あとがき
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
この作品は、2007年8月31日に、正味3時間半ほどで一気に書き上げた作品です。
1994年8月31日、合宿で伊東へ向かう車の中で、ラジオから流れてきたDJ坂上みきさんの「今日で8月も終わり。しっかり夏のケジメつけちゃいましょう」という一言が、今でも強く心に残っています。あの日に見た景色、海や風の香り、そしてFMラジオが流れる車内の空気感を、いつか物語として残したい――そんな思いを抱き続けていました。
この作品を書くきっかけになったのは、二人の女性の後輩との何気ない会話でした。偶然にも二人とも、「男性が気持ちを言葉にしてくれない」という不満を口にしていたのです。
そこで、この物語の「僕」(作者自身ではありません)は、相手の気持ちを察することが苦手で、指摘されてもなかなか気づかず、自分の想いも素直に伝えられない青年として、少し極端なくらいに描きました。「言わなくても伝わる」と思っている彼と、「言葉にしてほしい」と願う彼女。そのすれ違いこそが、この作品で描きたかったテーマです。
作中の出来事はすべて実話ではありません。実際に経験した出来事は1/3ほどで、「彼女」も実在の一人ではなく、何人かの女性の印象や思い出を重ね合わせて生まれた存在です。もし大学時代にこんな夏を過ごせていたら――そんな憧れも込めながら書き上げました。
当時はまだ「ナツウタ」という言葉は一般的ではありませんでしたが、この物語ではFMラジオの空気感も一緒に楽しんでいただきたいと思い、各章ごとにプレイリストを添えました。「夏」と「海」といえば、私にとってはサザンオールスターズ、TUBE、そして杉山清貴。この三組には、すべての章のプレイリストに登場してもらっています。もし気になる曲がありましたら、この物語とともに耳を傾けていただけたら嬉しいです。
この物語が、皆さんの心のどこかに眠る「あの夏」の記憶を呼び覚ますきっかけになれば、作者としてこれ以上の喜びはありません。
少しだけ懐かしい、夏の終わりを感じていただけたでしょうか。




