魔女の弟子
『魔女』
それは魔法を使う誇り高き生き物。
その昔、魔女たちは制約を交わしました。
自身より弱いものには手を出してはいけない。
破りしものは、業火のごとくすさまじい苦痛の中で灰になりましょう。
「なんで、こんな制約をしちゃったんだろう。僕は馬鹿としか思えないね」
読んでいた本を閉じ、目の前の師匠に言う。
そうすると師匠は笑った。
「フォル。私たち魔女はね、魔法を持たない人間が愛しくてたまらないのよ」
「どうして?」
「何も持たずして、時には理不尽に淘汰され、それでも必死に自らの力で協力し生きていく。その美しさをいとしく思うのはきっと、魔女に生まれた運命だろうね。だからね、私もお前がいとしくてたまらないのさ。」
魔女は優しかった。
人間を愛しく思っていた。
転生者が現れるまでは。
「魔女をこの世から排除する!」
勇者として転生された人間が高らかに宣言する。
僕は今でもこの光景を覚えている。
「魔女は魔王の手下であるがゆえに、魔法を使え、我々人間を貶める!」
貶めたことなんて一度もないのに
「フォル!逃げるよ!」
「師匠!」
逃げるために戦おうとした魔女は灰になった。
説得しようとした魔女は殺された。
見せしめに首が広場の真ん中に並べられているのを見た。
戦わずして逃げるしか、生き残るには魔女には方法がなかった。
逃げて逃げた先で。
「フォル、もういいよ、魔力がもう尽きちゃって。治癒できない」
「まだ、あきらめないでよ、師匠!」
「泣かないの」
逃げた先で待つのは死だけ。
「くそっ!」
真っ赤な血だまりに横たわり師匠を、奴らは笑ってみていた。
これで平和になると。馬鹿みたいに。
「なんで!」
敵だらけの中でも師匠を担いで逃げた先で、得られたのは冷たくなった師匠の体だけ。
あぁ、なんて残酷なんだろう。
「師匠、ごめんなさい」
今でも感覚が残っている。
近くにあったノコギリで、師匠の右腕を切ったこと。
ぎりぎりとなるさびた刃で、飛び散る血を浴びながら切ったこと。
彼女の一部を切り取ったこと。
自分の腕を切り取ったこと。
僕は魔女の弟子だ。
弟子なのに魔法は使えない。
魔法が使えるためにはこの方法しかない。
僕は。僕は。
師匠が愛しいと言ってくれた人間のままではいられないけど。
僕は、魔法で奴を殺す。
魔王の手下だと嘘をついて、みんなを、師匠を殺したあいつを。
魔法で殺してやる。
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自分の右腕が魔女の腕だと言う少年に近づく。
「ふぅん、魔女の、ねぇ」
ぐいっと右腕を持ち上げ、袖を捲る。
そこにはおそらく自身で縫ったであろう痕が、痛々しく残っていた。
一度放った魔法の勢いで所々ほつれつつあるそこからは、一滴も血は流れていない。
その接続部にだけは魔力の流れを感じる。
常に治癒をし続けているのか。
「自分の腕は?」
「捨てた」
さも当然かと言うような姿は異様としか言いようがない。
私がこの村に来た時に初めて会った少年、フォル。
彼から微かな魔力を感じたため警戒をしていたが、まさか右腕が本当に魔女のものとは。
少年自体から魔力の流れを感じないため、少年本人は魔法が使えないはず。
魔女の腕を自分に移植しただけで魔法は使えるものなのか……。
彼に関しては疑問に思うところが多すぎる。
そんな中、一つ言えるとしたら。
もう彼はこの村にはいれないってことだろう。
私がそうしたから。
私が彼をずっと探していたから。
あの日、日常から異端として認識されて排除され続けた魔女。
その弟子がこの村にいると聞いて、わざわざ依頼を受け持ったのだ。
私をこの世界から解放してくれる人物。
_______魔女の弟子。
魔女になり損なった、中途半端な存在。
目の前にウィンドウが浮かび上がる。
『魔女の弟子を仲間にしますか?』
▶︎はい
いいえ
「(はい)」
心の中で選択をすればウィンドウが消える。
そして再度別のウィンドウが現れた。
『“ラストクエスト:魔女の弟子の復讐”を受注しますか?』
▶︎はい
いいえ
「(はい)」
ティロンと選択された音が聞こえウィンドウが消えた。
これでラストのクエスト。
これを終わらせれば私は帰れる。
やっと。
やっとだ。
やっと帰れる兆しが見えた。
現在カクヨムに移行中です。
作品ももう少し加筆する予定です。




