6.村での発見
道中で出会ったおばさんの村へと私達は到着した。
一定間隔で並ぶ藁と木で出来た家、井戸端会議をするおばあさん、談笑しながら接客をする道具屋のおじさん。―――至って普通の村といった感じ。
怒涛のように起きた出来事を整理したいからとりあえず宿で休みたい。それにレベルの事や天界へ行く方法とかの問題もあるし。
「先ずは装備を整えたい」
「え? ああ、そうね。ちょっと疲れちゃったから装備を整えたら休みましょう」
海斗は相変わらず何を考えているかわからない。一応、形だけでも整えるのかしら?
たしかにいつまでも部屋着のままだと微妙だしね。
そんな海斗の希望を叶えるため私達は武器・防具屋を探すけど、いくら探しても見当たらない。仕方がないので道具屋のおじさんに聞くことにした。
「あの、すみません。この村に武器屋とか防具屋とかありますか?」
「武器屋も何も平和な世界でそんな商売なんかしてるところが珍しいよ」
はぁー……どうしよう。
この世界では装備も満足に整える事が出来ないの?
「おい、薬草を10個くれ」
「へ、へい。少々お待ちを」
頭を抱えていると海斗は勝手に薬草を買おうとしてた。まぁ、傷を治す手段としては買って越したことはないけど。
「はい、お待ち。まとめて束にしておいたよ」
「うむ。……おい、金を払ってくれ」
―――は? 金払えですって?
こいつ自分で勝手に買おうとして何言ってんの?
そう言えば、人間界のお金ってどうすればいいのよ?
そんなこと大女神から聞いてないし、どうしよう。
お金が欲しいと思った瞬間に私の頭に何かがよぎる。まるで頭から手のひらに信号が送られる様な感覚。
気付いた時は私はお金を握っていた。
―――間違いない。これも大女神から与えられた力だ。
力のおかげで何も問題を起こさず薬草を買うことが出来た。その後、私は宿に行きたいと伝えて海斗も納得した。
宿の部屋に着いた私は早速ベットにダイブした。本当に色々あった、まさに怒涛の1日って感じ。眠いしお腹も空いた。あー……でも、ご飯が出るなら食べてから寝たい。
身体も拭いて少しゆっくりしてると宿の人がご飯の用意をしてくれたみたい。私は部屋を出て広間にあるテーブル席へと向かう。どうやら海斗は先に席に座っているわね。
人間界のご飯はパンとスープ、肉の炒め物とかだった。
天界で出てきた料理の方が美味しいけど、ワガママは言ってられないわ。
「……………」
「どうしたの海斗。早く食べないと冷めちゃうわよ」
海斗は無言のまま料理を睨みつけていた。まぁ、異世界の料理だし、確かにちょっと食べづらいのもあるわよね。
そして、彼はおもむろに道具屋で買った薬草を取り出すと―――
「……いただきます」
ムシャムシャと薬草を食べ始めた。
いや、どういうこと?
「ね、ねぇ、海斗。なんで薬草なんか食べてるの?」
「俺は菜食主義者だ。なるべくなら野菜を食いたい―――ぐふっ! それにしても何という不味さだ! 薬草はこんなに不味いのか!」
「食事用に薬草食ってんじゃねぇよ!!」
海斗は薬草を吐き出すとパンと水で食事を済ませた。
食事を出してくれた人にも失礼だからいつか口の中に料理を放り込んでやるわ。
※ ※ ※ ※ ※
次の日の朝。
寝ることで少し気持ちは晴れた。色々考えたけど何にせよ情報は足りない。
レベル上げにしろ、勇者達が行った行動にしろ、先ずは自分の足を使って情報を集めれば何かしら方法はきっと見つかるはず。
「そう言えばやる事があった。少し村の中を周りたい」
「うん? まぁいいけど」
宿から出た途端、海斗から提案があった。でもこんな村にこれ以上何か用があるのかしら?
目的はよく分からないけど、無言のまま歩き出しから私も着いていく。
一つの民家の家で立ち止まると海斗は黙って扉を開けた。
中には夫婦とその息子さんが食事を取っていて、急に私達が入ってきたからビックリしている。
「何か用ですか?」と、奥さんに話しかけられても海斗は無視し、キョロキョロと家の中を見始めた。まるで何かを探しているみたい。
そして、お目当ての物が見つかったのか地面に置かれている壺に手をかけると―――
勢いよく地面に叩きつけた―――っておい!!
何やってんの!? 奥さんちょっと引いてるし、旦那さんと息子さんは鬼の形相になってるわよ!!
「ちょっと海斗!!! な、何やってるの?」
「何ってアイテムがないか探している。俺が知っているゲームではこのようにしてアイテムを集めるからな」
「知らない人の家に勝手に入って、持ち物壊して良いわけないでしょ!」
ああ、どうしよう。さっそく問題が起きてしまったわ。
なんとか海斗を止めたけど、ここの人達を何とかなだめないと!
「あ、あのすみません。壺は弁償しますので! ほら、海斗も謝って!!」
「……すまん」
「謝って済む問題じゃないぞ!! いきなり入ってきて物を壊すなんて、何を考えているんだ!! あと、壺を割ったお前、なんだその目は? 全然反省してないよな? とっとと、表へ出ろ!!」
あぁ、息子さんは話を聞けそうな感じじゃないわね。すごく怒ってるみたい……どうしよう。
海斗は息子さんに外に連れて行かれちゃったし、ここで喧嘩なんか始まったらヤバいわ。
「海斗!! 村人に手を出したらダメよ!」
「心配するな、手を出さなくともこんな雑魚に俺は負けん」
「ざ、雑魚だと!! お前、俺のことを馬鹿にしてるのか!!」
あーもう! 余計な事を言うからさらに怒っちゃったじゃない。火に油を注がないでよ。
怒り狂った息子さんは海斗に殴りかかった。でも、海斗は余裕でかわしている。
そして、息子さんのパンチに合わせて足をかけて壁に激突させた。
「ちょっと、大丈夫なの!? 息子さん怪我してないわよね!?」
「あいつが勝手に倒れただけだ」
「いや、お前足かけてただろ!!」
私は慌てて息子さんの元へ駆け付けた。あーよかった息はしてる、どうやら気絶したみたい。
その後、私は海斗の頭を強引に押して一緒に謝罪したわ。お金も少し多く渡して、その場は何とかなったけど……。
「海斗!! もう勝手に人の家に入って物とか壊したり、人を殴ったりしちゃダメよ!!」
「わかった。……だがさっきは俺は殴ってないぞ。ところで伝えたい事がある」
「はぁー……今度は何? また、民家に行きたいとか、薬草を買いたいとか?」
朝から色々あって早速疲れたわ。海斗にはこの世界の常識とかも教えないとダメなのかも。
「違う、そんなことはどうでもいい」
「じゃ何よ?」
「どうやら俺はレベルが上がったようだ。力が溢れてくる」
「えっ?」
―――レベルが上がった。
つまり敵を倒さなくともレベルを上げられる方法があるということ。
―――その知らせを聞いた途端、私の疲れは一気に吹き飛んだ。




