59# 白い白い世界
また夢を見ているのかしら。
ディアーナは真っ白な世界にいる。
真っ白過ぎて、壁と地面の境界線すら分からない。
なのに美麗な彫刻の施された真っ白な大きい両開きのドアだけがある。
宙に在るかのように。前も後ろも同じ空間なのにポツンと置かれたそれは、ど◯でも◯アのようだ。
そのドアの前に、白いドレスを身に纏う美しい人が居た。
藍色の長い髪には星屑のような小さな白い光が散りばめられ、金色の瞳は長い睫毛に縁取られている。
いや、これ私だな!
10割増し位に美人だけど、私だ!
ハリウッドもビックリ位なウルトラメイクしても、ここまでにはならないわよ!
いや、もう美女過ぎて私似の美女って事にしよう。
ハリウッドって何だっけ!
私似の美女は、何かを呟いている。
美しい声音で、祈りにも似た歌のような何かを口ずさんでいる。
私は、私似の美女に近付く。彼女の言葉を聞きたくて。
「……」
聞こえない…もっと近付く。彼女には私が見えていない。
「……レ…」
かなり近付いた。……レ?……もっと近付く。顔がくっつく程に近付く。やっと私似の美女の言葉を拾えた。
「ヘタレ。うぜぇ。」
えええええ!口わっる!!
あ、これは私だわ!紛れも無く完全に私だわ!
「そんなに私を抱くのが怖いのかしら?」
は?ナニ言っちゃってんの…私!……ホントに私かあ?この人!?抱く!?抱かれる!?何で!!
「お父様、お父様もいい加減にして下さらないと、ぶん殴りますよ。マジで。」
だ、誰?お父様?ディングレイ侯爵な訳ないわね…
つーか、見た目と言葉遣いのギャップが激しいわ。
「善処するよ、ディアーナ。」
背後から、お父様とやらの声がした。
振り返り、姿を確認しようとした所で夢の世界がプツリと途切れた。
目を覚ました私の前にはいつもより近い位置に天井……?いや、天井ではない。天幕?つか、これはテントだ。




