第三十九話 パルシア帝国西軍イェニチェリ壊滅
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ブクマ、評価ポイントありがとうございます。
ふう、魔力に飲まれるのは久しぶりだぜ。
この感覚……たまらねえな!
うん?
野営地の奥の方から……ああ、パルシア帝国兵が走って来る。
ここは野営地の入り口だからな。
俺が暴れていたから、増援部隊を送って来たって訳だ。
ここのパルシア兵は精鋭歩兵のイェニチェリ。
数が増えると面倒だ。
「物理障壁!」
分厚い物理障壁を横長に展開して増援部隊がこちらに来られないようにする。
増援部隊は透明の壁に激突して、悔しそうに壁を叩いている。
「いや、それ割れないから。俺が魔力を注いでいるからね。ハハッ! オマエらまるで動物園の猿だな。物理障壁を見た事がないのかい?」
増援部隊はこれで良し。
さて、誰からやろうかな?
まず右前の火炎放射器を操作している兵士からにするか!
「さあて! まずぶっ殺すリストのナンバーワンはオマエだ。ユー! ラッキー! フー!」
「××××××!」
「ああ? 何言っているかわかりませんよ? じゃあ、さようなら! エアカッター!」
火炎放射器を操作する兵士に、風魔法のエアカッターを飛ばす。
エアカッターは、風を真空回転させ敵を攻撃する魔法だ。
いわゆる『かまいたち現象』を起こす訳だが、俺様のように魔力が豊富な魔法使いがエアカッターを発動すると凶悪な魔法に早変わりだ。
俺が放ったエアカッターは、火炎放射器の横に立つ兵士に音速を超えて飛び掛かった。
兵士に瞬きもさせず、兵士の体を切断する。
兵士の体が横にずれた。
痛みを感じる時間すら与えない。
兵士は横にずれる自分の体に気が付き絶望した。
そして死んだ。
赤々と周囲を焼く炎に、兵士の紅い血が加わり美しいグラデーションを描く。
残ったパルシア軍兵士は三人。
さすがは精鋭兵イェニチェリだ。
悲鳴を上げず、俺を倒そうと火炎放射器を操作している。
感嘆を禁じ得ないね。
「いやあ、さすがは精鋭イェニチェリだな! 同僚が殺された位じゃビビらねえか! いやあ、お見事、お見事! おっと!」
俺は手を叩いてヤツラを褒め称えたのだけれど、イェニチェリ-ズは火炎放射器で攻撃してきやがった。
だが、無駄だ!
俺が分厚く張った物理障壁に、炎は弾かれている。
「無駄だって……さっき見ただろ? わかんねえのかなあ。おい! チェリーズ! オマエら童貞……いや、精鋭だろ? なんか違う攻撃を見せてみろよ!」
「×××××!」
「××××!」
「×××××! ×××××!」
ダメだな。
何かワーワーわめき散らすだけだ。
そして火炎放射が止んだ。
「あー、オマエらもう良いや……飽きた……」
さっさと終わらせよう。
飽きちまったおもちゃは、ポイだ。
詠唱開始。
「火のエレメントよ。アルト・セーバーが命じる。我の魔力を糧とし、我が敵を燃やし尽くせ! 炸裂せよ! フレイム・エクスプロージョン!」
炎の柱を三本立ち上げ、柱の中で爆発を起こさせる。
フレイム・エクスプロージョン……死の炎柱……。
その中に囚われた者は、生き長らえる事は出来ない。
パルシア帝国南軍を全滅させた時よりも小規模なフレイム・エクスプロージョン。
イェニチェリ兵一人一人のサイズに合わせた炎の柱だ。
「この前のお返しだ。俺は大火傷で死にかけたぞ。苦しいだろう? 怖いだろう? 息も出来ず、生きながらその身を焼かれる気分はどうだ? フフフ……」
すぐに三人の兵士は黒い消し炭になり、その黒い炭さえもフレイム・エクスプロージョンの強烈な炎で焼かれ白い灰になった。
炎の柱が消えた後、白い灰が風に流されていった。
増援部隊は仲間が灰になって消えた事にビビって真っ青にな顔で逃げて行った。
「まあ、そこそこ楽しめたな。それで……これがパルシア帝国製の火炎放射器か……」
二台の火炎放射器が生き残った。
その内一台の火炎放射器に近づく。
ガソリンや灯油のような臭いが鼻をつく。
火炎放射器はリヤカーの様な手押し車の上に木箱を載せ、木箱の先に金属製の吹き出しノズルが付いている。
ノズルの先30センチ程の所に着火の為だろう松明が棒の先に括り付けられていた。
「このノズルから霧状に燃料を吹き出して、この松明で着火か……。箱の中はどうなってやがる?」
木箱の上蓋を空けると中には大きな甕がある。
しっかりとした木製の蓋があり、甕の先には自転車の空気入れのようなポンプが仕込まれていた。
「へえ、なるほど。この手押しポンプを動かして、燃料を吹き出すのね。これと同じ物を作れるかな?」
構造自体は単純に見えるけれど、細かい所が難しいかもしれない。
ポンプやノズルは金属製だ。
火炎放射器が複数あるって事は、量産出来るって事だろ?
パルシア帝国の工業力の高さを感じるな。
やるねえ、パルシアも。
魔法後進国でも工業先進国なのかも?
「まあ、良いや。その辺は頭の良いマックスウェル先輩に任せときゃ良いだろ。とりあえずこの火炎放射器二台は鹵獲品って事でよろしくう~」
鹵獲した火炎放射器に引火しないように、辺りで燃えている火に水魔法をかけて消化する。
「さて……残りのイェニチェリーズの始末だが……。火魔法は鹵獲品が燃えちまうからな……。違う属性魔法にするか」
俺はしゃがみ込み手を地面に着いた。
野営地の中央へ向かって意識と魔力を集中する。
地面全体に魔力を染み込ませるように、深く、深く、魔力を地中深くに向かわせて行く。
「地のエレメントよ! 地中深くに眠る地の神よ! 目覚めよ! 我に力を貸せ! その力を解き放ち、大地を切り裂き、我が敵を屠れ! 大地を揺らす者、その名は、エノシガイオス!」
詠唱が終わると地面が細かく揺れ始めた。
遠くでゴウと言う音が聞こえる。
魔力が体から大量に引き出されて行く感覚。
ああ、気持ち良い……。
この魔法を使うのは初めてだが成功した。
「伝説級地属性魔法エノシガイオスだ。味わえよ!」
揺れは激しくなり地面にひび割れが入り出した。
やがて立っている事も出来ない大きな揺れがイェニチェリ兵を襲い、巨大な地割れが目の前に発生した。
地割れは周囲の木々と一緒にイェニチェリ兵を次々と飲み込んで行く。
「暗い地の底がこれからオマエらの住処だ。もっとも……生きていられる保証は無いがな……」
時間にして五分程度か?
地震が続き巨大な地割れは全てのパルシア兵を飲み込んだ。
俺の魔力が尽きるはるか前に、地のエレメントが尽きたようだ。
さて、ここは終わりだ。
次へ行こうか。
「アオ!」
上空に待機しているアオを呼び出す。
パルシア帝国の援軍三つは消滅した。
残りはカルソンヌ城の前にへばりついている一軍だけだ。
あいつらもブチ殺す!
降りて来たアオに飛び乗り、闇夜に羽ばたく。
さあ、明け方までにはケリをつけてやるよ!




