ある神官の成長日誌 〜ジュール編〜 36
「ジュールっ!!」
バルナスが走ってきた。手元の杖を投げ捨て、ジュールの肩をつかんだ。
そのままジュールの身体を、自分の方に向けた。
「ば、バルナス様?!」
ジュールの声を無視して、ジュールの顔を覗き込んだ。
「顔色は……悪く無い。呼吸は?」
めちゃくちゃ慌てているのに、めちゃくちゃ冷静という、アンバランスな様子だった。
「呼吸は……正常。熱は?」
ジュールのオデコに右手の手のひらをあてた。
「平熱。指先は?」
右手でジュールの左手首をつかみ、左手でジュールの指を伸ばした。
手のひらと、手の甲、指先に傷が無いかを確認する。
「左手は、問題無し。右手は?」
同様に、右手を確認。
「右手も、問題無し。脈拍は?」
ジュールの右手首に、右手の人差し指と中指をあてた。そのまま、脈拍を測定する。
「脈拍は、少し速いかな? まあ、正常範囲?」
自らの行為が、ジュールの脈拍を速くしているのを自覚しているが、気にした様子は無かった。
「心配したんだよっ!!」
ジュールを固く抱きしめた。
「ば、バルナス様?!」
ジュールの耳が、赤くなって行く。
「ジュール。吐き気は?」
腕の中に閉じ込めた恋人の顔を、上から覗き込む。
「ありません」
「気持ち悪くは、ない?」
「平気です」
「頭が痛かったり、目の奥がチカチカしたりは?
「ありません」
バルナスの問診が続く。
「指先が痺れたり、冷たくなったり、してない?」
「してないです」
「なんだ、いまの? すげーなあ、お前!!」
敢えて空気を読まず、レイブンが声をかけてきた。
そのまま、バルナスの腕の中のジュールの頭をポンポン叩く。
「ちょっと!」
不満げなバルナスの様子を、敢えて無視する。
「あとは、連射できれば、牽制としては及第点じゃねぇの?」
「?!」
ジュールの目が、まん丸に開かれた。
次の瞬間、バルナスの叫び声が響き渡った。
「ジュールに、変なことを……教えないでよ!!」
- 完 -




