29# 前世では潮干狩りが好きだったような
商業都市シャンクを離れ、次は海を目指すらしい。
王都は海から離れている為、スティーヴンは海を見た事が無いそうだ。
ディアーナも海を見た事が無いのだが、前世の記憶だけが微妙に残っている。海が好きだ!と。
シャンクでは、ディアーナが欲しがっていた武器の調達はもちろん、馬の調達も叶わなかったので、数日かけて野宿もしつつ徒歩で向かう事になった。
途中途中で小さな村や集落があれば寄り、魔獣を退治したり必要な物資を調達してゆく予定だ。
「ディアーナは、俺がおんぶして行く」
真面目な顔で言うレオンハルトに、汚物を見るような視線を向けるディアーナ。
「馬鹿ですの?馬鹿ですのね。と言うか、お前はアホか!」
最近、日本人の庶民だった前世の私の言動が目立つが、レオンハルトは気にしてもおらず、スティーヴンに至っては呆れを通り越して初めて見るディアーナの言動に興味津々といった感じだ。
空が赤く染まる頃、岩がせりだして屋根のようになった場所に出た。
今夜はここで休もう、とレオンハルトが提案したので賛成し、薪を組んで火を起こしつつ夜営の準備をする。
「わたくしにも一人になりたい時間というものがございます。ですから、少しの間一人にして下さいませ。」
「ディアーナ嬢、それは危険ではないのか?先日の誘拐の事もあるし…」
スティーヴンは心配して声を掛けてくれているのだが、おかんか!と脳内ツッコミしてしまう。
「レオンハルト様の事ですもの、先日の事を踏まえて何らかの対策はなさってるんでしょう?わたくしの居場所が分かるだとか…危険が及ぶと感知出来るとか」
「…盗撮と盗聴的な魔法なら……してる…」
「今すぐヤメロ!」




