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Syzygy Love  作者: おきついたち


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7/7

おまけ話「三男瀬戸」

オレから言わせたら、瀬戸兄ほどメンドクサイ性格は無いやろと思おとる。

家族以外の人から言わせたら、イマドキのDKとか陽キャラとかに収まるんやろけど。

それは本人の努力の結果や。


例えばオレが誠心学院に入学した時は、瀬戸兄は中2に上がったばっかやったけど。

職員室に入ると。

「おー?あの六弘の弟?兄貴とは随分ちゃうなあ、標準的でエエ子そおや」

なんて先生らぁは瀬戸兄んこと「元気なヤンチャ者」認定。


部活見学に行くと、色んな人が「ちょいカッコエエヤツ的」に言う。

「去年の水無月祭で一番話題なったんちゃう?すごかったもんなー。

バスケと短距離で上級生圧倒しとった。カッコエエワー」

「そおそお、それにめっちゃ面倒見エエやんな。困っとるヤツ放っとかへん。

水無月祭の運営係がミスって駐輪場が開かんかった時、六弘くんが話付けてくれてな。

事前許可貰てへんかったのに、高校の係と協力して裏口から全開放したんやで。

もし鍵閉まったままでその辺に迷惑駐輪しとったら、来年から競技場出禁なるトコやった」

「いくら上級生の兄貴が居るから言うても。

よお運営委員の高校生とか、競技場のエライ人と話出来るよなー。度胸あるワ」


そんで校舎内で瀬戸兄の同級とすれ違うと「お笑い担当」扱いや。

「おー瀬戸チャンの弟や。兄弟みんなココ通うんか~オレらとも仲良うしよ~。

これからカラオケ行くけど一緒する?あ、そお来んの。

そんならさ~せめて瀬戸チャンの永ちゃんメドレー止める方法教えてや。

もおアイツのエアギターとマイクスタンド振付が爆笑過ぎやねんけど~」

「カラオケ来たらエエのに。

瀬戸チャンが居ると、他のガッコの女子も来るしな。カワイイ娘と会えるかもやで」

「いやでも結局、女子は瀬戸チャン狙いやからな~虚し~」

「よお言うワ。

おまえのピンクレディーに付き合うてくれンの瀬戸チャンだけやん。感謝せえよ~」



これってデビュー言うヤツ?中学1年間で何あったん?てカンジ。

暫くは黙っとったけど、どーにも納得行かんで須恵兄に訊いてみたんや。


須恵兄はいつも受験勉強しながら、星ちゃんの面倒見とったけど。

じっとするンが苦手な星ちゃんはぐずぐずしとって。

「もぉいやや~覚えられんっ!漢字書けんでエエもん、全部ひらがなでエエもん」

「漢字も必要やで。ホシ言う字書けへんと、孝星とお揃いにならんやろ。

もーちょいだけ頑張り。孝星来たらゲームするんやろ?」

「うううう~」

半べそ顔で鉛筆ぎゅうぎゅう漢字練習帳に押し当てとる星ちゃんはホンマ可愛え~。

「瀬戸兄は?」

「夜更かししとったから、まだ寝とる」

「そおやでっ!瀬戸兄ずっこいねん!

昨日一緒にゲームしとったのに、オレには寝る時間や言うて。自分だけレベル上げしとお!」

「しゃあないやろ。

星之介はまだ小っこいし。そもそもゲームの途中で居眠りしとったやんか」

「オレも瀬戸兄みたく大き成るのに~」

「どおやろなあ。

昨日もナスと蓮根のおかず残しとったやないか。何んでも食べんと大き成れんで」

須恵兄の正論に抑え込まれると、星ちゃんはうーうー唸って足をジタバタ。

小学校で星ちゃんは落ち着き無いて注意されとるらしいけど、それもしゃあナイ気がする。

歳の離れた兄弟に囲まれて甘やかされとる分。

自分をコントロールする習慣が無いまんま育ってもた。

せやから同い歳の孝星と友達なれて良かったて、つくづく思う。

同じ目線で喋ったり考えたりするよおなって、少おし社会性が身に付いて来たからなあ。


ん?あれ?もしかして?


「なあ須恵兄」

「何ン?」

「誠心入ってビックリしたんやけど、瀬戸兄てめっちゃキャラ作ってへん?」

「あ~アレなあ。フツーに成ろて改革中らしーから放っとったり」

「普通?瀬戸兄は充分フツーやん」

そう応えたオレに対して、須恵兄の意味深な視線が鋭ぉて痛い…。

まるで解っとるクセにとぼけンなて言うとるみたいや。

「瀬戸が一度だけマジな顔でオレに言うて来たワ。

兄弟が「好き」言うんと、誰かと付き合う時の「好き」が同じやったらアカンのかて」

「うわあ…」

えーソレてつまり。

学校の同い歳との喋りで、今までの自分の「好き」はアカンヤツかもて気付いて?

世間一般的でフツーの好きとか付き合いとかを学習しよーとして?

いやでもそんなん今更言うか、変えよ思うて変えられるモンなん?

無言のオレを見て、須恵兄はニヤリと笑う。

「オレが何んて応えたか、聞きたいん?」

聞きたい!よーな、聞きたないよーな…えっと。


でもちょうどその時、孝星と釉兄が帰って来た。

「ただいまあ」「おじゃましまーす」「おかえりー」「こーせー!宿題助けてぇ」

「じいちゃんは?孝星ひとりなん?」

孝星がウチ遊び来る時は大抵じいちゃんと一緒やのに、珍しい。

今日は気温高めだからか、帰って来た2人は汗ばんだ髪で額に汗を浮かべている。

「うん。途中まではおじいさん一緒やってんけど、暑さでしんどそおで。

ウチのじいちゃんとお茶しに行って貰うたんや。

孝星は強いな。暑い中でもおんぶとか言わんと、全部自分の足で歩いたで」

そう釉兄に褒められて孝星は照れ笑い。随分背ぇ伸びたけどやっぱカワエエ小学生や。

「喉乾いたやろ。麦茶飲むか」

「カルピス!カルピス!釉兄も居るし、アイス入れたヤツ作ってー!」

宿題放り出して星ちゃんはリビングを跳ね回る。

「ほんなら瀬戸起こしてき」

「そおや!瀬戸兄がカルピス作るン一番上手いんや」

ぴょんぴょん踊りながら星ちゃんが2階へ行こうとすると。

いつの間にかドアのとこに瀬戸兄が欠伸しながら立っていた。

「やかましいのぉ。目ぇ覚めてもたで」

「瀬戸兄カルピス作ってーオレと孝星のんはアイスいっぱい乗せてやぁ」


学校で見掛ける瀬戸兄はワックスで毛先整えて。

誰から貰うたんか知らんけどNIKEとかNorthのインナーをチラ見させて。

ポッケに手ぇ突っ込んだりして、本人はキメとるみたいやけど。

目の前の瀬戸兄は寝起きのボサボサ髪にヨレTシャツで、顔洗おたタオルぶら下げとる。

しかもそのヨレTシャツは「六弘」とマジック書きされとるヤツ。

それは名前の練習せえて、瀬戸兄が星ちゃんに書かせた字やから。弘が3と△みたいや。

でもそれがオレの知っとる瀬戸兄やから。

何んかちょっとほっとして、オレも言うてみた。

「オレはアイスティー。どおせ釉兄の好きな紅茶とカルピス混ぜたヤツ作るんやろ?」

「あ、ほんならついでにオレもアイスティー」

やった♪須恵兄も乗ってくれたで。

「え~面倒いのぉ、カフェの店員ちゃうんやで」

瀬戸兄は渋い顔やけど。

ゆっくり須恵兄とオレと星ちゃんと孝星と、額に汗浮かべたままの釉兄を見て。

首から下げとったタオルをぽいと釉兄に投げると、台所へ向かって回れ右。

その大きな背中に星ちゃんが飛びついた。

「なあなあ瀬戸兄っ、オレのカルピスなまたいっぱい入れてな」

「アイスか?」

「それはモチロンやけど。アレやアイや」

「はあ?」

「はあちゃうでー!前に言うてくれたやんかぁ。

オレが大き成るよおに、いっぱい瀬戸兄のアイ入れたるて」

「言うてへんワそんなん」

「ゆ・う・たっ!」

ヒッツキ虫の星ちゃんのせいで隠れとるけど、確実に瀬戸兄の背中が照れとるモンやから。

イジワルそーな顔で須恵兄が追い打ちを掛ける。

「あっはっは!ええなーソレ、安売ティーパックでもF&Mかウェッジウッドの味なるワ。

店員さーん、オレのんもたっぷりアイ入れてやあ」

「よぉ言うたなぁ~ほんならソース味でも塩味でも飲みや~」

照れ隠しを通り越した半ギレ顔で瀬戸兄は振り向くけど、一瞬で石や。

珍しく釉兄が声出して笑うとるから。

「ははは、今のんはオレでも判ったで。アイスと愛すを掛けたんやろ。

せやから瀬戸が作ってくれるカルピス紅茶はいっつも美味しいんやなあ、ありがとおなあ」

「うっさいワっ」

どすどす足音鳴らして瀬戸兄は廊下奥の台所へ行ってもたけど。



瀬戸兄のフツー改革が進んだら、カルピスも紅茶もどんな味になってまうんやろ?

そう思うたら…オレはぜーんぜん応援せんけどなっ。


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