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全3部
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昨日、大切な人が死んだ。
交通事故であった。
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8月8日、鈴虫が鳴き始めた頃、僕は大切な人と待ち合わせをしていた。
今日は夏祭りなのだ。
僕が待ち合わせ場所に着くと既にその人は待っていた。その人へ駆け寄ると、向こうも気が付いたようで僕に対し会釈をした。僕の待ったかという問にその人ははにかみながら別にと返し、僕たちは夏祭りへ向かった。
夏祭りには、僕たちは必ずリンゴ飴を食べる。しかし僕もその人もリンゴ飴が特別好きなわけではない。それでもリンゴ飴を食べる理由は、その人が食べたがっているからだ。夏祭りといえばリンゴ飴、らしい。その人に合わせて僕も食べているうちに、僕たちの夏祭りはリンゴ飴無しでは始まらなくなってしていた。
今年もいつものようにリンゴ飴を食べ、出店を巡り、いつものように別れた。
次の日、その人が死んだことを知った。
飲酒運転の車に跳ねられたらしい。
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僕の大切な人が死んだ。
であれば、僕も死のう。




