同じことが起こる
漂泊者よ。
打たれ続けてきた奴隷よ、立ち上がるのだ。
今こそ食らい尽くせ、叩きのめせ、奪い犯し、自らのものとしろ。
漂泊者よ。
強きルサンチマンを秘めた者よ。
弱き者を我がものとせよ。何故ならばそれが、生の本質だからだ。
サラは笑っていた。両手が血に濡れて、長い髪の毛が頬に張り付いている。私がかがったスカートはもうボロボロで、小さくない傷のついた腿が見えていた。泥だらけの足、土まみれの膝。そこには目を見開いて動かないアビーが転がっている。アビー。赤毛のアビー、昨日会ったばかりの新しいお友達。クリスマスに貰った大きな人形のように、蒼い目を見開いて、動かない。
姉が、サラがやったのだ。それだけを直感する。
サマーヴィルの森は地獄以外の何ものでもなかった。腿を温かなものがつたい、おしっこを漏らしている、と気づく。きっと母に怒られるだろう、でもそれどころではなかった。
「サラ…サラ、もうやめよう、アビーが、アビーが」
「ふふふ、エマはわかってないねえ」
サラは動かないアビーを見つめて、なんかつまんない感じだな、と呟いた。普通じゃないほうがいいよね、ただ死んでいるだけなんて、どうかと思うよね。
「エマ、そこのアケビとって。頭の上のやつ、大きいのね」
「サラ…アビーを助けてあげて。お願いよ」
「うんうん、わかったよ。だからそれ取って、ってばあ」
「本当よ、お願いよ!まだたぶん、アビーは助かるわ。大人を呼んできましょう!」
「だーから、わかったってば」
姉は焦れたように、でもとても楽しそうに私の手からアケビを受け取る。まだ熟れていない、青くて固いあけび。まるで私たちやアビーのような…
瞬間、私は気づいた。何も言わずにサラの手から「それ」をもぎ取ろうとする。遅すぎたー遅すぎた!!ああ、「同じことがおこる」
楽しそうに、とても嬉しそうにアビーは見つめられる。あけびが、ぱかり、と割れるのと「同じようにアビーは割れて、中身が飛び出した」。ぬるり、ぐちゃり。失神する直前の私が見たのは、微笑むサラの顔だった。不思議と、どこか優しげな。




