スティーヴンとウィリア6
ちなみに
戦闘時において、ウィリアは役立たずでは無かった。
元々が巫女という立場ゆえか、魔力もそこそこある。
攻撃魔法は使えないが補助的な魔法が使え、主に私をサポートしてくれる。
レオンハルト殿とディアーナ嬢に関してはサポート必要無し。
いや、レオンハルト殿は身体の劣化さえ無ければ強い人だってのは分かる。
ディアーナ嬢、いつの間にそんな強くなったの?
ジャンセンから渡されたらしい短剣と、蹴りでザコ魔獣位ならサクサク倒していく。
満面の笑顔で。……ちょっと、おっかない……。
だからですね、ウィリアを背後から抱き締めて慰める機会なんて無いんです。
そんな顔で睨まないで下さいよ、ディアーナ嬢…
戦闘が終わったばかりの貴女、興奮していて怖いんですから。
「………ヘタレが……」
なんだ、その呟き!ディアーナ嬢!
自分がヘタレ卒業出来たの、誰のおかげだと思ってんだ!
「よく頑張ったな!さすがディアーナ!愛してるよ!」
ディアーナ嬢にハグしようとして足払いをかけられているレオンハルト殿。
そんな無意味なお手本も必要ありません。
第一、私がウィリア嬢にいきなりハグして「愛してる!」とか、おかしいでしょう?変態呼ばわりされますよ。
……ああ、そういえば貴方、変態でしたね……。
目まぐるしく過ぎる日々。疲れる…だが、楽しくもある。
夜営の準備をする時だけ、私はウィリアと二人きりになる。
彼女の事を見ていてしまう。ウィリア嬢は美しい人だ。
初めて逢った時のように、レオンハルト殿いわく「豊満我が儘ボディ」を全面に押し出して、女らしさをアピールする事はなくなった。
短い旅の間に色んな事を学び、吸収して、精神的に脆くなっていた部分も見られなくなった。
よく笑い、喜び、驚き……そして、振り回されているよね、私同様…あの二人に。
「殿下が、お城でおっしゃっていた、レオンハルト様と付き合っていたら身が持たない…すごく分かりますわ…。あの方のお相手は、ディアーナ様以外無理です。」
「だろう?だが、ディアーナ嬢の相手も彼以外には無理だと思うよ……実は、あのディアーナ嬢は私の婚約者だったんだ。」
ウィリアが驚きの表情を見せる。
私は彼女の、この表情がとても好きだ。
水色の長い髪に、同じく水色の瞳、その目が大きく開かれる。
「フラれたんだけどね、私はレオンハルト殿に。」
「はぁあ?」
いかん、話す順序を間違えた。
それから私は、順を追ってウィリアに今に至る旅について話した。
「それで…殿下はおかんと呼ばれているのですわね」
食い付く所、そこ?
私、あの二人がどんなに永い時を経て結ばれたのか、千年を越える時を経て想いが繋がったのか、ドラマチックに語ったつもりだったんだけど。
「世話焼きなのですわね、スティーヴンは…だからわたくしの事を、ほっておけなかったのですわね…」
あ…ウィリアが私を呼び捨てにしている…。
「だから、あのジャンセンとか言う…神様も、スティーヴンに世話を頼んじゃうのですわ。」
気付いてる?ウィリア、君、私を呼び捨てにしている…。
私は…嬉しくて…顔が熱くなっている…。
「ねぇ、殿下…わたくし、おかんツーと呼ばれてますのよ?これ、殿下のせいですわよね?」
殿下に戻った…。たまたまだったのか…?
「ムカついたから、これからは殿下の事をスティーヴンって呼び捨てにしますわ!」
腰に手を当て、ふんぞり返るように大きな胸を張る。
誰に教えられたか、言うまでもない言葉に態度。
不敬?そんなもの、今さら何だ。
ウィリアと私の距離が縮まったのに、それを責める理由など何も無い。
「ああ、ウィリア!それで構わない!」
私はウィリアの手を握った。まぁ、握手だな。
背後から姿は見えないが声がする。
「そこは抱き締めてだろうが……ヘタレが。」
ディアーナ嬢……おそらくレオンハルト殿も……。
この変態夫婦め、覗くのヤメロ。




