Der Wille zur Macht−3
人の本性は闘うことで、奪うことで、搾取することだ。
だから、それをむき出しに闘う魔法使いは強い。私は弱い。弱かった…
だが、弱いことの何が悪い?
私に任された役割は、ドラゴンを殺すこと…私の師を、殺害すること。
たくさん並ぶ土人形たちを、何度破壊しただろう。私のルサンチマンは、行っては戻り、尽きては増え…安定しなかった。それでいいのだ、とミス・ドラゴンは何度言っただろう。解き放て、怒りを。食らい尽くせ、相手を。殺せ。…殺せ。
世俗から離れた宮廷での静かな生活は、むしろ私のルサンチマンを、虐げられた日々を思い出させるものだった。私の力はみるみる強くなり…そして、宮廷でサラを見かけることはなくなっていった。何人かの宮廷魔術師たちは、私に…というよりは、ミス・ドラゴンに取り入ろうと話しかけてきたが、その態度は私を苛立たせるだけだった。
そう、苛立つようにすらなったのだ。あの卑屈だった私が。
力を持つこと、食らうこと。誰かの上に立ち、支配すること…今はそれを受け入れよう。母とサラが肯定してきたそれを、力への意思を、私もまた持って、生きよう。
「ミス・ドラゴン、…貴女を殺す準備ができました」
「そう」
「ひとつだけ、聞かせてください。
貴女は死にたかったのですか?だとしたら、何故?」
「貴方にはわからないわ」
「僕はあの女を、サラを愛することで、生きることの喜びを知った…ルサンチマンの理論など糞食らえだ。コジマ長老は列聖などされるべきではなかった!
生きることは、奪うことや闘うことじゃない、愛することだ!」
金髪の王子が悲しげに首を振る。ドラゴン、と呼ばれた女は、彼をあやすように手を伸ばした。
「かわいそうな人間たち。かわいそうな貴方。かわいそうなエマ…
ねえ、プリンス・オブ・ジョーンズ、ミス・サラ・テイラーを大切にしてあげて」
「ええ、ええ、言われなくとも。ミス・ドラゴン」
「エマは…あの娘は大丈夫。きっと強くあれる。
…さあ、参りましょう。きっとエマが、私を連れて行ってくれる」
その日は、よく晴れた日だった。私は宮廷魔術師の衣装を断り、白いマントを羽織る。ミス・ドラゴンはいつもどおり、グリーンの瞳に真っ黒な衣装。
シャドウ、ミラー、ユニゾン。私とサラ、サラとミス・ドラゴン、私とミス・ドラゴン。私たちはあなたの光、私たちはあなたの影。
私たちは…対峙し、手を取り合い、殺し合う。
「ミス・ドラゴン。今まで、ほんとうにありがとうございました」
「構わなくてよ、ミス・エマ・テイラー。あなたは本当に素敵な人間だった。こんな私を尊敬してくれて…愛してくれて、殺してくださるなんて」
何も言葉はいらない。黒い女に向けて、私は白い手を挙げる。
「さようなら、ミス・ドラゴン。
私は、真実なんて知りたくなかった。サラに殴られて、母に詰られて、誰にも愛されず…それで幸せと思っていた。
この弱い私に、強く在れと強いたのはあなた。母と、姉と対立させて、私の家を崩壊させたのもあなた。あなたが憎い。憎い…たとえ、私の家庭が元々壊れていたものであったとしても!」
ふわり、白と黒のマントが広がる。衝撃波の起こる兆候だ。いける…殺せる!
「私の世界を壊したあなたを、私は許さない!」
瞬間、
白い光が青空を包み込んで消えた。




