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64# 伝わる想い

「今回は奇跡の生だと思った……二人共に神に造られたのと同じ姿に、同じ名前…」


レオンハルトは、ディアーナの身体を少し押して離す。


「誰にも渡せないと思ったら、婚約者のスティーヴンを大嫌いになって欲しかった……ディアーナに会えた事が嬉しくて、愛してると口に出せる事が嬉しくて……はしゃぎすぎた…ごめんな…」


幾多の人生の中で、口に出すのを堪えた「愛してる」は、今生では何度も言い続けた。軽く思われてしまう程に。


「…本当に…ディアーナが好きだ…君が苦しむ位なら、俺が苦しい方がいい。だから、俺が砕けても…苦しまないでくれ」


「え、な、何言ってるの…?」

レオンハルトの顔を覗き込む。


「ジャンセンを好いているのだろう?」


「いえ、本当に何言ってるの!」


「ディアーナが好きだ…だからディアーナがジャンセンと結ばれたとしても俺は…」


「黙れ!!!」


イラッとした。いつもみたいに、殴ってやろうと思った。


でも、それ以上に二人の間にある空間が許せなかった。


身体を離したレオンハルトの胸に飛び込むように身を寄せ、彼の髪を両耳の後ろにかきあげるようにして伸ばした腕をそのまま首に掛ける。


レオンハルトの胸に、自分の胸を押し付けるように身体を密着させる。

濡れた薄い衣服越しに伝わるレオンハルトの激しい鼓動が泣きそうになるほどに愛おしい。


「私が聞きたいのは、そんな言葉ではないと分かってるくせに…ホント、性格悪いわね…」


「……性格悪いのは生みの親のせいだってば…」


レオンハルトは翡翠色の瞳を涙に滲ませて、もう一度ディアーナの背に腕を回す。


「愛してる…ディア……愛してる…」


震える声で呟くと、止めどなく溢れる涙を拭う事もしないまま強く強くディアーナを抱き締める。


「私もよレオン…あなただけを誰より愛してるわ…」


顔を傾け、鼻先でレオンハルトの唇の位置を探し、自分からレオンハルトの唇に自分の唇をそっと重ねる。


堰を切ったように溢れた想いは留まる事が出来ず、レオンハルトは重ねられたディアーナの唇を舌先でこじ開け、ディアーナの咥内をまさぐるように深い口付けをする。

細い腰を引き寄せ、全身密着させる勢いで貪るように続く口付けに、ディアーナの身体が逃げる。


「ふ、ぁ、ちょ…待って、待って!ファーストキスがこれとか、ハードル高過ぎる…!」


呼吸が出来ずに口付けを逃れ訴えれば、


「ファーストキス…に、してくれるのか?…マジか…」


涙目のまま、嬉々としたレオンハルトの顔がそこにあった。

さっきまで大号泣していたくせに!


「え?」


ヒョイと横抱きでディアーナを抱き上げたレオンハルトは、泉からあがるとディアーナを抱き上げたままテントに向かう。


「ちょ!ちょ!待って!ま、まさか…だ、抱く…とか…」


「抱く。待てない、無理だ……待ち過ぎて、もう無理。…待ったら俺の身体が砕け散る。それはもう木端微塵に。」


なに言ってやがる!と思うが何度も悲しく苦しい思いをさせた自覚はあるので無下には出来ない。


抱き上げられたままテントに入り、簡易ベッドの上に横たえられると、レオンハルトがディアーナの濡れた靴を脱がし、足の爪先に口付けをした


「!!!」


足の爪先に触れた唇は、足の甲、脛へと登りながら赤い軌跡を刻んでゆく

なんかヤバイ!!


そりゃね、身体と心が重ならないと私、聖女になれませんよ?レオンを完全回復してあげれませんよ?


でもね、キスしたし、心だけでも重なったんだから、半聖女、プチ聖女って事で今回は見逃してくれないかなぁ!


脳内でたくさんの声が同時に訴えかける。


「「「「初めてがテントの簡易ベッドとか、あり得ないから!」」」」


あー私の前世たち、すべて清い身だったようですものね…分かります分かります。

これは、みんなを代表して、わたくしディアーナが交渉するしかないでしょう!よし!やめてって言うわよ!


「ディアーナ…」


気がついたらベッドに横たわる私の上から熱い瞳で見下ろすレオンハルト。

濡れた衣服の胸元が少し乱されている。何かされた!?


はわーー!ディアーナ代表ピンチ!

だ、誰か!私の前世の誰か!タスケテー!



「…!お兄ちゃん、私こんな所じゃ嫌だよ!」


ピシッ

レオンハルトの動きが止まった。凍り付いているようだ。


さすがです!私の中の香月、グッジョブ!



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