史と里奈(6)
マスターと涼子の指導を受けて、ようやくOKをもらった料理は、カフェ・ルミエールの名物料理でもある「ステーキサンドイッチ」だった。
「うん、それほどコストはかからない」
「しかし栄養、ボリュームも満点」
「味付けも上手になってきた」
「アルバイトで来てもらってもいいな」
マスターは上機嫌である。
涼子は、マスターが「論評」をしている間に、電話をしている。
そして、すぐに一言
「史君、食べに来るって!」
涼子はにっこり笑っている。
「え・・・」
「あ・・・」
そうなると、里奈は真っ赤である。
頭をかいているマスターはともかく、涼子はグイと里奈に迫った。
「里奈ちゃん、赤くなっている場合じゃないの」
「史君に、しっかり食べさせて」
「それから、もうね、面倒だからさ」
「え?」
キョトンとする里奈に、涼子が決定的な一言。
「さっさと、史君をモノにしちゃいなさい」
「私もそうやって、女にグズのマスターをモノにしたの」
「うん、そうします」
里奈も決めてしまった。
少しして、マスターの家のチャイムが鳴った。
「史です」
史の声がインタフォンから聞こえてきた。
「はい!」
里奈は、明るい声で飛び出していく。




