第二席
二話じゃ終われませんでした。
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「その…まあ貴様が困惑するのも無理はないと思う…この世に死因は数あれど、六人席が原因で死ぬ奴なんぞ儂は一人しか知らん。」
いや一人いるのかよ。とりあえずなんとか言語は取り戻せたようだ。人間本当に驚くと頭が?でいっぱいになるのだなと思った。ある意味貴重な経験だろう。だが今はそんなことを気にしている場合ではない。大王は俺の死因が『六人席』と言った。これはいくらなんでもバカにされているとしか思えない。
「別にバカにする気はない。だが実際貴様は六人席のせいで死んだのだ。」
それは違う。俺はトラックか何かに轢かれて死んだはずだ。少なくとも六人席による圧死ではないはずだ。…というか俺「バカにしてる」なんて言ったか?思いはしたものの口に出した覚えはない。そもそもここに来てからというもの、全く声が出なのだ。そんなことを思っていると大王が口を開いた。
「ほとんどの死人は天国か地獄に行ってから教わるのだがな、死人には声帯と呼ばれる機能はついていない。心臓やら胃やら、それらは現世のものだ。あの世に持ち込ませるわけにはいかん。」
なるほど。どうりで声が出ないわけだ。だがそれなら大王はどうやって俺の意思を読み取った?
「あの世において、会話は全て念話で行われる。やり方は現世での会話とさして変わらん。」
念話…つまりテレパシーとやらか。しかし現世での会話と同じならばおかしくはないだろうか?俺は独り言のように思っていただけで、大王に伝える気は無かったはずだ。
「役職上な、死人の心は読めねばならないのだ。善人のふりをしているが中身は極悪人なぞ、日常茶飯事だ。故に貴様の考えていることも手に取るように分かる。」
そういうことだったか。流石は閻魔大王ということだろうか。
「話を戻すが、貴様の死因は『六人席』だ。確かに貴様はトラックに轢かれて死んだ。ただそれだけならば死因はトラックだ。だが貴様も覚えておろう。貴様、その前に弾き飛ばされただろう?」
そういえばそうだ。確かに俺は角を曲がった瞬間、何かに弾き飛ばされ、車道に飛び出した結果トラックに轢かれたのだった。ならば俺を車道に弾き飛ばしたのが六人席とでも言うのだろうか。そもそも六人席は机一つと椅子六つで成り立っているものだろう。それが飛んでくるとは考え難い。
「そんな単純な話ではない。とりあえずこれを見よ。」
そう言うと、どこからともなく二つの大きな画面(?)のようなものが現れた。そこに映し出されたのは自転車に乗っている俺と…どこかのフードコートであろうか。
「左は貴様が轢かれた道の近くの大型商店だ。」
そういえばあそこには最近出来たショッピングモールがあったな。よく学生やら家族連れで賑わっている店だ。多分これはその四階にある大型のフードコートだろう。六人席しかないのでちょっとしたネタにされている。まさかこのフードコートが俺の死因と関係しているのか?
「左様。此処こそが貴様の死の発端となった場所だ。では順を追って見ていくとしよう。」
そう大王が言うと画面が動き出した。右では俺が坂を下っていく様子が流れている。そして左では、大学生の集団と思わしきグループがやってきた所であった。数は七人。このフードコートにおいては『一人分席が足りない』という状況が生まれる残念と言えば残念な人数だ。
「これから貴様の複雑怪奇で意味不明な死が始まるのだ。とくと目に焼き付けよ。」
大王の言葉とともに、グループのうちの一人が、他のテーブルから椅子一つ持って来ようとする。と、その後ろからトレイにどでかいラーメンをのせた、かなり太った男性がやってくる。しかし大学生はそれに気付かず椅子を持ち上げた。と次の瞬間、避けようとして体勢を崩した太っちょは盛大にズッコケた。しかし彼が倒れた先にはなんと荷物が満載のショッピングカートがあった!ちょっとぶつかったくらいじゃ動かないだろうが何分体重百二十キロはあるであろう巨漢が激突したのだ。カートは物凄い勢いで走り出した。速度を緩めることなくカートが向かった先は…………なんとエスカレーターだった!これは流石にまずいだろうと思ったが、カートは軽快なステップを踏みながらエスカレーターを下っていく。誰もエスカレーターを使っていなかったのは幸いだ。だが誰もいないのをいいことにカートはどんどん加速していく。そしてエスカレータを下りきると……マネキン軍団に激突した。衝撃でトランポリンやらペットボトルやら、カートの中身が遠くに飛んでく。その後を追って一体のマネキンが…俗にいうスーパーマンのポーズで飛んでいく。マネキンは割れた窓を通り地面へとまっすぐに落ちていく。と、思いきやさっき飛んで行ったトランポリンに頭から突っ込んだ。そしてマネキンは美しい孤を描き…描けなかった。理由は簡単だ。ちょうど角を曲がった俺にぶつかったのだった。
…つまり俺はトランポリンで跳ね返ったマネキンに弾き飛ばされたってわけか。
「そう、これが貴様の死の真相だ。貴様は六人席があったが故に死んだのだ。」
それは流石に無理があるのではないだろうか。いくら
六人席を七人席にしようとしたときにたまたまデブが通りかかり、そいつがバランスを崩したせいでカートが暴走、エスカレーターを爆走し、マネキンを吹っ飛ばし、カートの中にあったトランポリンも吹っ飛んで窓を突き破り、その後を追って落下したマネキンがトランポリンで跳ね返って俺に激突して車道に跳ね飛ばした
と言ったって、六人席が死因はかなり無理がないだろうか。
「そんなことはない。これはれっきとした貴様の死因である。そういう規則なのだ。」
そうなのだろうか。にわかには信じ難いが。
「あの世とはそういうものなのだ。初めにも言ったとおり、貴様には貴様の死因が存在しない世界、つまり『六人席が存在しない世界』に転生し、赤ん坊からやり直してもらう。」
六人席が存在しない世界なんてあるのだろうか。というかそんなことあるのだろうか。五人席、七人席はあるのに六人席だけないなんて。おかしいと思う人も出てくるだろうに。
「問題はない。その世界に生きる人間の脳にはちと細工をしておってな。六人席という発想を出来なくしている。」
無茶苦茶ではないか。しかもなんで死因が存在しない世界に転生なのか。この理由も知りたい。
「それはだな、かつて貴様のように現世に転生する者がいたのだが、そやつの死因は『酒の飲み過ぎで鼻血が止まらなくなり窒息死』であった。その時は『転生先は死因の存在しない世界』という規則が無くてな。そやつは転生先で全く同じ原因で死んだ。」
つまり二度も酒の飲み過ぎで窒息死したわけだ。それは実に不憫というものだろう。
「それ以降このような規則が定められたのだ。さて、疑問は全て解消できたと見える。では早速転生してもらおうか。」
まだ聞きたいことがある。俺の記憶はどうなるのだろう。
「それは勿論全て消さしてもらう。そして再びここに戻ってきたときに復元する。」
いったいなぜそんな面倒臭いことをするのだろうか。消すだけならまだしも、復元するとはどういうことだろうか。
「なに、簡単なことだ。転生先での生き方によって死後の行き先が決まるなんて知っていたら、転生の意味がないだろう。」
そういうことか。考えられてはいるのだなと思った。
「では、転生の時だ。貴様という個人は失われ、新たな生を歩むのだ!」
俺の意識は再びそこで途切れた。
春の日差しが差し込む部屋。赤ん坊を抱きかかえた女と、それを優しく見つめる男。
「あなた、この子の名前はもう決めた?」
「優れた子に育って欲しい、という願いを込めて『卓』にしようと思うんだ。」
「あら!それはいい名前ね。卓…卓…見て!この子も喜んでるわ!」
それは、ある暖かい春の日のことであった。
サブタイ変更しました。




