9.テオドニ
街の中心に闘技場はあり、中に入ると人でごった返していた。
エントリーを行う受付もあるようだけど、人はそこまで並んでいない。そこで、私は受付のお姉さんに話しかける事にした。
「あのー……トーナメントについて教えてもらえますか? 出来れば闘技場の事も少し聞きたいです」
「闘技場では毎日試合が行われています。勝敗を予想する事で配当金も得られたりします。また、3日後には大きなトーナメントも開かれるのでそちらも見所ですよ!」
なるほど、闘技場では賭けも行われてるみたいね。だからこんなに人が多いのか。
さて、次は1番知りたい事を聞きこうかな。
「あのー……鬼場翔について何か知ってますか?」
「きば……? ああ、戦士様の事ですね! 戦士様は現チャンピオンのテオドニに敗れてから行方がわかりません」
「え? 鬼場が負けた?」
嘘でしょ……あの魔王とも戦いを繰り広げたのに、そして行方不明ってどういうこと?
「3日後のトーナメントにはチャンピオンのテオドニ様も参加するので、是非ご覧なってはどうでしょうか」
「……おい、そのトーナメントには参加資格など必要なのか?」
隣で黙っていた海斗は突然話に入ってきた。
「例外もありますが子供や老人以外であれば参加出来ますよ。もし、参加ご希望なら明日中に受付までお願いします」
「……なるほど、わかった」
海斗は確認したい事を聞くと再び黙ってしまった。
てっきりこの流れだと低レベルで参加する事になるから、少し安心した。
テオドニの戦闘力はわからないけど、鬼場を倒した奴だ。きっと今の海斗では太刀打ち出来ない。ここは順当にレベル上げをすれば問題ないはず。
その後、闘技場を離れた私たちは海斗の防具を買いに街を巡る。いつまでも部屋着で旅をしても変だしね。
「ねぇ、これとかどーお?」
「……却下だ」
防具屋ではなく、服屋にて海斗の部屋着に代わるものを選んでいる。
人間界では色々な服が置いてあって楽しい。私は赤いチェック柄の半袖半ズボンを選んであげたが、速攻で却下された。
「んーじゃあ、これとかどうかなー?」
「……お前遊んでいるだろ」
次に選んだのはブカブカのズボンとオッサンの顔が描かれたシャツを選んだ。
割と真剣に選んだんだけど、気に入らなかったみたい。
「……これにする。シンプル・イズ・ザ・ベストだ」
結局、海斗は白い無地のシャツと黒のパンツを選んだ。
その後は、鎧とかも揃えたかったけど「重いから嫌だ」って、文句を言って皮のプロテクターで落ち着いた。
それで、最後に武器なんだけど……。
木の棒とか果物ナイフなど大した物は置いてないみたいで、唯一武器になりそうな刃渡り15cmのナイフを選んだ。話に聞いた通り武器らしい武器は無いわ。
「うんうん、やっぱ見た目を変えると少しマシに見えるわね!」
「ああ、そうだな」
装備を整えてから改めて海斗の全身を周りながら見る。見た目が一新され、冒険者らしくなったので私も鼻が高い。
「……ところで、戦士についてだが、あのテオドニと言うチャンピオンに敗れて行方をくらましたのなら、居場所を知っているのではないか?」
「そうね、テオドニと接触があった事は確かなら何かしら情報はあると思うわ。でも、あの鬼場を倒したのなら、実力は相当高いと思うし、3日後に行われるトーナメントで様子を見た方がいいと思うけど……」
「うむ………そうだな」
私たちは勇者達を止めなければならない。行方不明なら尚更探す事は大変だ。
どんなに小さな情報でも喉から手が出るほど欲しい。
「あっ、そうだ! いつも薬草類ばっかり食べてる海斗に今日はサラダを作ってあげるわ!」
「それはありがたい。だが、作る前には良く手を洗ってくれ。そして、野菜もちゃんと洗うように、あと髪の毛が入らないように髪は結ってほしい、それと手洗いしてもやはり素手だと――――」
「いや、注文多いなっ! それぐらいちゃんとするから!!」
宿屋で受付を済ませると、海斗は部屋で先に休んで私は一人で市場に行く。
見たことないような野菜とか果物とかあるけど、野菜類なら大丈夫よね。とりあえず、適当に買いましょう。
その後、市場や道具屋を巡る。薬草屋にはトゲトゲしたドス黒い木の実や、真っ赤な草らしき物もある。
食べれる物だと思うからとりあえず買っておこう。
そして、買い物を終えた私は意気揚々と宿へと戻る。
宿に着いたらキッチンの一部を少し貸してくれるように頼んだ。最初はしぶってたけど、金を握らせたら快諾したわ。
さーて、セミリアクッキング開始よ!!!
先ずは野菜を洗ったら適当にぶった切って、果物は皮ごと切ればいいか。
あ、果物から種も出てきたわ。これも一緒に混ぜてっと。
見た目は緑の野菜達に色とりどりの果物が顔を出してていい感じね。
でも、これだと味気ないからソース的なのを作るか。
香辛料と野菜から出た汁、果汁と……後は適当にキッチンから拝借して混ぜましょう。
――――なんか、赤っぽいソースが完成したわ。けっこう目にきてスパイシーな感じね。さて、後は海斗に食べさせるだけね。
「はい、お待ちどう!」
「ほう、これがお前が作ったサラダか」
「そうよ。仕上げにソースをかけてっと」
うんうん、我ながらいい感じ。後は海斗の口に合うかどうかなんだけど―――
「―――いただきます」
海斗はサラダを頬張るようにして口に入れた。私は海斗の反応をモジモジしながら待ってると―――
「ぐはっ、げばらぁぁぁあ!! ぶはぁぁぁあ!!!」
まるで吐血するかのように、思い切りサラダを吐き出した。って、おい! せっかく作ったんだからちゃんと食べてよ!
「はぁ、はぁ……お前は俺を殺す気か……なんたこのサラダは……いや、これはサラダとは言えん。どうやればこんな物が出来上がるのだ!!」
「あ、あれ? おかしいな。初めて料理するしサラダなら簡単に作れると思ったけど……」
「はぁはぁ、少し夜風に当たってくる」
「海斗……サラダ……全部べてくるよね?」
「うっ………ああ、わかった」
私の圧力に負けたのか、海斗はサラダの入った容器を持って外に出て行った。せっかく愛情込めて作ったんだからきっと食べてくれるはず。
その後、私も夕食を食べてベットに横になり、今日の事をふと思い返す。
勇者達の足取りが掴めたと思ったが、早速その内の一人は行方不明と分かり、やはり一筋縄は行かない。
窓の外からは喧騒と共に怒鳴り声も聞こえてくる。
コルマンドは闘技場もあるので、血の気が多い街なのだろうと思いつつ、何度か寝返りをうつうちに私は眠りに落ちた。
翌日、朝食を取ろうと思い1階のテーブル席へと向かうと珍しく海斗がいない。
いつもであれば、私より先に席について薬草類を黙々と食べているのに。
不思議に思っているといきなり宿のドアは開き、外から海斗が戻って来た。
「え、もしかして昨日の夜からずっと外にいたの?」
「そんなわけないだろ。用事を済ませるために早く起きたんだ、それよりも伝えたい事がある」
「な、なに?」
海斗ったらいつもより興奮してるみたいね。もしかしてプレゼントとか?
昨日、料理も振舞っちゃったし服も買ってあげたからかな。こんな急に迫ってくるなんて、ちょっとドキドキするじゃない。
「先程、闘技場のトーナメントにエントリーしてきた。俺とお前の二人分だ」
は? どういうこと?
昨日たしか様子見するって言ったよね?
しかも、私もエントリーしたって――――
えええええええ!?!?




