第11話
佑奈と真白と塀越しの会話が終わった後、露天風呂に来ていた老人と話し込んでしまい、1時間後のぼせあがった勲が完成。ふらふらになりながらも湯船から這い上がり着替え、何とかまたリネン室でヅラを被りイサオに戻り部屋へと到着する。そこにはさすがに二人が先に戻っており、またどこで手に入れたのか、売店だろうけどアイスを食っている。
「あったまった後、涼しい中で食べるアイスは格別だねぇ」
「こっちの牛乳で作ったアイスですって。あ、町村さんの分ありますよ」
「どうも…」二人はベッド、勲は布団。畳の上に敷かれた布団に倒れ込む。湯あたり一歩手前のため、グッタリグニャグニャしている。
「なんだ、のぼせたのか。情けないなぁ」
「すいません。ちょっと話に付き合っていたら…」
「お人よしだな、相変わらず。しょーがない」ベッドからアイスを持ったまま立ち上がり、勲の布団へと移動してくる真白。そして勲の頭辺りでしゃがみ込み、勲の頭をちょいと持ち上げる。そして自分の膝の上へと置く。
「え、あ、いや…」
「ほら、これで少し涼しい」片手にうちわを持って勲を仰ぐ真白。自分の体なのかと言わんばかり、ちょうどいい心地で風を送ってくる。
「すいません、ありがとうございます…」
「これもいらないね、取っちゃえ」ウィッグを付けたままぶっ倒れていたので、真白がそれを外す。
「何から何まで…」
「ま、このくらいじゃダーリンが私たちにしてくれたことのお返しにはならないんだけどね」
「それは、もういいですよ」
「いえ、まだ恩返ししてないですから」佑奈も相槌を打ってくる。
「もう忘れてください。僕はお二人が思っている以上に色んなものもらってますし」○○とかね。
「そう? まぁでも今はいいよ。明日も明後日もあるんだから。ゆっくりしなよ」
「ホント、ありが…とう…」
言葉全て伝える前にノックアウト。眠りに落ちる勲。一日の疲れに風呂で追い打ちされた格好。ご希望の貸切風呂に三人で入る夢は叶わず? 眠ったことに気づいた真白は起こさないように膝と枕を入れ替える。佑奈が布団を掛けてあげる。こんな美少女二人に世話されて、爆死しろと言われてもおかしくない。けど死なない。
「寝ちゃった」
「そうですね」
「さて、私たちはどうしようか」
「そうですね。星でも見に行きましょうか」
「だね。戻ったら貸切風呂でも入るか」
まだまだ元気な女性陣。寝てしまった勲は仕方がない。二人だけの自由行動時間、都会では見れない星空を見に旅館の外へと繰り出す。勲を起こさぬようソロソロと部屋を後にする。電気を消し扉を閉める前「お休み」と一言。その寝顔は何となく緩んだ感じ、幸せそうに寝息を立てている。今は男の子。




