スティーヴンとウィリア5
令嬢であるディアーナ嬢の言葉に驚き、凍り付くウィリア嬢は涙も止まり、信じられないものを見るようにディアーナ嬢を凝視している。
「あんまりウダウダ言っていると、レオンが町をプチりたがるからやめなさい!」
その、レオンハルト殿に目をやると、まだ空気椅子を続けていた。
「あの…ちなみにディアーナ嬢、なぜレオンハルト殿はあのような…罰を?」
ディアーナ嬢が膝から降りた後も空気椅子を続けているレオンハルト殿を目線で指す。
「え?殿下が居なくなって二人きりだって気付いた途端、愛してる!とか言って襲い掛かって来たので」
ディアーナ嬢の答えに、ああ、と小さく頷く。
そして私は冷ややかな目でレオンハルト殿を見る。
ある意味、期待を裏切らない人だと尊敬もするが…。
こんな、少女の尻に敷かれる男が気分次第で町を破壊するだけの力を持っているのだから…世も末だ。
まあ、あの面倒臭い親の御子だからな…。面倒臭い人だ。
「あの…ディアーナ嬢さえ良ければ、しばらくウィリアさんを旅に同行させたいのだが…」
決定権はディアーナ嬢にあるだろうから、レオンハルト殿は無視する事にした。
「わ、わたくしがレオンハルト様達の旅に同行ですか?!そんな…お役に立てませんし、足を引っ張るだけですわ…」
「役に立てなくて落ち込んだなら、背後から抱き締めて貰えばいいのよ、殿下に。」
ブフォ!!私は思い切り噴き出した。
その流れ、ディアーナ嬢がレオンハルト殿にアッパーとやらをお見舞いした流れだよな!?
しかも、そのあとディアーナ嬢、拐われてるし。
いやいや、それより…私がウィリア嬢を抱き締めるのか?
私!?
私の反応を見ていたディアーナ嬢がポツリと呟く。
「私でもいいけど…そんなおっきいの、きっと揉んじゃうわ…レオンは論外でしょう?」
「……では、殿下にお願いしたいです…」
何かに怯えたウィリア嬢が、消去法で残った私の名を挙げた。
そもそもなぜ、背後から抱き締める前提?しかも揉んじゃうの!?ディアーナ嬢が?
「ウィリア、レオンハルト殿とディアーナ嬢は…?」
「レオンハルト様なら、あちらでディアーナ様に新しい技をかけられておいででしたわ…。」
「そうか、なら暫くは静かだな…今の内に食事の仕度をしようか…ウィリア、あれ取って」
「はい、火打石ですね」
ウィリアと二人で夜営の準備を始める。
ウィリアは食材を切り調理を始め、私はその間に石を組んで火を起こす準備をする。
何か…熟年の夫婦みたいになってないか…?
ときめく暇もなく。
ウィリア嬢を旅に同行させて二ヶ月が経つ。
ウィリア嬢は思い詰める事が無くなった。
と言うか、思い詰める暇が無い。
あの二人のドタバタに巻き込まれると、悩んでいる事が馬鹿馬鹿しくなる。
夫婦喧嘩に兄妹喧嘩、魔物や、魔獣を退治、たまに寄る町や村で人と交流。
幼い頃から巫女として、あの町に囚われていた彼女には何もかもが新鮮で刺激的だったろう。
「ねぇ、ウィリアはジャンセンが何者か知ってるの?あれ、一応私達の父親なのよ」
食事をしながら、ディアーナ嬢が楽しそうに話す。
「え?…あの、黒髪の若い男性がディアーナ様の…え?私達?」
意味が分からないと混乱した様子のウィリアを他所に、レオンハルト殿とディアーナ嬢が私を見て微笑む。
「親父から許しが出ているって事は…まぁ、そうなんだろうな」
レオンハルト殿はニヤニヤしながら私を見る。
「黒髪のあのジャンセンって人はね、創造主なのよ。この世界を造った神様みたいなもので、私とレオンの父親でもあるの!でも、これは本来、代々国王しか知ってはいけない事なのよ」
「!!なぜ、そんな事をわたくしに教えてしまうんですの!?」
焦るウィリアを見て大はしゃぎのディアーナ嬢、そして私を指さして、ウェーイと言っているバカ…いや、レオンハルト殿。
何なんだ、このバカ夫婦。




