第四話 邂逅
最近遊戯王のマスターデュエルというゲームをやっているのですが、
ちょこちょこ発動タイミングがわからない時があります。
「あれ?これ今なんで発動出来なかったんだろう・・・」
そんなことを考えながらマスター・オブOZを使ってます。
バカですね。
「社長」
「うい」
「ちょっと面倒な内容ではありますが、報酬は大きな仕事です」
「ん~?」
絵梨花から手渡された書類に目を通す。蓮治はニヤリと笑った。
「いいね、行こう」
「午前2時からです。先方にお答えしておきます」
「あい、よろしく」
絵梨花はまた席に着き、電話を手に取る。
現在時刻は21時45分。今回の内容は、「暴走族同士の代表タイマンバトル」。暴走族同士が喧嘩自慢を1人ずつ選出しタイマンさせ、勝った方が縄張りを確保できるという内容だ。報酬は勝利で100万、敗北は・・・集団リンチ。
「敗北はまぁ無いが・・・敗けてみて逆に壊滅させんのも面白いな」
いわゆるウラの仕事である。表に出せば基本的に警察が黙っていないような内容だ。ただそこは悲しいことに警察との癒着がある。それにこれを穏便に済ませることによって、暴走族同士の抗争に発展しなければ、逆に平和を保っているとも言える。まぁ言い訳だが。
「・・・社長。先方に伝えました。1時55分までに来てくれれば良いとのことです。場所は・・・」
「・・・OK、ありがとう。ほんじゃ行ってくるよ」
「もう行かれるんですか?」
「久しぶりのまともな喧嘩だ。まぁ相手は一般人だろうから本気は出せないが・・・ああいう雰囲気はいいよね」
「もー、相手の人を殺さないでくださいよ」
「ないない!任せとけ」
手を大きく顔の前で振る。
「気をつけてくださいね」
「あんがと」
そう言いながら蓮治は上着を羽織りながら外へ出る。わくわくしながら、足早に車に乗り込むのであった。
天気が良い。月もキレイで星も明るい。そしてなにより・・・男の血が疼く。平和主義を語りながらも、やはり根は武道家。自分の技を試したくて仕方がないのだ。もう30歳になるというのに、子供心の火が消えない。だからこそ、こういった仕事を根気よく続けられるのだろうか。
「・・・マ○クいいね」
本来運動する際は、事前に食事をすることはない。ただ今日は気分の高まりもあってか、色々してみたい気分だ。今ならアメリカまで泳いでいけるかもしれない。泳げないけど。
「えび○ィレオ単品で一つと・・・ポテトS一つ。あと水を」
先程20時くらいに起きたので、正直お腹は空いていた。基本的に起きてすぐ食べるのだが、まぁそこは適当である。
出来上がった商品を机に運び、口へ持っていく。
「うますぎワロタ・・・」
くれぐれもお間違えの無いよう、彼は今1人である。独り言が多いのだ。
「○ックのポテトまじ無敵・・・え○フィレオも最高・・・」
ハンバーガーを食べ終え、予定時間まで仕事をしようとノートパソコンを取り出す。
すると4,5つ隣の席に黒いフード服の男が座った。プレートにはポテトのLが一つ。
(・・・その、ポテトだけ食べに来たくなる気持ち・・・わかる・・・!)
彼も無心でポテトを手に取り始める。携帯を片手に、時間を潰しているようだ。
(近所の人か・・・? 眠れねぇんだろうな)
そうこうしている内に時間が過ぎていった。時間を潰している最中にうるさいバイクが何台も店の前を通り過ぎていった。恐らくこの後会う暴走族だろう。時刻は1時25分。この場所から30分くらいの場所なので、そろそろ出ないといけない。
「さて・・・」
パソコンを片付け、プレートを持ち上げた瞬間、フードの男もほぼ同タイミングで立ち
上がった。
「!」
「!」
・・・気まずい。ていうかまだいたの。こんな深夜に行動がダブることある?様々な感情が巡るも、そこは冷静になる。
「・・・」
軽く会釈をし、先にプレートを片付けていいですよというジェスチャーをする。相手も察し、軽く会釈をするとプレートの上の物を片付け、店を後にした。
「こんなこともあるんだな・・・」
そうつぶやきながら蓮治もプレートを直し、店を後にする。
「・・・! きたぞ!!」
到着した。暗い夜に車とバイクのライトでナイトパレード状態。夜の山はどこもこうなのだろうか。んなわけないか。
「どうも」
これだけの暴走族を前にしても堂々(どうどう)と車を降り、何一つ慄く姿を見せない。そんな姿を見て、恐らく依頼側であろう暴走族のトップが話しかけてきた。
「あんたがジ・オールか」
「いかにも」
蓮治はマスクにサングラスをかけている。なるべくバレないようにするためだ。素性も依頼側には公開しておらず、強い人を向かわせます、くらいしか伝えていない。
「はっきり言っとくが、何一つ信頼していない。もちろん勝てば報酬は払うが・・・敗けたらわかってんだろうな」
「そう睨むな。弱く見えるぞ」
「あぁ!?」
これは蓮治が悪い。
「一つだけ確認したいが、なぜウチに依頼した?」
「・・・めちゃくちゃ強いやつがいるという噂を聞いた。それを確かめたくてな」
本当にいるが、ただの宣伝文句、半ば冗談のつもりでホームページには掲載していた。ちなみにセリフは「誰もボクちんには勝てないんだぉwww」。完全に舐めている。
「敗けたら大変なんじゃないの、こういうの」
「最悪戦争だよ。てめぇも覚悟しとけよ」
「そっちの方がおもしろくない?」
「他人事だからって調子乗んなよ。結果次第じゃ埋められると思え」
「お前らじゃ無理だよ」
「てめぇ・・・! さっきから舐めてんのか!」
「てめぇらが社会舐めてんだろ」
急に蓮治の雰囲気が変わった。ただならぬ雰囲気に若干押された暴走族のトップだが、すぐに切り返す。
「・・・黙って働け。手ぇ抜くなよ」
「相手次第だな」
すると横にいたヒョロいのが喋り始めた。
「今日さ、喧嘩クソつえぇ鉄さんが急用でよ、来れなくなっちまったんだ。頼むぜ!」
「鉄さん?」
「ウチの用心棒だ。異常な強さなんだがな・・・今日はいない」
「この中には喧嘩強いやつはいねぇのか?」
「・・・いるにはいるが、相手の用心棒が強すぎるんだ。ここにいるやつじゃ太刀打ちできねぇ。鉄も同じくらい強いんだがな・・・」
「・・・なるほど」
相手の強さ、そして気になったのはその鉄さんという男。急用でこういう件を回避出来るほどの立場というのは、こういう世界ではかなり珍しい。腕っぷしだけでのし上がってきたのだろうか。
「まぁ・・・任せとけ」
「・・・正直、こういう場でそんだけ落ち着いてられるやつはなかなかいねぇ。そこそこ場数踏んでそうだな。ちったぁ期待してるぜ」
「専属になるのだけは勘弁な」
「ウチには鉄がいる」
蓮治はマスクの中でニヤリと笑うと、群衆の真ん中を歩き始める。張った布を鋏で切るように群衆が裂け、舞台までの道が出来る。デカいな・・・強そうだぞ・・・といった声や、敗けたらバラすぞー!などの怖い声も聞こえる。
「!」
舞台となる中心に、相手が既にスタンバイしていた。
○ックで出会った男である。
「お、お前・・・」
「? なんだ」
蓮治側からは相手がマッ○にいた男だとはわかるが、相手側からは蓮治がマスクとサングラスをしているからわからない。
(ま、まじかよ。さっきの兄ちゃんじゃねぇか)
すると敵側のトップが蓮治の相手に近づき、2人に話しかけてきた。
「なんだ、知り合いか?」
蓮治の相手はすかさず答える
「いや、知らない。マスクをしているから尚更な」
ごもっとも。まぁ実際は知り合いというほどでもない。
「・・・すまない、人違いだったようだ」
「・・・ルールはわかってるな!」
急に依頼側のトップに語りかける。
「こっちが勝ったら○○地区で高橋がやったことは許してもらう!お前らもやりすぎたしな。だがこっちが敗けたなら・・・高橋は好きにしろ。当分○○地区にも近づかない」
縄張り・・・というか何かひと悶着ありそうだ。
「それでいい」
「よぉし!頼むぜぇ!」
その瞬間、会場という表現もおかしいが、その場に居る者全員が大声を張り上げる。やっちまえー!ぶっ殺せー!
開始で良いのだろうか。すると相手が突然ボクシングポーズを取る。
(! ボクサーか。開花してたら厄介だったな・・・)
すると突然、強烈な速度で踏み込んできた。同時に蓮治の顔面ド真ん中に
右ストレートが飛んでくる。
「!!」
蓮治もまた尋常ではない速度でそれを躱し、後ろに回り込む。
「!?」
相手も驚いた表情である。まさか躱されるとは思っていなかったようだ。
(開花してんじゃねぇか! 雰囲気はあると思ったが・・・レベルも結構高いぞ)
歓声が湧き上がる。
「速ぇ!!」
「おい! あいつ強ぇぞ!!」
すると相手が構えを解いた。
「おい」
「?」
どうやら敵側の総長に話しかけているようだ。
「どうした」
「このレベルが来るとは聞いていない。悪いが俺では勝てない」
大ブーイングである。今にもフードのボクサーに全員で襲いかかりそうだ。
敵側の総長が話しかける。
「どういうことだ?」
「言った通りだ。俺ではこの男に勝てない」
「おい、まだ一発空振っただけだろ」
「アレを躱せる人間など、今まで出会ったことがない。しかも・・・油断した状態でだ。本気の鉄でさえ躱せてはいないぞ」
(油断してたのバレてる・・・)
「なんだ・・・てめぇ逃げんのか」
「報酬ならいらない。今回はすまないが、俺らの敗けだ」
再び大ブーイングである。今にもこのフードのボクサーに総リンチが始まりそうだ。
すると依頼側の総長が話しかける。
「おい! 勝ちでいいのか!?」
「・・・チッ、高橋連れてこい」
すると手首を背中側で縛られた男が連れられて出てくる。口にもタオルが巻いてある。
「好きにしろ」
「・・・車に乗せとけ」
依頼側の総長は部下へそう指示し、蓮治の元へ近づく。
「・・・ほらよ」
アタッシュケースを蓮治に差し出す。その場で中身を確認する蓮治。
「・・・OK。どうも」
「疑って悪かった」
「ん」
「ウチのもんが調べてきたHPがどう見てもうさんくさかったからな」
(それはごめんちゃい)
「ただ正直・・・車から出てきたあんたを見て、明らかに普通ではないなとは思ったよ。鉄に似てるというかな。見た目が似てるんじゃなくて、なんつーか・・・」
「・・・その勘、大事にな。お前、暴走族にしとくには少しだけ惜しいな」
この総長が言っている感覚は、いわゆるウラの人間特有の雰囲気なのだろう。日常生活でそいうった雰囲気に気付ける人間は少ない。冗談で言っているようには見えないし・・・なかなか良い目をしている。
そうこうしていると、敵側はもうクライマックスに突入しそうである。
「そうかよ!!俺らが今までてめぇに払ってきた分、この場でキッチリ返してもらうぞ!」
「・・・てめぇらとも長い付き合いだしな。ここらでいっぺん片つけるか」
フードボクサーはボクシングポーズを取る。
「! この数相手に勝てると思ってんのかよ! てめぇがいくら強ぇからって、ナメんなよ!!」
「勝てずとも、10人くらいはあの世に葬れるだろうな」
「・・・!」
その言葉に少したじろぐ敵側暴走族。
依頼側総長に蓮治が話しかける。
「混ざらないの?」
「何で向こうの面倒事に自分から入っていくんだよ。用は済んだしな。俺らは帰るぜ」
そういうとゾロゾロと車やバイクに乗り込み、1台、また1台と解散していった。依頼側総長と幹部らしき人物は残ってどこかへ電話を掛けている。
「・・・」
敵側暴走族とフードボクサーは今にもぶつかりそうである。
「怯むなぁ!!誰も殺せやしねぇよ!!!」
敵側総長の雄叫びと共に一斉にかかろうとした瞬間、敵側暴走族が一瞬止まった。
「手伝おうか?」
「! ・・・俺の問題だ」
「んも~頑固」
フードボクサーの隣に蓮治がいた。楽しそうにニコニコしている。
「関係ねぇ!まとめてブッコロせぇ!!」
「そうこなくっちゃ!」
蓮治はそう言うと、突撃してくる敵側暴走族の先頭に向かって一瞬で詰め寄り、近くの川まで蹴り飛ばした。バシャーンと水しぶきがあがる。
「これがお前の問題なら!」
「!」
蓮治は向かってくる暴走族を川へ蹴飛ばし、山の木の上へ投げながらフードボクサーに話しかける。
「俺が今やってることはただの!」
「・・・」
「暇つぶしだ!!」
「・・・そうか」
フードボクサーはニヤリと笑うと参戦した。
ちぎっては投げちぎっては投げ・・・気付いたらその場に立っているのは蓮治とフードボクサーと敵側総長のみだった。正確に言うと、一人は腰が抜けて立てない。
「て、ててててめぇら! な、なんなんだよ! 人間じゃねぇ!!」
「ある意味そうかもな。ただ、それを理解してずっと俺を使い続けて来たお前が・・・今更言えるセリフではないな」
「てめぇに今までいくら金出してきたと思ってんだ!!」
「機械と一緒だよ」
「あぁ!?」
「使えるからと言って、修理費やらなにやらお金を掛けて頼り続けても、ある日ふとその機械が持つ性能以上の結果を求めてしまうと・・・機械は耐えられず壊れてしまう」
「ど、どういうことだよ!」
「今がそうってことだ。お前は俺に頼りすぎた。あのまま俺が意地を通して戦っても、それは身の丈以上の仕事だってことだ。普通にこの男に敗けて、逆上したお前らはあいつらとこの男に潰されていただろう。結果は変わらんよ」
「・・・素直に敗けを認めてるかもしんねぇだろ」
「よく言うよ、車に拳銃と散弾銃一丁ずつ積んできておいて。どこで手に入れたんだか・・・今更護身用とか聞かねぇぞ」
「・・・クソがぁぁぁぁぁ!!!」
次の瞬間、敵側総長は服の内側から拳銃を取り出し、発泡・・・しようとしたが、即座に蓮治に蹴り飛ばされ、拳銃は川へ落ちていった。
「・・・っ!」
「無駄だ。お前が今からマシンガンを用意しようが手榴弾を用意しようが、俺達には勝てない」
「・・・ぐ・・・」
「この男が来た時点で・・・お前の敗けだったんだよ。少し強欲すぎたな。・・・全員の目が覚めたらとっととこの山から失せろ。あと・・・二度とこの町には来るな」
「・・・クソッ!・・・わかったよ・・・」
そのまま敵側総長はガックリとうなだれた。
「・・・さて、そんじゃ俺は帰るぜ」
「待ってくれ」
「ん?」
「聞きたいことがある」
「え、なになにスリーサイズ?バスト331ウエスト・・・」
「違う。バスト331ってどうなってんだ」
「ツッコんでくれてありがとう」
「俺たちの力のことだ」
この言葉を聞いた蓮治は、少し真剣な顔をした。
「・・・」
「正直俺はこの力について何も知らない。ある日ふとこうなってしまってからは・・・表舞台から姿を消してしまったからな」
「なるほど」
「こんな力を持っているのは、俺が知っているやつだとあんた以外に1人しかいない」
「鉄ってやつか?」
「聞いてたか」
「聞いたよ。気になっててな」
「そいつの話も含めて少し話がしたい・・・あんた、何か知ってそうだしな」
「いいよ。今からウチ来るか?」
「い、今から? いいのか?」
現在時刻は深夜の2:52。
「モーマンタイ」
梅雨ですね。今日はとんでもない雨に見舞われました。
許そうかと思いましたが、傘が役に立たなかったので許しません。
残業せず帰ればよかった・・・