賊さ。研究は単なる趣味だ。だから他人から奪うことのほうが、ずっと得意だ」
もしも、この男がリアクターコアの――クワハウ研究の一人であるのなら、両親の死を受け入れられないでも納得できた。
戦争は技術の奪い合い。その管理者である研究者は、己の命と同じく研究を守らなくてはいけない。そうでなければ、自分たちの作った技術が自国民を、家族を殺す。
二人はそれに失敗したのだと、無理にでも納得できた。
『お前は、奪うことしかしないんだな』
「それが、海賊ってもんだろ?」
『なら奪われる側に回ってみろ』
文字を入力すると同時に、プレートブレードを投げつける。ただ投げただけの刃は簡単に弾かれるが、その間に接近する。
――レイガハナ、起動!
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