突撃! アジト潜入
それからお互いに自己紹介を終え、現在奴隷商が雇ったであろう盗賊団のアジトらしき場所へ向かっていた。
「しかし、こう言ってはなんだが本当に珍しい。あの問題児のルアが懐くとは・・・・・・」
青髪の女性ことルーベル・クオルカンが俺のことを珍獣でも見るかのように眺めてくる。
意外なことに彼女はあのヴァラルアのお姉さんなんだそうだ。クオルカンの武神三姉妹と言われるほどに普段から城を抜け出して色々とやらかしていたらしい。
スネークソードのルシカ、ハルバードのルーベル、タイタンブレードのヴァラルアという呼び名をそれぞれ持っていると教えてもらった。
「前がどうだったか知らないけどさ、少なくとも一緒に旅してきた間はしっかりと自己主張してたぜ」
「あの無表情から感情を読み取るとは・・・・・・」
俺とルーベルの直ぐ後ろを疾走するシアが感心しているが、別段難しいことではないと思う。
「っと、マルク、大丈夫か?」
俺らより若干遅れて着いてくるこのパーティー唯一の男手たるマルク・シャード副神官は既に息も絶え絶えだった。
「マル坊遅いぞ、男なら意地見せろ」
「もう少しだ、頑張れ」
なんとも辛辣な応援だと思う。
マルク君はけして足が遅いとか体力が無いというわけではない。
ルーベルとシアの体力と走る速度が異常なのだ。
かれこれ10分近く100m10秒を切るペースで走り続けているのだ。それに何とかついてきているマルク君はかなり優秀だろう。この面子でさえなければ・・・・・・
「マル君、どうやら目的地に着いたみたいだよ」
太陽がそろそろ地平線の彼方へ沈み行く時間なのか辺り一面オレンジ色に染まるなか、その砦は堂々と君臨していた。
「さて、やることの確認と行こうか。まず捕まってる人たちの救出、これはそっちの三人でやってくれ。俺は派手に暴れて敵の目を引きつけておく」
「陽動作戦ということね」
「わかりました。コウガさんお気をつけて」
「おう、そっちもな」
そう言って俺は正面から砦へと駆け出した。
――――――――――――――――――――――――――――
コウガと名乗る少年と別れ、砦へと侵入したシアたち。
「あのシアさん、少し気になることがあるんですが」
マルクが二人の後ろから声を掛ける。
「なにマル坊用件は手短にね」
後ろを見ずに返事を返すシア。
流石に敵地に侵入しているだけあって周囲を警戒することは怠らない。
「はい、コウガさんのことなんですが・・・・・・もしかしたらコーキ殿の関係者かもしれません」
流石に予想外のマルクの推測にルーベルが反応する。
「どういうことマルク?」
「えっとですね、コウガさんが僕たちに加勢してくれるときに使った業なんですが、なんて言っていたか覚えてますか?」
周囲を警戒していたシアが振り返り額に皺を寄せながら口を開く。
「たしか『こがりゅうばっとうじゅつ』なんちゃらとか言うのでしょそれがどうしたの」
「忘れたんですか、コーキ殿の名前」
「そうか! コーキ・コガ、コーキ様の世界では家名が先に来るといっていた」
「そうです、そうなると家名がコガ、名がコーキとなります。そうなると『こがりゅう』というのはコーキ殿の家が持つ武術なのではないでしょうか?」
「なるほど・・・・・・」
いつしか三人は侵入した砦内ということをすっかり失念していた。
そのせいで
「貴様らなにもんだ!!」
賊に気づかれてしまった。
「仕方ない、蹴散らすよ!」
シアはそう言うやレイピアを抜き賊に踊りかかった。