18# 令嬢らしからぬ
「まさか、こんな田舎町で王都の姫さんが手に入るとは思わなかったよ、上玉中の上玉だもんな」
黒髪の男はディアーナの方に背もたれを向けて木の椅子を置き、背もたれ部分に両腕をのせ顎を乗せた。
その顔はなぜか眉間にシワが寄り、苦悶に近い。
「あら、金蔓が見つかったような言い方の割には嬉しくなさそうね?王都に居らした事があるの?わたくしを知ってらっしゃるのね?」
コテンと首を傾け、男の顔を覗き込むようにすると、黒髪の青年はジィィっとディアーナを見て大きい大きい溜め息をついた。
「俺の知っていた姫さんと違う…何てゆーか…理想と現実の違いが…」
「何をおっしゃるの?王都で見たわたくしと何が違うと」
「王都で見掛けたのはたまたまで…護衛や侍女をはべらせて馬車から降りる所だったかな…何て言うか…住む世界が違い過ぎて…腹が立って、滅茶苦茶汚してやりたいと思う程キレイだった」
「憧れと憎しみは紙一重的な事かしら?今からわたくしを滅茶苦茶傷付けたいと思ってらっしゃるの?」
特に怯える風でも無く、先程とは反対側に首を傾ける。
「…だから…だからな!その、あざとさが!て言うか今さら令嬢っぽさを演じるな!!普通、令嬢ってのは、男を殴ってのしたり、人をオッサン呼ばわりしねーから!お前、この状況怖がりもしないで何なの!?頭おかしいの!?」
随分とひどい言われようだ。
「見てらしたの、金髪の変態を兄直伝のアッパーでマットに沈める所を。」
「あ、あっぱー?まっと…?って何だ?兄直伝?つかディングレイ家に嫡男なんか居たか?」
「うん、私ももう意味が分からなくなりましたわ」
なんだろうアッパーって…しかも兄直伝て…??




