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12.新たな学園生活の始まりです。(その3)

学園の始業式をはじめとした全校集会はクラス分け後の各教室で行われる。というのも、ボルシェーヴォ魔法学園は全校生徒が非常に多いマンモス校。小・中・高の全ての生徒を収容出来るようなホールや空間が存在しないのだ。なので、今回の始業式の場合は、放送専用のホールからの中継を各教室に置かれている水晶球に送る(水晶球から3D映像のような形で映し出された)という形を採っている。


それだけなら別に驚かない。前世で私やお兄ちゃんやお姉ちゃんが通ってた学校もいわゆるマンモス校で、全校集会の時には同じような方法を採ってたからだ(各教室のテレビに中継されてた)。


ただ、別の所で私は驚いていた。


「………………であるからして、君達の将来は君達自身が決めるものでありますニャ。小学部を卒業してすぐに冒険者になろうとする生徒も、家業を継ぐ生徒も、あるいは進学や別の学び舎への留学を考えている生徒も悔いの無いよう過ごすのニャ。以上をもって、学園長の話を終了とするニャ。」


教卓の上に置かれた水晶玉から映し出された学園長の映像が私達に一礼した。


(………………ねこ?)


私は、クラスの皆が笑ったりしないのが不思議で仕方が無かった。同じクラスになったアトリちゃんも普通にしている。現代の日本で学園長、もとい校長先生を思い浮かべるとしたら、普通は年配の方を想像するだろう。動物を想像する人はいないだろう。


私が前世で通っていた学校の校長先生は、白髪頭のおじいさんだった。私が入院する少し前に代変わりして、白黒頭のおばあさんになったのも覚えている。


でもここでは違った。この学園の学園長先生は、茶色い毛並みの猫だった。ただの猫じゃない。二足歩行だし、上下にスーツ着てるし、伯爵さんがつけるような片眼鏡かけてるし、ちょっとお腹回りがぽっちゃりしてるし、声は渋いし(海外の映画のダンディな俳優さんの吹き替えとかに出てきそう)、「長靴をはいたねこ」のネコさんがそのままおじさまになった様な感じ。


(きっと、これが当たり前なんだ……。どこかでバッタリ会っても「猫が歩いてる!」って言わないようにしなきゃ。)


私は「ここは異世界なんだ」と改めてしみじみ思った。後で調べたら学園長先生は「シャルワン」という種族で、早い話が見た目がほとんどそのままで二足歩行する動物のような種族。犬や牛、クマのような見た目の人(人?)もいるらしい。


「それじゃあ今日はここまでです。明日からの授業、遅刻しないように。」


担任の先生(普通の人間でした。)に挨拶して、学園生活1日目が終わろうとしていた。




「ねぇ、アトリちゃんはどこに住んでるの?」

「どこって、平民街だけど…?」

「平民街?平民街って?」

「ふぇ?平民街は平民街だよ?街の南門のそばの……」


平民街とは、イセクヴェレの街の南門付近に作られた平均所得がそんなに高くない普通の市民、主に農家や街の工場で働く人達が住んでいる所だ。南門のそばなのはイセクヴェレが管理している街の外の農地に近く、それを耕す農家の方が主に大多数を占めている為である。イセクヴェレの南門を抜けて、農地を抜けると野草や薬草が豊かな森もある為、薬売りや医者も割りとここに住居を構えている。


………という情報がさっき頭の中に入り込んできた。


「あ、うん、そうだったね。そう、南門の街だったよね?」

「……リオンちゃん、そんなの街の人なら皆知ってるよ?」

「あー、うん、ちょっとド忘れしちゃっただけだから…」

「……リオンちゃん、なんだか変だよ……?やっぱり、『恵みの大樹』から落ちた後遺症とかあるんじゃ……」

「いや、平気、平気だから!体は何とも無いから!」

「……ホント?」

「ホント!ホントだから!それより、私帰りにアトリちゃんのおうちに寄ってみたいな。」

「私の……お家に……!?」


アトリちゃんが目を丸くする。


「うん。アトリちゃんが私の家に行くのは周りがうるさく言うかも知れないけど、私が行く分には問題ないでしょ?」


するとアトリちゃんはモジモジし始めた。


「そうだけど……やっぱりダメだよ。私達身分が……」

「だから名誉市民と普通の市民なんて変わらないよ。ううん、身分なんてただの飾りだよ。ちょっと豪華になったくらいじゃない?」


「………それ、私と友達になる時にも……言ったね……」

「え?」

「………覚えてる?リオンちゃんは私と友達になりたいって私に言った時、私は身分も種族も違うから無理って言ったの。そしたら、さっきと同じ様なこと、言った…。」


『身分なんてただの飾りじゃない?種族なんて見た目とかがちょっと違うだけじゃない?そんなので何もかもダメになるなら、私がそんなことする奴ら、全員ボコボコにするから!』

『……だから、だから、暴力はダメぇぇ……ふぇぇぇ……』


私の頭の中に、リオンさんの過去の言葉が甦った。


うん、ボコボコにするのはやり過ぎだと思うんだけど……。


「おい、暴風の化身と悪魔憑きが何仲良くしてんだよ?」

「?」


突然、男の子の声が聞こえてきた。その方向に顔を向けると、3人の男の子達がいた。


左側にいるのは私達と同い年なのに立派な口ヒゲと顎ヒゲを生やした背の小さいずんぐりとした体型のドワーフの男の子。右側にいるのは長い金髪を後ろで束ねて、メガネをかけた長身で色白の男の子。耳は少しも丸みを帯びず、尖っているから純粋なエルフだろう。そしてもう1人、中央で腕組みをしている茶髪の男の子。耳は丸いし背は普通だし、どうやら普通の人間の男の子の様だ。


あれ?この子達、どこかで見覚えが………?















二足歩行するネコ、学園長の種族である「シャルワン」ですが、これは『人間』のアラビア語である「バシャル」と、『動物』のアラビア語である「ハヤワーン」を合わせた造語です(あとペルシャ猫の「ペルシャ」と犬の鳴き声「ワン」も込められてたりしてます)。いつもの如く豆知識をひとつ。

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