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彼の国(かのくに)  作者: 春の雪
 第二章 彼の国にて

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第16話 この国のこと 2

 (1)

 「結果としては、残念ながらこの世代の人達は和の国に戻ることはできんかったんや。」


 「では、もっと後になって?」

 

 「そうやな。その後も地震が起きたと聞く度に何か分かることがないか調べに行ってた。


 そして約十年後の慶長伏見の地震の時、水辺で何かが起こっているのではないかという説が出て来た。


 たとえば地震による津波で海岸線に大きな変化があって、そこで何かが起こったのではないかと。」


 「でも何が起こったかまでは分からなかったのですね…。」


 「しかし、さらに十年後に太平洋側に大きな津波をもたらした大地震があってな、そのすぐ後に伊勢湾沿岸に今までなかった洞窟を見つけたんや。」


 「ではその時に?」


 「いや、その時に洞窟の中に入った人は和の国には戻って来んかったんや。


 記録によると6人で探索をしていてその洞窟を見つけて、2人が様子を見に入った。

 

 その時は引き潮の時やったけど、潮が満ちてきて危ないから撤退するようにと呼びに行った2人も戻って来んかった。」


 「そんな…。」

 雪野は少し涙ぐんだ。


 「しかし、後からわかったことやけど、その時の4人はこっちにたどり着いてたんや。


 ただ、和の国側の残りの2人は満潮になる前に陸に戻った。そして次に潮が引いた時、同じ場所に行ってみたけど洞窟はもうなかった。」


 「では、和の国側はその時は一旦あきらめたのですね。」

 

 「そうやな。ただ、普通やったら世代が代わったらだんだん忘れられていくんやが、伊賀の忍びは口伝で忍びの技や知識を伝えてた。

 

 それと一緒に天正の地震の謎も、洞窟のことも伝えられていったんや。


 それで、その後も子孫達が、地震があると調べに行ってたんや。」


 「こちらの、日の国側でも()()を探し続けていたのでしょうか?」


 「そうやな。最初にごっそりこっちに来た人達は、流れ着いた場所の付近に住みついてずっと調べてたそうや。


 ただ、発想として、違う空間ができたという考えはなかった。

 津波の引く波に流されて遠い島に来た、と思ってたらしい。


 しかし4人が来たことで考え方が大きく変わった。

 

それからは、海辺の潮の満ち引きで日の国と和の国を結ぶ洞窟のようなものが現れる、と当たりをつけて調べたらしい。」


 「では日の国側から逆に和の国に行けたりしたのでは?」


 「その通りや。しかしたどり着くのに成功したんはだいぶ後やった。

 

 日の国と和の国の海の満潮干潮が同じではなかったからな。


 満潮干潮は太陽や月の引力によるから場所が違うと時間も違う。


 それで日の国の干潮の時に出て行っても和の国は満潮で流されたりしたんやろな。


 ただ、1人運良くこっちに押し戻された奴がおったみたいで、それからは時間を計算して行くようになったようやな。」


 「ではとうとう?」


 「和の国にたどり着いた。

 しかし話に聞いて来たとはいえ、世代は代わってたし、洞窟や周りの様子も変わったりしてたらしいな。


 たどり着いた者を浜辺で助けた漁師達は浦島太郎が帰って来たと噂したらしい。」


 雪野は思わず笑った。

 「でも、どうにか伊賀にたどり着けたのですか?」


 「伊賀ではその辺も含む浜辺に情報網を張りめぐらせてたから割とすぐに分かったらしい。」


 「嬉しかったでしょうね…。」


 「そうやな。まず、満ち潮に流されたかと思ってた4人が日の国にたどり着いてたというのが安心したし、嬉しかったやろな。


 相互に行き来できたということもな。長年あきらめず調べて来たことが報われたな。」


 「その後は何度も行ったり来たりしていたのですか?」


 「いや、そこまでになったのは和の国の明治時代後半になって小さな潜水艇のような物ができてからや。


 やはり満ち潮、引き潮て言っても正確に同じようにはいかんから、海に投げ出されて、ということもあったやろうしな。」


 「リスクも高かったのですね。」


 「それに世代が代わって、和の国に住んでたことがない者達になってくると、好奇心だけで命をかけてでも行きたいと言う者も少なくなったんやろな。」


 「そうでしょうね…。」


 「状況が一変したのは和の国の明治維新からや。


 今までの国の様子が激変して信じららへん進歩を遂げたのを見て、行ってみたいと言う者が増えたんや。」



(2)

 「それまでの日の国の歴史というか…二つに分かれてからの流れというかはどんなだったのですか?」


 「それはどちらかと言うと日の国の方が進んでたんや。


 主な理由は鎖国をしてなかったからやな。


 この映像を見たら分かるように、日の国は大陸と近いやろ?


 北の国や中の国(なか くに)からしたら自分の領土がいきなり増えたようなもんや。」


 「いきなり攻めて来たりはしなかったのですか?」


 「それは北の国と中の国が互いに牽制しあってたからな。


 しかし元々わしらは、中の国とは歴史的にも深い交流があって師匠とも言える国やったから、独立国として認めてくれるんやったら中の国につく、と交渉して収まったんや。」


 「北の国は納得したのですか?」


 「その時点ではこちらが一つになって向かって来られても分が悪いとみたんやろ。


 ただ、その後いろいろあって今は何して来るかわからんからな。それがなりすまし影子のあいつらの国や。」


 「長い関係なのですね。」


 「因縁の関係やな。」


 「国内はどんな感じだったのですか?裏の国とか裏の統領とかという言葉を何度か聞きましたが。」


 「そしたら少し休憩してそっちの話しよな。」


 「はい。」



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