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生前やっていたゲームの悪役令嬢に転生した私はヒロインに求婚されましたが、ヒロインは実は男で、私を溺愛する変態の勇者っぽい人でした。私、前世でナニかやらかしました?  作者: DAKUNちょめ
エピソード【その後の二人…永遠のバカップル多し】

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聖女の祈り─月の輝く夜の帳に─は乙女ゲーム。11

リジィンは赤茶の髪に赤茶の目をした、22、23辺りの青年だ。


見た目が悪い訳ではない。だがディアーナは、彼の容姿を受け入れ難いようで、リジィンの視線から外れようとレオンハルトの陰に隠れようとする。


「どうしたんだい?照れているのかな?兄の俺に、顔をよく見せて欲しいな」


レオンハルトの陰に隠れるディアーナの腕を掴もうとするリジィンの腕をレオンハルトが掴む。


「妹が嫌がっているのを、察してやれよ。兄貴なら。」


レオンハルトはリジィンを睨み付け、掴んだ腕を解放した。


「……俺の妹にくっついてるお前こそ、誰なんだよ…妹を解放してやってくれないか?」


リジィンの言葉に、レオンハルトの背後にブチッ!と大きな字が出た気がしたディアーナは、焦ってレオンハルトの腕を掴むと、引き摺るように屋敷から離れて行く。


「おほほほ!リジィンお兄様、ごきげんよう~!」





「あんな所でキレかけないでよ!もお!」


レオンハルトを引き摺って、一番近い宿に入ったディアーナは案内された部屋でレオンハルトに詰め寄る。


「…サイモンといい、リジィンといい、ムカつくお兄様が出過ぎなんだよ…。」


苛立ちを隠さないレオンハルトは、ベッドに腰掛け脚を組み、ディアーナと視線を合わさない。


「私にとって…!大好きなお兄ちゃんは、香月の廉お兄ちゃんだけなんだからね!そんな所でまで嫉妬しないでよー!」


レオンハルトの背中を背もたれがわりにして、レオンハルトの後ろにディアーナが寄り掛かる。


「今日1日、疲れた…よね…」


ディアーナが呟く。


「リジィン…私の兄じゃないしね…母が用意したんだわ、アイツ…。父が亡くなった時に備えて。嫡男が居なくて父が亡くなったら、爵位は実弟のヒールナー伯爵のだよね?」


「未亡人は実家に戻されるよな…だから、か。嫡男がいれば母として屋敷に居られるよな?」


二人、背中合わせのまま無言になる。

そんな準備をしているのは、ディングレイ侯爵を亡き者にしようとしてるのでは?と。


「…仮に、そうだったとしても…もう私には関係無いかな…ディングレイ家での家族の関係は薄かったし、今は新しい家族が居るしね。……どちらも親には苦労するのだけど……。」


ミァの悪びれない、てへっ!という顔が浮かぶ。

こんなナリしていても一応、父親だからなぁと。


「……それは、ディアーナの母親が、ディアーナの父親を殺してしまっても構わないという事か?」


背中越しの突然のレオンハルトの問い掛けに、レオンハルトの隣に移動してベッドの縁に腰掛ける。


「…………構わない…とは言えない…けど……どこか他人事のように感じている私がいるの……実父と実母のハズなんだけど…」


止められるならば、止めたいと思う。

でも、それは家族だからと言うよりは、ごく一般的な倫理観に基づくもので、見知らぬ他人でも助けられるならば助けたい、位のもの。

激しく感情が揺さぶられる事は、残念ながら無い。


「では……サイモンがスティーヴン暗殺計画の関係者だったとして……俺がサイモンを殺しても構わないか?」





ミァちゃん、ジャンセン師匠………。

いいえ、この世の創造主である、お父様……。


私は初めて貴方を恨みます。


レオンハルトの言葉に、私がどんな顔をしたのか。


目の前に居るレオンの顔を見て知った。

この世の誰より愛する人に、こんな顔をさせてしまった。


レオンハルトの問いに、私の中の『前世で約束をした設定』のディアーナが驚きと、悲しみと、すがるような表情をした。


その感情を持ったのは、私ではない。

でも、その感情を表情にして、レオンハルトに見せているのは私だ。


レオンハルトは、深い悲しみと、何処に向けて良いか分からない怒りと、憎しみを孕んだ表情をした。


「レオっ…!違う…!私ッ…!」


レオンハルトの腕が乱暴にディアーナの肩を掴み、その身体をベッドに沈める勢いで押さえ付けるように倒す。


そのまま重ねられた口付けは、噛み付くように激しく痛々しい。

獣のように荒ぶる心身を無理矢理抑え込んだレオンハルトはディアーナと重ねた唇を離し、その離した唇から短く苦しげな呼吸を繰り返す。


「……分かってる……分かってるんだ……サイモンの名を出されて、あんな表情をするのは、俺のディアーナではないのだと…頭では分かってる…だが、ディアーナにそんな顔をさせるサイモンに…サイモンの前世だとかいう、仮想の俺に……憎しみが止まらない…!すまない…」


ディアーナの上に身体を重ね、肩口に顔を埋めるようにしたレオンハルトは、自身の感情をディアーナにぶつけた後悔から、喉の奥から絞り出すような掠れた声で詫びる。


ディアーナはレオンハルトの背と頭に手を置いて、あやすように何度も優しく撫でていく。


「私も…自分の中に設定されたディアーナが憎いわよ…私のレオンに、そんな悲しみを与えたのだもの…。」



ラジェアベリアを離れたら何とかなるなんて甘かった。

私の中に居る設定されたディアーナを殺さない限り、いつどこで今回のようにサイモンに反応してレオンを悲しませるか分からない。


「……そんなディアーナなんざ、この私がプチってやらぁ……」


思わず口に出てしまったドスの効いた低い呟きに、抱き締めたレオンハルトの身体がビクッと反応した。










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