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3/37

ガブッ、もちゃもちゃ、ペッ

 



 そうして降り立ったレギオンの地は。




「殺風景というか何というか…。ここが魔(・)界(・)だからなんだろうが」



 神様が選んだ答えは魔界だった。枯れた草木が生い茂る森の中に俺はスポーンした。つまり俺はハードモードに足突っ込んだってワケ。歩きづらいったらありゃしねえ。

 さーて、とりあえずステータスを見ていくとしますかね。ちょちょいとメニューを開きまして。




 ===============


 NAME:SiN

 LV:1

 JOB:《糸使い》


 HP:50

 MP:30

 STR(筋力):5

 VIT(頑強):5

 DEX(器用):15

 AGI(敏捷):5

 INT(賢さ):15

 LUK(幸運):0


 SKILL:《糸魔法:Lv1》


 ===============




 おお…すげえ。なんか感動すら覚えるわ。VR技術ってのはここまで進化してたんだなぁ…。ところで幸運が0なのはどういうことだ?初期値の割り振りって確かAIが決定してたはずなんだが、AIに運が無いと思われてるのは少しばかり癪だな。まあ後でいじれるみたいだし気にしなくていいか。


 職業が糸使いなんだから当然使うのは糸魔法。見るからにスキルにもレベルがあるみたいだな。レベルが上がってどうなるのか全く想像が付かないが。


 とりあえず使ってみるか。レギオンは基本的に思考操作を採用してるから、スキルを使う時も声に出す必要はないはずだ。詠唱とかも要らないのは助かるな。


 そうして発動した初めてのスキル。その結果は、ちょろっ…と糸くずが出てきただけ。



「ええぇぇえぇ………しょぼすぎる………」



 何度やっても結果は同じで、ただ無駄にMP使わされただけだ。まあ選んじまったもんは仕方ない。たぶん転職できる神殿みたいなところあるだろうし、今日の目標はそこだな。

 流石に何かしら武器が支給されてると思うが…お、あったあった。シンプルな長剣と短剣、それにリーチが長い槍が一本ずつか。チュートリアルならこれくらいで十分だな。


 俺は見晴らしのあまり良くない森の中を彷徨う。地図の通りだとこっちが街の方角のはずなんだが………待て。何か物音がしたな。

 その場で足を止めて、木の陰から物音の正体を探る。こっちに向かってきてる…まさかチュートリアルの敵エネミーか!



「ギャオオォォ!!」


「オオカミかっ!……にしてはデカすぎないか?」



 目の前に飛び出してきたのは真っ黒な毛色をした巨大なオオカミだった。その上に浮かんだ文字列は《マーダーウルフ》、このオオカミの名を表していた。

 いやいや待て待て、目算だけでも全長3m以上あるぞ?俺なんかよりよっぽどデカいじゃねえか!



「流石にこんな糸くずで勝てるワケねえんだよなぁっ!!」



 逃げるが勝ちだ!やってられっかこんなもん!森を破壊しながら迫ってくるマーダーウルフからこちらは動きづらい状況での逃走を余儀なくされる。


 うん、普通にムリ。かくなる上は―――!



「くたばれやコラアァァァァ!!!」



 インベントリから槍を取り出し、反転してマーダーウルフに襲いかかる。奴の移動速度を利用すれば、低ステータスでも倒せるはず…!


 そう考えた俺はとんでもない大馬鹿者だった。



「ガブッ」


「………ガブ?」


「ムシャムシャ……ペッ」



 マーダーウルフは俺の前で急停止。そのまま槍を口にくわえて、少し咀嚼したあと口に合わなかったのか勢いよく吐き出した。


 ……………よだれを垂らしてこちらを見ていらっしゃる。オーケー何をしようとしてるかは分かった。あのー…せめて一思(ひとおも)いにやってください。



「ガブッ。もっちゃもっちゃ……プッ」


「ぐえっ」



 何回か咀嚼されて吐き出された………。俺はそんなに美味しくなかったのか、ちょっとショック。落下ダメージ判定があったが、奇跡的にHPバーがミリで残ってる。こういうスキルなんだろ(適当)。


 その場でマーダーウルフの方を見つめていると、前脚を上げて俺の斜め後ろに向けている。何か伝えようとしてるのか?



「グルル、ガル」


「えっ?あっちに行けって?」


「グル、グルルゥゥ…………。ガブッ」


「ちょ、なんだなんだ!?おわぁっ!?」



 なぜかマーダーウルフに首根っこを咥えられ、そのまま背中に乗せられる。うおぉ…意外にもふもふ…。



「グルルッ!ガルゥ♪」


「なんか機嫌良さそうだな…。よく分からんが、連れていってくれるってことでいいのか?」


「グルゥ♪」



 どこがマーダー(殺人)だよ。むしろ背中に乗ってるとHPが自動回復していくんだが。え、何これ。本当に意味が分からん。

 少し気になって目の前に浮かんでいた名前欄に目を向けると、そこには《ホーリーウルフ》と書かれていた。



「名前変わっとるやんけぇ…。体毛も白っぽくなってるし。まさか、これが糸使いの力…?」



 絶対違うな。いやでも様子が変わったのは俺を食べてからだし………まあ気にしなくていいか。今は助かったことを素直に喜ぼう。


 それにしてもこれ、どこに向かってるんだ?マップ上では街とは逆方向だし、そもそもとっくに森(・)を(・)抜(・)け(・)て(・)い(・)る(・)は(・)ず(・)なんだ。だが目の前に広がっているのはさっきまでと大きく変わらない景色。


 もしや俺、拉致られた?開始1時間も経ってないんですけど?


 ただね、俺はさっきから読みを外してばっかなんだよね。



「キュオオォォォ!!」


「今度はでけえ鳥かよ………!」


「だ、誰か助けてくださーい!」


「人の声……?おーい、どこだー!」



 上空にはホーリーウルフと大差ないほど巨大な鳥。それにどこからか聞こえてくる女性と思わしき声。一体どこから…。



「こ、ここでーす!」


「ここったってどこに………まさか」


「咥えられたまま連れてこられちゃって!そっちから攻撃できませんかー!」


「ごめんムリ!」




 だって俺、レベル1(魔法&槍無し)だからね。




tips:魔法やスキルにもレベルがあります。条件は基本的に使用回数ですが、稀に特殊な条件を持っていたりします。

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