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朝舞探偵事務所~妖魔のおもてなし~  作者: 空と青とリボン
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朝舞一族のDNA

午後の紅茶が似合うのは秋。冬の午後はちょっと熱めのほうじ茶が似合う。木枯らしが吹き抜ける中、電車を乗り継いでようやく事務所に帰ってきた。

「はぁー疲れた。」

俺はソファーに沈み込んだ。伯父と淳さんがやれやれと腰を下ろす。茜さんがさっそくお茶を淹れて来てくれた。

「ありがとうございます。」

「ありがとう。」

温かいお茶にほっとするひと時。

「今回は太郎ちゃんも所長も危機一髪だったわね。お疲れ様。」

茜さんが労ってくれた。

「いやいや自分でもびっくりでしたよ。何しろ自分で自分の首を全力で絞めるなんて普通なら絶対出来ない経験をしましたから。」

そう言いながら俺は自分の首をさすった。あの時のおぞましい感触は一生忘れられないだろう。伯父もあの時のことを思い出したのかうんうんと頷いた。

「私も死ぬかと思ったぞ。三途の川を渡りかけた。水面がキラキラしていて綺麗だったな。あはははは。」

「伯父さんも三途の川を見たんですか。僕は綺麗な花畑を見ましたよ。信じられないぐらい綺麗だったなぁ・・・。あはははは。」

俺と伯父はその時の光景を思い出してぽわ~んと夢心地だ。茜さんはそんな俺たちを見て呆れている。

「親戚同士、あの世に逝きかけたのによくもそんなにのほほんとしていられるわね、ある意味感心するわ、淳君もそう思わない?」

「朝舞一族のDNAかな?それか現実逃避。まぁ、必要以上に深刻に考えないのは良いことだよ。」

淳さんはあっけらかんと答えたが茜さんは肩をすぼめた。

「もっと深刻になって欲しいぐらいだわ。」

「まぁまぁ、こうして無事だったんだからいいじゃないか。」

「それもそうね。」

すると伯父は現実逃避から舞い戻ってきたのか急に真顔になった。

「ところで茜ちゃん、依頼人にはどう説明するつもりかい?上手く説明してくれよ、朝舞の名に傷がつかないように。」

「分かっています。明日、依頼人と会う約束があるのでそこで説明します。」

「うむ。よろしく頼む。」

伯父の一言でそれぞれが自分のデスクに向かう。茜さんは事務所の金庫の中に妖怪を封印した玉を閉まった。さすがに慎重に取り扱っているようだ。俺は今抱えている案件のスケジュールを見る。

「またペット探しか・・・。」

嬉しいような悲しいような・・・。でもこれも立派な仕事だよな。



 今日は朝から曇っている。陽射しが薄い分、外の景色はどこもかしこも寒気に晒されている。さすがに通勤の時は辛かったが今は暖房が効いている事務所の中にいるのでだいぶ楽だ。淳さんはパソコンに向かって依頼されたダウジング調査の報告書を作成している。茜さんは新しい依頼人からの電話に対応していた。伯父はデスクで新聞を広げている。

「伯父さん。」

「所長と呼べ。」

「所長、何サボっているんですか。」

「サボっていないぞ?新聞を読むという仕事をしている。」

「はいはい。」

「それより太郎。いつまでそうして暖房のある部屋でぬくぬくしているつもりだ。早く犬の太郎(4歳)を探しに行ってこい。同じ名前で親近感が湧くだろう?心配でいてもたってもいられないだろう?」

「いえ、別に同じ名前だからといって親近感は湧きませんよ。犬は好きですけども。」

「つべこべ言わずに探して来い。」

「言われなくても行こうとしていました。」

「そうか。気張って探してこい。無事今日中に探しだしてきたらコンビニのおでんをおごってやる。」

「本当ですか!?全種類制覇OKですか?」

「もちろんだ。」

これは大事件だ!伯父が奢ってくれることなんてめったにない。奇跡だ!俺は俄然やる気が出て颯爽と立ち上がりコートを着込んだ。しかし伯父は。

「あ、その前に1000円返してくれよ。その金でおごってやる。」

「・・・それって奢られた気がしないんですけど・・・。」

「行って来い。」

「はい。」

つかの間の幸せだった。

「太郎君、文化会館の近くの公園を探すといいかもしれないよ。いってらっしゃい。」

淳さんがにこやかにアドバイスをくれた。これにはいつも感謝感激だ。

「いつもありがとうございます、淳さん。じゃあ行ってきます。」

俺は嬉しくなって意気揚々と一歩を踏み出す。

「太郎ちゃん、外は寒いから気を付けてね。」

「はい、ありがとうございます。行ってきます。」

茜さんにも見送られいざ出陣!寒さもなんのその。ペット籠を抱えて寒空の下に飛び出した。



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