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朝舞探偵事務所~妖魔のおもてなし~  作者: 空と青とリボン
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結界解除

鶫守は居間に戻るとさっそくテレビをつけた。なんだかそわそわしている。時計を見た。

「そろそろだな。」

ドラマが始まった。そこには秋川しずくの姿があった。鶫守はのめり込むようにしずくを見つめている。


 所長は暗闇の中にレールのように敷かれたあぜ道をたった一人で歩いていた。静けさが夜の田園風景を支配する。草と砂利を踏みしめる己の足音だけが唯一安心させてくれる種だった。所長は懐中電灯で足元を照らしたり地図を照らしたりと忙しい。忙しくしていなければ心細さに負けてしまいそうになるのだ。

「地図によるとここの近くの林か・・・。」

所長は懐中電灯を照らしながら辺りを見渡す。前方にうっすらこんもりとした林があるのが見えた。

「おっ、あった。」

慌ててそちらの方へ駆け出した。いくら携帯電話で茜や淳を呼びつけることが出来るといっても夜の林は不気味で仕方がない。暗闇の中で木々の陰影がより一層色濃く浮かび上がる。御札を剥がしてそれをお土産にしてしずくに会いたい、所長はその一心だった。内心怖くて怖くて仕方がないがここまで来たからにはやるしかないのだ。

林の入り口から懐中電灯で周りを照らす。御札はすぐに見つかった。幸いにも入口付近の木に張ってあったのだ。

「これだな。」

とはいえさすがに御札を剥がすのは勇気がいる。伸ばした指先が躊躇している。

しかししずくに会うのに手ぶらではいけないし、何より茜がこの御札は大丈夫だと言ってくれたのだから大丈夫だろう。

所長は覚悟を決め御札に触れた。

本来ならこの時点で鶫守は所長の存在に気づくはずだった、太郎の存在に気づいたように。しかしこの時の鶫守は気が付かなかった。あまりにもテレビに夢中になっていたからである。鶫守はテレビ画面から目が離せない。

「あぁしずく、そんなに泣かないでくれ。」

しずくの涙にすっかり心を奪われていた。しずくは情念を露わにして髪を振り乱し熱演している。その頬から零れ落ちる女優の涙はとても美しかった。

そしてそれと時を同じくして所長は茜たちに言われたように御札を剥がそうとしていた。

「えい!」

一気に剥がした。

その瞬間、辺りの空気にビリビリという電気なようなものが走った。

「なんだ?」

突然のことに驚いて体を強張らせる所長。


「!!」

茜と淳はいち早く状況の変化に気づいた。結界が解けたのだ。

「解けたわ!!」

「所長が成功したんだ!!」

二人はにわかに信じられないことが起こって顔を見合わせた。そして力強く頷く。

「行こう!!」

「えぇ。」

茜と淳は猛ダッシュした。



その頃鶫守は相変わらずしずくの虜になっていた。あまりにテレビ画面に集中していた為に結界が解かれたことにいまだ気が付かない。

ドラマは佳境を迎え、その前にいったんCMに入った。ほっと一息をつく鶫守。その瞬間異変に気づいた。驚愕し後ろを振り返る。

「しまった!!」

鶫守は慌てて立ち上がり太郎の元へ向かった。あっという間に牢屋の前に辿り着く。

「貴様か!?」

鶫守は恐ろしい形相で太郎を問い詰めた。しかし太郎はきょとんとしている。それどころか羽根布団にくるまりぬくぬくしているのだ。亀のように顔だけ布団から出し

「急にどうしたんですか?」

呑気なことこの上ない。それを見た鶫守は呆れたのか大きなため息をついた。

「そなたのようなヘタレにそんな真似出来るわけがないな。」

「なんかあったんですか。」

「いやなんでもない。そなたはそこでぬくぬくしておれ。」

鶫守はそう言うとどこかへ行ってしまった。後に残された太郎はまたもやきょとんとしている。

「何かあったのかな・・・。まぁいいか。」

何も知らない太郎は頭から布団を被った。



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