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朝舞探偵事務所~妖魔のおもてなし~  作者: 空と青とリボン
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所長の思い込み

一方、所長はというと茜たちに抗議することに夢中だった、が、ようやくここで鶫守の姿が目に入った。

「あなたは誰ですか?」

「わしか?わしは・・・。」

「あっ、もしかして秋川しずくさんのマネージャーですか?でもやけに体格良いですね。ひょっとしてSP?」

所長は鶫守の説明を遮って決めつけている。茜と淳はこの状態に唖然とした。所長の勘違いはまだまだ続く。

「でもご心配なく。わしはしずくさんに会いたいと言われてここまで来ました。なんならしずくさんに連絡を取ってみてください。」

自信満々な所長。淳は慌てて所長の袖を引っ張り囁いた。

「所長、もうそのへんでやめにしておいた方がいいですよ。」

「なんでだ?」

「いやだから・・・。」

淳が説明に困っていると鶫守は訝しげな表情で所長を見下ろしながら尋ねた。その目には警戒心が溢れている。

「そなたはさっきから何を言っているのだ。わしがしずくのマネージャーとかSPとか。第一、そなたはしずくと何か関係あるのか。」

「私ですか?私は秋川しずくの大ファンです!!」

所長は胸を張って誇らしげに答えた。茜と淳は頭を抱えた。元はと言えば自分たちが悪いので所長を責める事も出来ない。茜はさぞかし鶫守は怒っているだろうなと顔を覗くが鶫守の表情は意外なほど穏やかだ。

「・・・あら?」

茜は驚いて淳を見るが淳も同じことを感じたらしく茜を見て頷いた。

「ところでしずくさんはどこにいるんですか?あのお屋敷ですか?案内してくれますか?」

所長はウキウキしながら鶫守に近づいた。まるで警戒心というものがない所長に茜は呆れた。

「所長あのですね、実はこの人は・・・。」

茜が説明し始めたところで鶫守はじりっと所長ににじり寄り

「そなたなかなかいい度胸をしているな。残念ながらわしはしずくのマネージャーでもなければSPでもないぞ。そもそも人間ですらない。このわしを見てそこまで平然としている人間に出会ったのは初めてだ。」

「そうですか、初めてですか、良かったですね。・・・って人間じゃない?」

所長は一瞬何を言われたか分からなかったらしくきょとんとした。しかしすぐにその意味に気づいた。

「茜ちゃん、淳君、これはどういうことかな?」

所長は恨みがましい目で茜たちを見た。茜たちは上手く説明出来ないか考えたがなかなかいい案が思い浮かばない。なのでかろうじて一言答えた。

「聞いての通りです。」

「そうか。そういえば茜ちゃんと淳君は怪我をしているようだけど転んだのかね?それともこのマネージャーがそんなに強いのかね。」

「後者です。ちなみに本人が言った通りマネージャーではないですよ。」

「そうか、このマネージャーはそんなに強いのかね。」

「いやだからマネージャーではなくて・・・。」

「マネージャーさん、私はしずくさんの純粋なファンなんでしずくさんには何も危害は加えませんのでご安心を。あはははは。友達の友達は皆友達ですよ、あはははは。」

所長が壊れた。この巨漢がマネージャーということにして現実逃避をしている。歯があわあわと小刻みに震えているところを見ると体は正直だ。

「人間!」

「はい!!」

鶫守のドスが聞いた声で所長は現実逃避から戻ってきた。ピーンと背筋が伸びる。

「そなたはしずくに会いに来たと言っていたがそれはどういうことだ。ここにしずくはいないぞ。いるのはこのわしだけだ。」

衝撃の言葉に所長は目を見開いた。顔が見るまに青ざめていく。全身が震えているのは言うまでもない。体は恐怖で固まっているが、かろうじて動く首をまわし茜と淳を見た。

「これはどういうことかね、説明してくれ茜ちゃん、淳君。」

「ごめんなさい所長。事情はあとで話すわ。」

すると鶫守は茜たちの前に立ちはだかり所長の言葉に乗った。

「わしも聞きたいぞ、説明しろ。」

茜と淳は観念したらしく所長に結界を解かせるために嘘をついたことを話した。説明を受けて所長は憤慨する。

「ではみんな作り話か!酷いじゃないか!私は決して安くないセスナ機代を払ってまでここに来たのだぞ!しずくに会う為に!」

「セスナで来てくださいとか頼んでませんけど。」

茜がぼそっと呟いた。

「だまらっしゃい!!セスナ機の代金は二人の給料から天引きするからな!」

「はい、どうぞ。」

さすがに嫌だと言えないので茜たちは渋々了承した。

「おい人間。」

「なんだ!!」

鶫守に話しかけられたが腹の虫が収まらない所長は怒りそのままに振り返った。だが鶫守の怖い顔を見て瞬時にそれを後悔する。

「なんでございましょうか・・・。」

怯えながら即座に言いなおした。

「所長、声が小さいですよ。」

茜がつっこんだ。

「うるさい!元はと言えば茜ちゃんたちが嘘をつかなければこんなことにはならなかったのだぞ!」

「所長、僕らに対する態度と妖魔に対する態度が違い過ぎるんですけど。」

「当然だろう!こんな巨悪なオスゴリラのようなものを目の前にして普通でいられるか!」

「ほほう、わしが巨悪なオスゴリラに見えるか。」

「はい!あっ!いいえ!全く見えません!どこからどうみても勇敢なマネージャー!」

所長は自分の失言にしどろもどろだ。鶫守はにやりと口を歪めた。そして

「よくも結界を解いてくれたな。」

「え?」

「ゆるさーーん!!」

鶫守は所長に向かっていきなり猛獣のように凶暴に口を開けた。ギラリと怪しく光る鋭い犬歯。

「危ない!!」

茜と淳は所長をかばおうと瞬時に前に出て鶫守の前に立ちはだかった。しかし鶫守はどうやら脅かしただけだったようだ。

「面白い人間だ。」

鶫守は鼻でふっと笑った。茜たちが振り向くとそこには恐怖のあまり気絶した所長がいた。白目を向いて倒れている。それを見て茜が一言。

「これでやっと静かになったわ。」

「茜ちゃん・・・容赦ないね。」

「全くだ。おなごはいざとなると容赦がない。まぁ、いい。どうせそなたたちには何も出来ないだろう。太郎の元へ案内してやる、ついてこい。」

鶫守はそう言うと踵を返した。


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