第三十八話 パルシア帝国西軍へ再出撃
初レビューをいただきました!
ありがとうございました。
ブクマがグンと伸びました(^^
パルシア帝国西軍への二回目の攻撃は、俺、マックスウェル先輩、アメリアの三人で行う事になった。
三人で話し合い大まかな作戦を決めた。
マックスウェル先輩とアメリアは陽動攻撃を担当し、俺は主攻撃を担当する。
まず、マックスウェル先輩とアメリアが高度高速移動で、俺が攻撃する反対側に回り込む。
二人で敵野営地を攻撃、一撃離脱。
攻撃後、二人は高度上空で待機。
マックスウェル先輩とアメリアが陽動攻撃した後に、俺が低空高速侵入。
敵野営地を攻撃し、敵の火炎放射器の攻撃を受けてみる。
火炎放射器の攻撃を物理障壁で防げた場合は、そのまま攻撃続行。
物理障壁で防げなかった場合は、上空に待機しているマックスウェル先輩とアメリアが負傷した俺を回収して離脱。
大雑把な作戦と感じたけれど、スマホや無線がない世界だから仕方がない。
攻撃を開始したらお互いに連絡を取り合う事が出来ない。
細かい連絡、調整が出来ないならこれ位の取り決めで良い気がする。
マックスウェル先輩は、アメリアから偵察を引き継ぎ、俺とアメリアは夜を待った。
夜が更けた頃、ブリッジで最終ミーティングが行われた。
偵察から帰って来たマックスウェル先輩が地図上で野営地を指さす。
「パルシア帝国西軍が野営をしているのは、ここですね」
パルシア帝国軍は、昨日の野営地よりも少し進んだ街道沿いの草原に野営しているらしい。
「私とアメリアは東側から陽動攻撃をかけます。アルト・セーバーは西側から攻撃をして下さい」
「「はい!」」
パウル王子が心配そうな声を出した。
「我らはパルシア帝国軍の南軍、南西軍を撃破した。援軍を二つ撃破! これだけで十分な成果なのだ。三人とも無理はするな。危なくなったら引き上げて来るのだ」
パウル王子は両手を握ったり開いたり落ち着かない様子だ。
三人とも黙ってうなずく。
ブリッジのクルーが時間を告げ、パウル王子が号令をかける。
「時間です! 作戦開始です!」
「よし! 出撃せよ!」
「「「了解!」」」
マックスウェル先輩を先頭にドラゴンデッキへ走る。
俺とアメリアが後に続き、お世話係のサンディとマリエラがさらに後に続く。
走りながらアメリアが照れ臭そうに話しかけて来る。
「ねえ……アルト……ケーキだけどさ……」
「えっ? ああ、うん、一緒に食べに行く約束をしたね」
「約束……守りなさいよ!」
照れ隠しなのか、アメリアは急に口調がいつもの強い調子になった。
「守るけど……。何で上から目線なんだよ?」
「お黙りなさい! あなたが火傷して帰って来た時は、本当にびっくりして、心配したんだから!」
それは本当に申し訳ないと思っている。
大火傷して帰って来た俺の姿を見て、アメリアは失神したらしい。
「ごめんよ」
「今度は……今度は私が支援につくから。危なくなったら帰るのよ!」
「ああ、わかったよ。約束するよ」
「約束よ!」
そう言ってアメリアは自分のドラゴン『ラファール』へ向かった。
俺はアメリアの背中を見送りながら、こうして約束が一つ一つ増えて行く事に嬉しさとほんの少しの不安を感じた。
ポロリと不安が口からこぼれた。
「約束守れるかな……」
後ろにいたサンディが背中を強く叩いた。
「何を言ってんだ! 今度は無事に帰って来いよ!」
一つ大きく息を吸ってサンディに答える。
「そうだな! 女の子との約束は守らなくちゃな!」
「そうだよ! アルト! なあ、ところでさ。アメリアお嬢様のどこが好きなんだ?」
「えーと……、うーん……。いつもそばで世話を焼いてくれる所かな」
「あー、うーん……。単に口うるさいだけだと思うけれど……。まあ、あれだよな……。さあ、アオに乗って! 行ってこい!」
「……おう!」
帰って来たらサンディとは個人的にゆっくり話し合う必要がありそうだ。
ドラゴンデッキでバッカニアドラゴンの『アオ』に跨る。
上部甲板へ繋がるスロープを登ると強い風が吹きつけて来た。
マックスウェル先輩、アメリアが順番に発艦する。
俺もアメリアに続く。
「行くぞ! アオ!」
「キュウ!」
アオは強い風にも負けず夜空に飛び立った。
飛行船『黄金のグリフォン号』の周りを三頭のドラゴンで周回する。
パウル王子がブリッジから心配そうな顔をして手を振っている。
こういう時は残って待つ方が辛いかもしれない。
三頭のドラゴンはパルシア帝国西軍の野営地に向かう。
俺はアメリアとマックスウェル先輩に手を上げて別れを告げる。
「アオ! 降下だ! 低空侵入するぞ!」
「キュウ!」
アオが首をグッと下へ向け降下を始める。
振り返って見ると、マックスウェル先輩とアメリアの乗ったドラゴンは上昇を始めた。
さて……、二人とは別行動だ。
二人が陽動攻撃を仕掛けた後に、俺は攻撃を行う。
パルシア帝国西軍の野営地にあまり早く到着しすぎてもダメだ。
アオを地面ギリギリまで降下させ、街道沿いをゆっくり目に飛行させる。
三十分経過した頃、前方で火の手が上がった。
マックスウェル先輩とアメリアの陽動攻撃だ!
「よし! アオ! 速度を上げて!」
マックスウェル先輩とアメリアは、一撃したら離脱しているはずだ。
パルシア帝国西軍の混乱が収まる前に、俺が仕掛けなきゃならない。
アオを低空高速飛行で飛ばす。
街道沿いの木々が視界の後ろへ、後ろへと流れて行く。
昨日の失敗した攻撃を思い出しブルリと体が震える。
敵に囲まれて本当に殺されると思った。
あの時は火傷で息も苦しくて、判断能力がまともじゃなかった。
生きる事を諦めてしまったな……。
今は……生きていたいと思う。
だから戦場に赴くのが怖い。
怖いけれどもすぐに戦わないと、もう二度と戦場に立てなくなる気がする。
昨日の今日だが時間をおかずに戦わないと、恐怖を思い出して立ちすくんでしまいそうだ。
荒療治だが、やってやる!
生きて帰ってアメリアとの約束を守る!
街道の先にパルシア帝国西軍の見張りが見えた。
昨日と同じだ。
「ロール!」
「キュ!」
アオをきりもみ回転させて、すれ違いざまに見張りに魔法を撃ち込む。
六人の見張りが見えた。
魔力を増したストーンショットを散弾で撃ち込むと二人が倒れるのが見えた。
四人逃したが、気にしても仕方がない。
それよりも前方だ。
前方少し前にパルシア帝国西軍の野営地がある。
俺はアオから飛び降りながら、次の魔法を発動させる。
火のエレメントに短く呼びかける。
「火のエレメントよ。我が槍となりて――」
魔法を詠唱する途中で後ろから見張りたちの声と笛の音が聞こえた。
「××!」
「×××××××!」
「××××××!」
「ピー! ピー! ピー! ピー!」
遅い!
もう魔法は完成している!
「――我が敵を貫け! ファイヤーランス!」
俺は詠唱を中断する事なく着地した。
着地と同時に前方の空間に扇状にファイヤーランスを大量に放つ。
火魔法ファイヤーランスは、火のエレメントと魔力を反応させ炎を槍状に尖らせて飛ばす魔法だ。
特にファイヤーランスは、火のエレメントと魔力が槍状の先端に集中する。
この集中が貫通力を生む。
木製の盾や壁程度ならファイヤーランスは突き抜ける。
俺の放った大量のファイヤーランスは、暗い闇の中を赤い光の線となって四方へ飛ぶ。
間髪入れずに着弾しパルシア帝国西軍野営地の入り口を赤く染めた。
連続して爆発が起こり、悲鳴が上がる。
恐らくファイヤーランスが火炎放射器を貫いて、燃料に火をつけたのだろう。
俺は頭上で旋回するアオに指示を出す。
「アオ! 上空待機だ! 俺がヤバくなったら、アメリアとマックスウェル先輩を呼びに行け! 二人も上空で待機している!」
「キュウ!」
アオが空高く羽ばたいて行くのを見送ってから、ゆっくりとパルシア帝国西軍の野営地に歩を進める。
先程のファイヤーランスである程度火炎放射器は潰したはずだ。
生き残った火炎放射器がどのくらいあるかな?
俺は警戒しつつゆっくりと歩く。
体を中心にドーム状に物理障壁を分厚く張り、外側に魔法障壁を張る。
弓矢の攻撃も魔道具による魔法攻撃も防げる。
火炎放射器の攻撃も防げるはずだ……。
それでも不安は消えない。
火炎放射器で生きながら火にあぶられた記憶が蘇り、胃液が逆流しそうになる。
あの火を噴く魔道具が火炎放射器だと言う推測には自信を持っている。
まず間違いはない。それでも怖い物は怖い。
「ハア……ハア……ハア……」
大きく息を吸い、大きく吐き出しながら、パルシア帝国西軍の野営地へ向かう。
火の手で野営地の入り口の様子が見える。
火炎放射器はかなり破壊されたみたいだ。
壊れた木の箱が激しく炎上し、近くにいた兵士が巻き添えを食っている。
パルシア帝国兵が、火だるまの兵士に土をかけて消火しようとしているが、なかなか消火出来ずにいる。
「気の毒にな……」
野営地の入り口まで20メートルの距離に来た。
俺を見つけたパルシア帝国兵がパルシア語で怒鳴り声を上げた。
「××××!」
「××××! ××××!」
「何を言っているかわからないよ! 俺は敵だ!」
俺が怒鳴り返すと、生き残った火炎放射器が火を噴いて来た。
炎の塊が俺に向かって来るのがスローモーションで見えた。
恐い……。
恐怖を感じる。
理性がすっ飛びそうだ。
俺に近づいた炎は、まず魔力障壁を通り抜けた。
これは予想通り。
魔力の炎でなく、通常の炎である証拠だ。
問題は次!
物理障壁で防げる……はずだ!
魔力障壁を通り抜けた炎の塊は、真っ赤に光り轟音と共に物理障壁に襲いか掛かった。
「防げ!」
俺の展開した物理障壁と炎が激突する。
バリバリと激しい音がして炎が物理障壁を食い破ろうとしている。
だが、分厚い物理障壁は炎の侵入を許さなかった。
激しい炎に削られながらも、物理障壁は炎をしっかりと弾き返した。
「よし! 防いだ!」
炎を防げた事、俺の仮説が正しかった事に、歓喜が沸き上がる。
思わず両手を強く握りしめる。
炎は右斜め前から来ていた。
炎が来た方角を見ると、四角い箱型の火炎放射器の側に二人の兵士が立っているのが見えた。
「××!」
「××××××? ××××××!」
パルシア帝国兵は、無傷の俺を見て驚いている。
あ、そうだ……、こいつらが精鋭歩兵のイェニチェリだよな。
言われてみれば、服装が今までの兵士より良い。
白い布を頭からかぶっているのは今までのパルシア兵と同じだけれど、金色の刺繍の入った赤い立派な服を着ている、
俺が右斜め前のイェニチェリ兵を観察していると左側から炎が飛んで来た。
「まだ、いたのか!」
数秒の間、物理障壁と炎が押し合っていたが、やがて炎が止んだ。
炎は物理障壁を打ち破れないでいた。
左側に目をやると赤い服を着た二人のイェニチェリ兵が、信じられない物をみる目で無事な俺を見ていた。
まあ、昨日は黒焦げにされたからな。
昨日通じた攻撃が、今日は通じない。
パルシア帝国のイェニチェリたちは、驚きと恐怖を感じているだろう。
俺はゆっくりと歩を進める。
イェニチェリたちの顔が引きつるのが見える。
今度は左側を右斜め前から同時に火炎放射攻撃が来た。
俺は立ち止まり物理障壁に魔力を注ぎ込む。
バリバリと物凄い音がして、火炎放射と物理障壁がぶつかり合う。
俺は物理障壁を破られないように、大量の魔力を更に注ぎ込む。
ああ、まずい……。
この感覚は……。
魔力に飲まれそうだ……。
「ふ……ふふっ……」
俺の口から笑いが漏れる。
ああ、ダメだ。
自分をコントロール出来ない。
魔力に……飲まれて……しまう……。
炎が止んだ。
間抜け面をしたパルシアのイェニチェリどもが、がん首並べて俺を眺めている。
「ふ……ふふっ……。ハハッ……、ハーハッハ!」
笑えるぜ……。
パルシアのクソどもが!
自分たちの新兵器が通用しないから驚いているのかよ。
「てめえら昨日は世話になったな! 万倍返しに来たぜ! 皆殺しだ!」
今話、お待たせしました。
体調崩したのもあって、なかなか書けませんでした。
頭痛→熱中症かな?→エアコン全開→寒い…… 以下略。
みなさんもお気を付けて(^▽^;)





